ドラマレビュー第10回『家族ゲーム』

非道さへ不快感と同時に、圧倒的な悪の魅力をえぐり出した『家族ゲーム』

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『家族ゲーム』公式サイトより

 『家族ゲーム』(フジテレビ系)は1981年にすばる文学賞を受賞した同名小説が原作。過去に森田芳光監督・松田優作主演で映画化され、長渕剛主演でテレビドラマ化(TBS系)もされている。沼田家に謎の家庭教師・吉本が訪れることで、家族が翻弄されていくという展開は原作と同様だが、舞台を現代に移し、松田や長渕に象徴される強面で屈強だった吉本のイメージも、嵐の櫻井翔が演じる、軽薄で何を考えているのかわからない、不気味な男に改変されている。

 吉本は、引きこもりの沼田家の次男・茂之(浦上晟周)の家庭教師となり、さまざまな手段を駆使して、茂之を部屋から出して学校へと向かわせる。しかし、学校に戻ってきた茂之に味方はおらず、いじめに遭うこととなる。

 吉本は、茂之のクラスに乗り込み、生徒たちを脅迫して無理やりいじめを解決させるが、陰でいじめは続く。この辺りのいじめ描写は痛々しくて不快ですらあるが、「強者が弱者を踏みにじることの不快感」、それ自体が描きたいことなのだろう。やがて茂之は吉本の教育により、いじめに立ち向かう強い意志を獲得し成長していく。しかし、茂之がいじめられること自体が、吉本があらかじめ裏工作したプログラムであることが繰り返し描かれ、後味の悪さが常に付きまとう。ここで描かれているのは、教育というものが潜在的に抱えている暴力性そのものだ。吉本の巧妙な手口に長男の慎一(神木隆之介)は不信感を抱き、吉本の正体を調べ始める。やがて、ドラマ後半は、沼田家の崩壊と、慎一と吉本の戦いに焦点が移っていく。

 悪役として振る舞うことで教育を行う教師、そして謎の人間が訪れることで家族が崩壊し再生するというモチーフは、脚本家・遊川和彦の『女王の教室』と『家政婦のミタ』(ともに日本テレビ)を連想させる。本作が放送されているフジテレビ水曜10時枠はドラマ新設枠で、裏番組には日本テレビの水曜ドラマ枠がある。おそらく大ヒットドラマ『家政婦のミタ』を生み出したドラマ枠に対して、あえて似た題材をぶつけてきたのだろう。

 ストーリーはミステリー形式で、次から次に予測不能な行動を取る吉本の正体が最大の謎となっていく。では、吉本荒野とは何者だったのか?

 第9話、ついに吉本の過去が描かれる。吉本の本名は田子雄大。かつては善良な中学教師だったが、教え子の真田宗多(吉井一肇)を死なせてしまったことから、真田が自殺する原因となった「吉本荒野」の名を用いて、家庭教師として生きるようになる。

 本当の吉本荒野(忍成修吾)は、教頭を叔父に持つ新任教師。表向きは生徒にも人気の好青年だが、裏では同僚の教師を配下にして、ストレス解消のためにやりたい放題をしていて、真田に対しては同僚の教師を従えて暴力を振るっていた。作中では、吉本の非道な性格の理由は描かれずに、延々と凶悪な姿が描かれるが、そこには不快感と同時に圧倒的な悪の魅力がある。この凶悪な吉本を田子(櫻井翔)が真似していたとわかることで、今までの吉本の空虚で軽い台詞回しと行動の裏に見え隠れする熱い部分に説得力が与えられる。

 吉本=田子の、正しいことを為すために悪に身を落とすヒーロー観は、本作の脚本家・武藤将吾が担当したドラマ『ジョーカー 許されざる捜査官』(フジテレビ系)を彷彿とさせる。『ジョーカー』では法で裁けない犯罪者に対し、神隠しと称し、私刑を行う刑事たちの姿が描かれたが、『家族ゲーム』は教育というフィールドで行われた私刑だったのではないかと思う。

 吉本の目的は沼田兄弟の更生にあった。沼田茂之が、真田宗多のようにならないように悪意に立ち向かう強さを教えること。沼田慎一が第二の吉本荒野のようにならないように、人の心を教えること。しかし茂之も、いじめを克服し、仲間が増えると、今度はかつて自分をいじめていた少年をいじめる側に回ってしまう。その意味で誰もが、「吉本荒野」の持つ悪の力に魅せられており、その悪意の連鎖からどう抜け出すのか? というテーマが根底に流れている。

 だが現在の日本において、体罰を筆頭とする肉体的・精神的な痛みを用いた教育は肯定されるのか? 結局、沼田家は再生するのだが、どこか薄ら寒いのは、それがカルト教団による洗脳と何ら変わらないからだろう。

 田子は吉本の悪魔的残虐性を、内側に取り込むことで、究極の教師となった。しかし、田子の沼田家での振る舞いは、本当に吉本を演じていたものなのか? 吉本の悪魔的魅力に、田子自体が吞み込まれつつあるのではないか? 「いいね~」と笑う櫻井翔の不気味な表情が、今も引っかかっている。
(成馬零一)

ああ、最後のいいねぇの理由が知りたい!

しぃちゃん

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