サイゾーウーマン編集部座談会

ジャニー氏の“暴露本”記事を量産……「PV優先で被害者の人権無視」サイゾーウーマンの反省点

2023/10/23 16:00
サイゾーウーマン編集部
ジャニー喜多川氏の画像
長年“都市伝説”のように扱われてきたジャニー氏の性加害が今年社会的な問題に(写真:サイゾーウーマン)

 ジャニー喜多川氏(2019年に死去)の性加害問題を受け、10月16日をもって1962年の設立以来続いた「ジャニーズ事務所」の屋号を下ろした「SMILE-UP.(スマイルアップ)」。今後はタレントのマネジメント及び育成業務から撤退し、被害者への補償業務のみを行っていくといいます。

 ジャニー氏の性加害に関しては、生前の80年代から“暴露本”が出版され、「週刊文春」(文藝春秋)が99~00年にかけて特集を展開。その後、ジャニーズ側が「文春」を相手に、名誉棄損で訴訟を起こし、東京高裁がこれを“真実”と認定した一方、大手メディアはこの問題を黙殺し、業界内外で“都市伝説”のように扱われてきました。

 そんな中、08年の開設以降、ジャニーズ情報をメインに発信してきたサイゾーウーマンは、10年より被害者の告発本に関する記事を公開してきましたが、同時にジャニー氏に大きな親しみを抱き、その功績を称える記事を多数出してきたのも事実です。

 ジャニー氏の性加害が社会的な問題となり、同社が解体されることになった今、サイゾーウーマン編集部では、これまでの編集方針に大きな間違いがあったことを自覚し、その反省点を掘り下げ、今後の記事制作を考えるという座談会を行いました。

※「ジャニーズ事務所」は「SMILE-UP.」に社名を変更しましたが、記事内容に鑑みたうえで、便宜上「ジャニーズ」を使用します。

【座談会メンバー】
A:サイゾーウーマン編集部歴14年。昨年までジャニーズ記事を担当。
B:サイゾーウーマン編集部歴11年。ジャニーズ記事はじめ芸能記事全般を担当。
C:サイゾーウーマン編集部歴3年。ジャニーズ記事を中心に担当。

ジャニー氏の生前から、性加害の“暴露本”を取り上げてきたが……

B これまでサイゾーウーマンは、ジャニーズタレントの表舞台での活動はもちろんのこと、私生活のスキャンダルや事務所の内部事情についてなど、幅広くジャニーズ情報を発信してきました。その一つが、ジャニー氏の性加害を告発する通称“暴露本”です。大手メディアが黙殺していた問題を生前から報じてはきたものの、性加害に問題意識を持たないまま記事を出していたのではないかというのが、いま私が感じていることです。

A サイゾーウーマンで一番最初に“暴露本”の記事を出したのは何年か調べたら、10年3月。フォーリーブスの元メンバ−・北公次さん著の『光GENJIへ』(データハウス、88年刊)の内容をレビューする形で取り上げていました。当初、どういうスタンスでこれを掲載したんだろうと思い、リード文を見てみると「鉄壁のベールに包まれた帝国の光と闇を、数々のジャニーズ非公式本から探っていく」とあったんです。暴露本に限らず元ジャニの本を扱うシリーズを想定したと思うんですが、数字の面でこちらのほうが圧倒的に取れるという手応えがありました。それで、積極的に取り上げる方向になったと記憶しています。

B ちゃんと問題意識を持つよりも前に、PV優先で……というのはその通りで、BBC(英国放送協会)が、ドキュメンタリー『 Predator:The Secret Scandal of J-Pop』を放送する予定と伝えられた2月下旬にも、私が暴露本の過去記事をまとめたエントリーを掲載しました。

A 非公式本を取り上げたのも、自分自身がジャニオタなので、「キラキラしているところだけじゃなくて、闇のところまで全て知りたい」気持ちがあるというか。私はいまでこそマスコミの人間という自覚がありますが、当時はジャニオタという意識のほうが強かった。たまたま世間に記事を出す席をもらえているジャニオタが、単純に自分が読みたいから、“暴露本”の記事を出したという感覚でした。しかも数字も取れるとあって、“量産”してきたんです。

B 私も子どもの頃から週刊誌が好きで、「噂の眞相」(噂の真相)なんかもよく読んでいたんですが、キラキラ輝いている芸能界、ジャニーズの裏側を知り、純粋に面白がっていたんです。だからサイゾーに入ったわけなんですが。

C 私がサイゾーウーマンに携わるようになったのはここ数年ですが、いち読者として、前々からポジティブな情報も、ネガティブな情報も網羅している媒体だなという印象がありました。

A ジャニーズの裏側について記事にできたのは、当時「サイゾー」のほか「BUBKA」(白夜書房)とかそのくらい。

B そうですよね。でも、ゴシップ好きゆえか、芸能界に強い偏見があったのは否めません。芸能界のことを別世界、タレントのことを自分とは違う人間であると、かなり偏った見方をしていて、ジャニー氏の性加害も、そういった特殊な世界で起きたこととして軽く見ていた。だから、“暴露本”記事にゴシップ要素の強い――おどろおどろしく下世話な見出しをつけてしまっていたのだと思います。そこはすごく反省しなければいけない点です。

A 言い方を変えると、「世の中のダークな欲望に応える」ようなタイトルではあったと思うんですが、私にすっぽり抜け落ちてたのは、この“暴露本”を書いたのは、感情を持つ人間であるということ。それこそ、TLやBLとしてパッケージされているマンガ本を紹介するくらいのノリで記事を出していたと感じます。今回、被害者の人たちが顔出しで当時や今の心境を語ってる姿を目の当たりにして、ようやく“暴露本”に書かれていた内容のエグさが、感情を伴って伝わるようになりました。

自己検証、進めていきたいと思います
アクセスランキング