ドラマレビュー第17回『今日の日はさようなら』

『今日の日はさようなら』、消費される“チャリティー”を揺さぶる作品強度

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『今日の日はさようなら』/バップ

 『24時間テレビ』(日本テレビ系)内で放送されているスペシャルドラマを「どうせ、実話を元にしたワンパターンの難病モノでしょ」とか「お涙ちょうだいの感動の押し付けだろ」と感じて、見る気が起きないという人は多いかと思う。正直、私自身も今まではそう思っていて、まともに評価する気にはなれなかった。

 しかし昨年放送されたスペシャルドラマ『車イスで僕は空を飛ぶ』を見て、そんな偏見を持っていた自分を恥じた。

 『Q10』(同)を制作した、河野英裕プロデューサーと佐久間紀佳が演出を担当した『車イス~』は、事故で突然半身不随となった若者を主人公(嵐・二宮和也)にした、実話を元にした作品だった。誰もが簡単に社会的弱者に転げ落ちてしまう現代日本の危うさに、チャリティーやボランティアといったものに対する批評的な厳しい目線を盛り込み、また息子・二宮と母親・薬師丸ひろ子の迫力ある演技もあって、実に見ごたえのあるドラマとなっていた。

 『野ブタ。をプロデュース』、『銭ゲバ』、近年では『妖怪人間ベム』『泣くな、はらちゃん』(いずれも日本テレビ)といった名作を次々と世に送り出してきた河野の作風は、24時間テレビ内ドラマでも健在で、むしろチャリティー番組の中で放送させるドラマだからこそ、視聴者の意識に突き刺さるような鋭い問いかけと緊張感を放っていた。

 そんな河野が再びプロデュースを手掛け、脚本を『僕の生きる道』や『フリーター、家を買う。』(いずれもフジテレビ)の橋部敦子、『泣くな、はらちゃん』の菅原伸太郎が演出を務めたのが、今年放送された『今日の日はさようなら』だ。
 
 嵐・大野智が演じる青年・富士岡耕太は、ある日、悪性リンパ種という血液のがんにかかってしまう。生存確率は80%。始めは完治を目指し、抗がん剤投与の苦しい闘病生活を戦うが、抗がん剤の効果は出ず、様態は悪化。家族の協力もあり、一度は造血幹細胞移植で完治したかに思われたが、数年後、再びがんが再発してしまう。

 物語は、耕太の闘病生活を淡々と追っていく。感情の起伏が抑制された大野の演技は、穏やかながらも常に緊張感を保っており、死がすぐ隣にあることが当たり前となった耕太の日常を見事に表現している。耕太が暮らす田舎のロケーションはのどかで美しいが、そこに突然、吐血のような死の予感が入りこむテイストは、河野・菅原が担当した『泣くな、はらちゃん』の美しい風景の中に死が当たり前に混在していた世界観を彷彿とさせる。そういう意味で、実話を元にがんの闘病記を描いていながら、どこか幻想的な作品でもある。

 それは特に、耕太が入院する病院で出会う、原田という青年に現れている。山田涼介(Hey! Say! JUMP、NYC)が演じる義足の青年・原田信夫は、14歳の頃から入院を繰り返し、多くの死者を見てきたため、生きることに対し達観している男で、このドラマの持つ独特の死生観を最も体現している人間だ。

 原田が霊安室の棺桶に寄りかかり恍惚とした表情を浮かべる場面は、美しくも不気味な、何だか見てはいけないものをみているような戸惑いを感じさせる。劇中で、原田が退院した時に、義足を見せて募金箱を持って立ったら、結構募金が集まったと語るエピソードがある。原田は、「人って誰かの役に立ちたいって思いますよね。弱い人を助けてあげたいとか」「すごく素敵な気持ちですけど、すぐ忘れちゃうじゃないですか」「だから義足を見せて道に立つんです」と語る。募金することで、「僕も誰かの役に立っている」と語るくだりは、そのまま『24時間テレビ』に対する問いかけとして機能している。こういったチャリティー番組を見ている視聴者に激しい揺さぶりをかけるフックが、ドラマ内には無数に用意されている。

 本作で描かれている「自分が死ぬことを受け入れて生きる」という考え方は、簡単には吞み込みがたいものだろう。だが、チャリティーやボランティアに対する考え方が人の数だけあるように、生や死に対する考え方だって人の数だけ存在ある。『車イス~』や『今日の日はさようなら』が描いているのは、障がい者やがん患者といったカテゴリーではなく、そういった境遇に陥った1人の人間がどのように生きたかという記録である。それを、1つのドラマとしてクオリティの高い作品に仕上げることこそが、最も人の心に届くということを、本作は実践によって証明している。
(成馬零一)

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しぃちゃん

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