[連載]安彦麻理絵のブスと女と人生と

反抗期の娘に思う切ない気持ちに浮かぶ「こころよ またもどっておいでね」


(C)安彦麻理絵

 元・夫と一緒に住んでる中1の長女が、どうやら激しく「反抗期」らしい。以前は月イチで私の所に遊びに来ていたのに、最近はとんとご無沙汰気味になってたので、元・夫に彼女の近況を聞いてみたら、そんな答えが返ってきた。元・夫曰く「部屋を片付けろとか言うと、ものすごく嫌そうな顔をする」とか、「用がない限り自分から会話をしてこない」だの「用があって学校に行くと、本気で嫌そうにする」などなど……確かに「ザ・反抗期」と呼ぶにふさわしい症状である。「マリエちゃんとこに行かないの?」と聞けば「忙しい」とのつれない返答だそうで、そういう状況なのであれば、こちらも腹をくくるしかない。

 彼女の現在置かれている環境は、普通の女の子と比べたらちょっと変わっているかもしれない。なにしろ、母親である私とは別に住んでいる。で、その母親が再婚して、タネ違いの小さいきょうだいが3人いる。そして元・夫も、2人の子を持つ別の女性と再婚しており、その女性との間にさらに、2人の子どもができたりしてる。なんていうか「犬神家の一族」じゃないけれど、家系図をこさえたら、だいぶ色々いりくんでるみたいな、非常に横溝正史チックな環境で生活してるので、何かの拍子にグレようと思えば、いくらでもグレられるはずだ。グレるためのネタには事欠かないような、変わった境遇なので、だからまぁ心配だったりするわけだが。

 しかし、元・夫の話を聞く分には、どうやら「グレてる」わけではないようだ。飲酒喫煙不純異性交遊とか、そういう方面に走ってるわけではなく。どうやら、人間、一度は通り過ぎねばならない「反抗期」のド渦中にいるようである。反抗期は、ある意味「はしか」みたいなもんだったりする。まっとうな大人になるのであれば、キッチリ患っておかなきゃいけない病気みたいなもんである。なので、「どうしてあんなに可愛かったフーちゃんが!!」などと嘆いていてもどうしようもない。

 とはいえ……目を閉じれば思い出す……あの頃……

 小さかった頃の、無邪気な彼女の姿、笑顔。あれは彼女が3歳くらいの時だったろうか? 2人で風呂に入ってる時に、ふと思い立って、私は彼女に質問をしてみた。

「ねぇねぇ、フーちゃんが一番好きな人ってだぁれ?」

 ……きっと彼女はかわいらしい笑顔とともに、私の名前を言ってくれるだろう……そんな事を予測した、エゴにまみれた腹黒い質問を娘に投げかけた私。

「フーちゃんが好きな人はねぇ、えーっと……」

 彼女はちょっと考えてから、こう言い放った。

「フーちゃんは、プウ美姐さんが一番好き!!」
「……はあああ????」

 ……「プウ美姐さん」とは、友人のホモ漫画家の「熊田プウ助さん」の事である。短髪・ヒゲ・ムッチリボディ・キラキラの星が入った大きな瞳・どこかのお屋敷の奥様のような上品さを漂わせながらも、泥水すすって生きてきたみたいな下品さも兼ね備えてる、知性あふれる素敵な人。我々仲間内では彼の事を、親愛の意味をこめて「プウ美姐さん」と呼んでいた。姐さんはウチに遊びにくると、いつも娘に優しい笑顔を投げかけて、そしてお膝ダッコをしてくれた。当時、ウチにはさまざまな女たちが飲みにきてくれてたが(大久保ニュー姐さん、魚喃キリコ等)、彼女たちが集まると、部屋の中はまるで「場末のキャバレーの楽屋」のようになった。そんな中で、私は「子連れで出勤するホステス」のようだったわけである。女の「毒」と「下世話」が渦巻くそんな空間の中で、プウ美姐さんはいつも娘に「ホラ、フーちゃん、プリンでもおあがり」なんて、優しく接してくれてたのだ。「なんかまた男がさ……」「あんたっていっつも学習しない女ねぇ!」「またお金たかられてんじゃないでしょうね!?」などの発酵臭漂う会話が飛び交う中で、娘はいつも、おとなしく絵本を読んだりして1人で遊んでいた。……こうやって、当時を振り返ってみると……ワケの分からない環境で彼女は育ったんだな、と、なんとなくしんみり……(てゆうか、反省である……)。

 そんなわけで。今、娘は、親から離れて、違う世界に行ったのだと思う。親からしてみれば、なんともまあせつないものである。こんな時に、ふと思い出すのが、八木重吉の「心よ」という詩の一節。

「こころよ ではいっておいで しかしまた もどっておいでね」

 ……別に、反抗期の子どもに対しての思いをつづった詩じゃないんだけれど、でもなんとなく、この文章を思い出してしまう私なのであった。

プウ美ポジションで子ども票イケるわよ!

しぃちゃん

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