ドラマレビュー第9回『空飛ぶ広報室』

『空飛ぶ広報室』、自衛隊への報道姿勢で露呈したドラマのいびつさ

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『空飛ぶ広報室』(TBS系)公式サイトより

 TBS日曜劇場で放送中の『空飛ぶ広報室』は、自衛隊広報室に勤める自衛隊員・空井大祐(綾野剛)とテレビ局のディレクター・稲葉リカ(新垣結衣)のもどかしい恋模様と、仕事にかける熱い想いを描いたドラマだ。

 原作は『図書館戦争』(メディアワークス)と『県庁おもてなし課』(角川書店)が最近映画化された有川浩の同名小説。自衛隊とテレビ報道の在り方という難しいテーマに挑んでいるが、女性にとっての仕事と恋愛を扱っているという面では、ど真ん中のモチーフであり、自衛隊を題材にしたトレンディドラマともいえる。小説は、空井を主人公とした自衛隊広報室の物語が中心となっているが、ドラマ版ではテレビ局が制作している長所を生かして、稲葉の視点が強い。そのため、自衛隊をどういう視点で報道するのか? というマスコミの報道姿勢自体が大きな軸となっている。

 脚本を担当した野木亜紀子は、2009年に『さよならロビンソンクルーソー』でフジテレビのヤングシナリオ大賞を受賞した期待の新鋭。今までは『ラッキーセブン』や、『主に泣いてます』といったフジテレビ系列のドラマに参加していたが、TBSドラマで全話執筆というのは、今回が初めてだ。野木は映画『図書館戦争』の脚本も担当しており、有川浩との相性がいいのか、原作の要素を生かした上で、ドラマならではのうまい膨らませ方をしている。

 これはプロデューサー・磯山晶の力も大きいだろう。磯山は宮藤官九郎をテレビドラマに抜擢したプロデューサーとして知られているが、宮藤と組んだ『池袋ウエストゲートパーク』や『流星の絆』(ともにTBS)では、原作の要素を生かした上で、ドラマならではの翻案がされていたが、この『空飛ぶ広報室』もその点が実にうまい。原作がエピソード自体を描くことに腐心していたのに対し、ドラマ版は各登場人物の個性が際立った群像劇へと仕上がっているため、作中で描かれる自衛隊や報道の在り方をめぐる議論に興味がなくとも、主演の2人はもちろんのこと、鷺坂室長(柴田恭兵)や片山和宣(要潤)といった魅力的な登場人物の動向を追うだけでも、ドラマとして楽しめる。

 自衛隊全面協力で撮影されるヘリやジェット機等のミリタリー描写も見どころ満載で、このドラマ自体が、自衛隊にとって最大の広報戦略となっていることは、間違いないだろう。ただ、作り手の自衛隊に対する偏見を払拭したいという意識が強すぎて、逆に物語がいびつになっていると感じる場面が見られる。特に第9話に登場した、ホームレスの就職支援問題に取り組んでいるNPO法人「はたらく市民の会」代表の描き方はあまりに一方的で、皮肉なことにNPO代表が自衛隊に向けた偏見の押し付けを、このドラマ自体が逆に行っているように感じた。

 どんな人間でも、不愉快な一面だけを切り取っれば、簡単に悪役に見せることができる。それ自体はドラマの手法として全否定はしないが、ここで問題なのは、ある登場人物に対する不快感が、自衛隊をめぐる政治的議論の印象にまで反映されてしまっていることだ。

 そもそも、このNPO代表が登場する討論番組のテーマは「若者の雇用をめぐる労働問題」だが、そのテーマの議論は描かずに、討議の中で彼が発した自衛隊に対する差別的な発言を切り取って見せる展開に、作為が見えすぎて気持ちが萎えた。特に第9話のテーマ自体が報道における公平性をめぐるものだっただけに、この見せ方には疑問を感じる。

 とはいえ、ドラマ全体の方向性は高く評価している。第8話では、1995年の阪神大震災に自衛隊として立ち会った体験が鷺坂によって語られ、現代における自衛隊の在り方についてフォーカスが当てられた。しかし小説は、東日本大震災を受けて執筆された「あの日の松島」という章で終わる。

 番組ホームページによると、今までの物語は10年の出来事で、次回放送される第10話では、自衛隊広報の担当を外された稲葉が、11年2月に空井たちと再会するのだという。おそらく第10話のラストに震災が起きて、最終話で現在の日本人にとっての自衛隊観が反映された災害救助の物語となるのだろうと、今後の展開に期待している。
(成馬零一)

「自衛隊を題材にしたトレンディドラマ」なんでもありっすなー

しぃちゃん



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