[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」4月22日号

森口博子のポジティブ狂いと同じくらいヤバい、「婦人公論」のしあわせノート

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「婦人公論」4月22日号(中央公論新社)

 今号の「婦人公論」(中央公論新社)、特集は「良縁と悪縁を見きわめる」です。表紙には、まるで体育館の緞帳を身にまとったかのような江原啓之サンの姿。重そう。そしてインタビュー「出会いをどんな縁にするかは、すべてあなた次第なのです」では、お得意の自己責任論を余すことなく披露しています。「人間関係でもめるのも、そもそも自分が悪しき種を蒔いているから」「孤独は甘え、孤高は自立と自律ができた境地」と今回も厳しい物言いで、ドM読者たちをウヒャヒャさせてしまうことでしょう。全てをスピリチュアルに帰着させる手法には首をかしげたくなる江原サンですが、もちろんまともなことも言ってます。そもそもこんな特集が組まれるということは、「婦人公論」読者世代が悪縁を切りづらい状況にいるということ。「多くの人は『ひとりになるのが寂しいから』と、好きでもない相手にいい顔をし、我慢して付き合って疲れ切っています」とはまさに。新しい環境に飛び込む人も多いこのシーズン、「思い切ってあの人切っちゃえよ」と「婦人公論」が囁いています。

<トピックス>
◎特集 人間関係をラクにしたい 良縁と悪縁を見きわめる
◎GWこそ楽しむ!女のひとり時間
◎「しあわせノート」で自分を元気に!

■ベッキーを凌駕する森口博子のポジティブ狂い

 江原サンのちょっとイイところをご紹介したのもつかの間、インタビューの後半にはこんなくだりが登場。「ずいぶん前のことですが、私も『ご近所問題』で苦慮した経験があります。(中略)何かにつけて難癖をつける人がいたのです。さては新参者に対する嫌がらせだなと察した私は、窓を開け、ご近所中に響き渡る声で『誰が通報したかは、わかってる!』と、わざと強い口調で言ったのです」。町内に響く、江原の怨念バリトン……。それ以来、嫌がらせの類いはピタっと止んだそうですが、良い子は決して真似をしないように。「そのくらいの強い念力が、悪縁を跳ね除けるのです」というこの方法が通用するのは、たぶん江原サンと引っ越しおばさんだけです。

 そんなスピリチュアル武勇伝はさておきまして、今回の特集は3つのポイントに整理できると思います。まずは江原サンも忠告していた「ひとりになることを恐れない(縁が悪縁になるのを防ぐ)」、「うまい話に騙されない(悪縁そのものを防ぐ)」、そして最後に良縁の招き方。どうしたら良き縁はやってくるのか、それを語るのはこの方、“夢がMORIMORI”でおなじみの森口博子です。どうして今、森口博子なのか、なぜ森口博子なのか、森口博子と良縁がさっぱり結びつきません。

 森口といえば、バラドルとして成功した20代から、とんと露出を減らした30代、そして謎の前向き負け犬キャラでまたじわじわとテレビ出演を増やしつつある現在(40代)があります。ご本人いわく、30代は「体調を崩し、人間関係もちぐはぐになり、家族とも歯車が噛み合わなくなって。何より仕事がうまくいかないのがつらかった」のだそう。

 その危機を乗り越えたのが、規則正しい生活と挨拶の励行、そしてこの青汁……ではなく、「感謝の気持ちを忘れない」ことと「1日に1回でもいいから必ず笑う」こと。人はいつでも反面教師。悪口を言う人に会えば「真似しないように気をつけようと、学びの場にしています」と、森羅万象をポジティブに結びつけております。ベッキーの少し前を森口博子が走っている……そう考えて差し支えありますまい。なるべく影が生まれぬよう、さまざまな方向から光を当ててはいるものの、見方によれば全面闇のようにも感じる森口のポジティブ良縁論。「生きていればやっぱり面白くない出来事もあるし、人から嫌な言葉を投げかけられることもあります。調子がいい時は、過去の経験から『あの人も心のバランスを崩しているのかも』と客観的に思えるけれど」などの発言からも、“悪いのは私じゃなくて相手(の精神バランス)”というポジティブルールがのぞいていて、そりゃあもう良縁しか見えないはず。同じ“バラドル経由負け犬キャラ”でも、「笑顔」だの「感謝」だのとは決して口にしない井森美幸の偉大さを改めて感じるのでありました。

■「しあわせノート」は中年女のTwitter

 そしてそんな良縁/悪縁特集に応える企画が、「GWこそ楽しむ!女のひとり時間」。縁特集の裏メッセージが「おひとりさまに慣れること」であるとするなら、この企画で具体的にどのように慣れていくかをレクチャーする流れのようです。さすがかゆいところに手が届く「婦人公論」!

 “おひとりさまバージン”の読者へ向けるものですから、いきなり「さぁ吉野家へ」「さぁホストクラブへ」では刺激が強すぎます。そこで「婦人公論」が提案するのが「しあわせノート」。デスノートではありません。エッセイストの中山庸子氏が「ひとり時間で『いい女』になりたい人にはノートがおすすめ」と語っています。氏いわく、ノートの素晴らしいところは「口が堅いところ」。

「今は嫉妬の時代でしょう。自慢すればすぐに叩かれる。ブログにしてもSNSにしても、みんなが自主規制している世の中です。(略)その点、ノートは決して情報を漏らさない。『王様の耳はロバの耳』の話のように、何の気兼ねもせず、ノートにぶつけてます。だから、中身は自画自賛(笑)」

 ブランドバッグ、おしゃれな家具、高価な絵画……たとえ買えなくても、切って貼れば買ったつもりになれる。「ノートを開けばその時の感動を思い出せますから」。1人で過ごす時間を心地よくプロデュースすること、これを中山氏は「自分で自分を目いっぱい『おもてなし』」と呼んでいました。「カタログを切り貼りしてなにが楽しいの?」と思われるかもしれませんが、これはTwitterでいう「ファボる」と同じ行為ですよね。ちょっと手間がかかるファボり。「婦人公論」は中年女性たちのSNSだというのは以前レビューでも書きましたが、こうした小さな自分との対話に収まり切らなくなる自我が、「婦人公論」名物読者体験手記などにゴゴーっと流れていくのでしょう。しかし自分を思いっきり褒めるのは、思ったほど簡単ではないですよね。「女のひとり時間を楽しむ」というのはすなわち自意識をいかにコントロールをするかということなのではないでしょうか。

 おひとりさまが決して珍しくはない昨今ですが、アラフィフ・アラ還世代で考えると、まだまだハードルが高そうです。それは江原サンが言うような「ひとりでいることの寂しさを克服できていない」のではなく、むしろ「余暇をひとりで過ごすことへの罪悪感」が大きいような気がします。長く主婦をしていたら自分ひとりで何かを楽しむことを後ろめたく感じてしまったり、ヘタしたらちょっとボーッとすることでさえ許されないと考えたり。さて、1人でいることの楽しさ気楽さを得た「婦人公論」世代は一体どこへ向かうのか。次号の予告を見ますと「快楽特集 夫以外が教えてくれた真実のセックス」……。
(西澤千央)

表紙からすっげーヤバいバイブス出てるわ

しぃちゃん

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