ジャニー氏性加害報道におけるジャニオタの罪とは【後編】

水着Jr.、エロハンガー……「自分も性的搾取していた」ジャニー氏の性加害報道めぐるジャニオタの矛盾とつらさ

2023/07/27 17:05
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman
滝沢秀明にとって最後のジャニーズのステージになった『ジャニーズカウントダウン2018-2019』(写真:サイゾーウーマン)

 ジャニー喜多川前社長の性加害報道でジャニーズ事務所が大きく揺れている。日本のみならず世界から今後の対応が注視され、矢のように批判が降り注ぐ中、一方でジャニオタからの反応が見えてこない。

 熱心にジャニーズ事務所のアイドルを応援する人を指す「ジャニオタ」。大切なアイドルが所属するジャニーズ事務所、そして敬愛してきたジャニー前社長の報道を前に、ジャニオタはなにを考えているのか。サイゾーウーマン編集部員をはじめとしたジャニオタが、現在の心境とジャニーズとの今後の関わり方について語り合った。

【座談会メンバー】
A:ジャニーズファンのサイゾーウーマン編集部員、元嵐担。
B:ジャニーズファンのマスコミ関係者、元SMAP担
C:ジャニーズファンの芸能雑誌編集者、スノ担
D:元ジャニーズファンのマスコミ関係者。現在は他事務所のボーイズグループのファン

▼前編▼

デビュー組を見てもちびっこJr.を見てもつらい

A BBCの報道、そして元ジャニーズJr.のカウアン・オカモト氏の告発から現在に至るまでに、ジャニーズタレントを見るときの心境は変わりましたか? 

C そうですね。だいぶ変わりましたね。やっぱり、今までジャニーさんとのエピソードをよく語っていた子たちに対しては、「そうは言ってるけど、実際どうだったの?」とか思ったり。あと、ほかのタレントたちも、ジャニーさんの裏の顔を知らないわけはないとは思うので、「そういったエピソードを聞きながら実際はどう思ってたのかな?」とか考えてしまいますね。

 本当に直近の話だと、『わっしょいCAMP』(ジャニーズJr.の公演『ALL Johnnys’ Jr. 2023わっしょいCAMP! in Dome』)でちびジュ(ちびっこJr.)たちを見ながら、「この事務所を選んで、本当に良かったのか?」とか「親御さんは今どういう気持ちなんだろう?」とか頭に浮かんできて……。未来ある子どもたちには本当に関係ないことではあるので、健やかに、立派なアイドルに育ってほしいと思うんです。だから、「え、ジャニーズなの? 大丈夫?」と周囲から言われてしまうことがないように、そしてジャニーズを選んだことを後悔させないためにも、ファンはどうすればいいのか……。

B 今のJr.世代は被害を受けていない前提で考えると、その人たちがジャニーさんを大好きだというのは理解はできるんです。「ただの優しいおじいちゃん」みたいな感じだったと思うので。その子らが「ジャニーズ大好き」「ジャニーさん大好き」と言っているのはわかるんですけど、でも、やっぱり、今その言葉を聞くのがすごくつらくて。

 それに、『わっしょい』に出ていたようなちびジュたちが、今回の問題によって、こういった行為があったとか、こういうことをする人がいるんだということを、親から聞くなり、自分でネットを見るなりで知ったと思うんです。そういうエグい被害を、この少年たちが聞いてしまったと思うと、すごくつらいです。考えたくもないですね。だから、ちびジュ見ててもつらい。

 それに、デビュー組についても、もしかしたら被害に遭ってるのかもしれないと思いながらテレビとか見るのつらいですし。被害受けてて告発者もいるのに黙ってるのかよ、ってちょっと責めちゃう自分もいるし。今までのような、100パーセント応援したいという気持ちではなかなかいられなくなってしまったという感じです。

自分の矛盾やずるさを自覚してしんどい

A 『news zero』(日本テレビ系)で嵐の櫻井(翔)がコメントしたのが、私にとっては大きくて。彼は、「臆測で傷つく人がいる」と言っていましたけど、あんな涙目の表情で言われちゃったから、私の中で「あ、翔くんは被害者なんだな」ってなってしまった。「櫻井=被害者、嵐=被害者」と見えた瞬間、私を元気づけてくれてきたキラキラした人たちが、実は裏で被害者だったなんて、と打ちのめされちゃったんですよね。自分が散々物語として片付けてたくせに、自担がそういう立場になってたって思い込んだら、ショックが強くて。

 でも、その“被害に遭った過去”を受け止めきれないって、たとえば「大好きだった彼女が実は性被害に遭っていた。それを受け入れることができなかった」みたいな男たちと、結局同じことを私は思っているのかもしれないなって思って、またひどく落ち込む、みたいな。自分のずるさや情けなさをずっと突きつけられてる感じ。

D その感じわかります。だんだん大人になってきて、女性の人権を学んだり考えたりしていると、そういう話に出会うんです。そのときは「ふざけんな、男!」と思っているのに、ジャニーズと自分の接し方を振り返ると、「まったく同じことやってるわ」みたいなことがある。自分が矛盾し続けていた絶望感みたいなのも出てきて。

 例えば、若いジャニーズの裸を見て喜ぶみたいなのも、結局、自分が気持ち悪いと思っていたことを自分がやっちゃってた、とすごく反省するし。だから、今までと同じように楽しめるか? と言われると、やっぱりそれは無理だなと思っちゃう。

A たしかに、水着Jr.は私も楽しんでいた。Cさんが言っていた「ジャニオタの無自覚さ」って、そういう男と同じような性的な消費の部分が強いのかな。

B 自分もやっぱ筋肉さらしてるA.B.C-Zの舞台とかでメンバーの裸を見て喜んでいた時期もあったな、と思いました。たぶん大学生とか高校生とか、そのへんだったと思いますけど。そのシーンになったら、客席がみんな双眼鏡を構えるみたいな。それが楽しさになっていた時期もあったけど、今思うと性的に消費している感じがあるかも。

C 私も『わっしょい』で、ちびジュたちにカンペうちわを見せてファンサービスを要求するファンとかを見て、すごいしんどくなってしまって。「小さい子どもたちに、こんなことをやらせてる私たちファンって、どうなんだろう」とか考えると、純粋に楽しめない部分がありました。

 それに、話が変わりますが、「Johnnys’ ISLAND STORE」(ジャニーズ公式ショップ)で売られていた「エロハン」(上半身裸のタレントがプリントされたハンガーのこと)も、当時はネタ半分で買いましたけど、今思うと相当おかしなグッズでしたよね。むき出しの状態で現場に持って行ってる人も目にしましたし、あれを持って街なかを歩けるジャニオタって、やっぱり性的搾取に対する自覚がないというか……。

D その名称もオタクが勝手につけたものですけど、すごい感覚だね。

A オタクって、際どいことすらネタにしたもん勝ちみたいなのあると思う。それはSNSでとくに暴走していると思うんだけど。大人数の水着Jr.という異様な光景も、それを楽しんでこそジャニオタ、みたいな部分があったなって自分を振り返っても思います。

ジャニーズ事務所を擁護するジャニオタの存在

A 今回の告発者を叩いているような「事務所擁護派」についてどう思いますか? 

D  大好きな事務所が不特定多数の人から非難されるのはつらいですし、ただの“ジャニーズアンチ”みたいな人もいて、擁護したくなる気持ちもわからなくはないです。でも、こんなに多数の告発者が実名で名乗り出ているのを見て、「ジャニーさんはいい人だった」とか「事務所は悪くない」と言える理由はなんなのかと、単純に疑問です。事務所やタレントを守りたいという理由以上に、「自分は間違ってない」と主張したいだけのように見えます。

B 擁護派の中には、告発者のうそを指摘することに生きがいを感じているみたいなオタクがいるんですよね。告発者のプライベートや、ジャニーズ時代とは関係のない過去の話を持ち出して批判したり。そういう人の書き込みを見るのがつらいんです。フォローしてないのに、ツイッターのおすすめで入ってきちゃうんですよ。

 個人的に、今回の性加害問題と、告発者の私生活でのトラブルなどに関しては、切り離して考えるべきではないかなと思っているのですが……。擁護派の一部は、この一連の騒動を仕掛けているのは、16年にジャニーズを退社した元SMAPのチーフマネジャー・飯島三智氏サイドや、昨年の秋にジャニーズを去って、現在は新たな事務所・株式会社TOBEを立ち上げたタッキー(滝沢秀明氏)じゃないか、なんて疑っているんです。意味がわかりませんよね。

C 現役タレントのことを考えると、事務所を守りたくなる気持ちはわかりますが、ジャニーさんから被害を受けたという人が何人もいることは事実ですし、これまでの事務所の対応を見ても、擁護できる部分はないと思います。Bさんも言っていたように、擁護派の中には行き過ぎた発言をする人も増えてきた印象がありますし、私の中では、もはやそういう人はジャニーズアンチと同列の存在になってきていますね。

A 今の事務所に対して求めることはありますか?

B 告発者への配慮がないことが、ずっと気になっています。事務所擁護のジャニオタから告発者が叩かれてるじゃないですか。この間の服部吉次さんの告発に対しても、心無い声をぶつけているジャニオタがいて。本当にすごく不愉快だったんですけど。

 そうしたひどい言葉がSNS上では並んでいるのに、ジャニーズが一貫して、そこに対する警告や注意をしていない。「性加害があったかどうかについてはちゃんと事務所で調べますので、告発者の皆さまへの心ない言葉はお控えください」みたいな、それくらいの、ポーズでもいいからそういう配慮はないのかな、と思って。

D 口だけでもあるのとないのとじゃ違いますよね。

B だから、結局それをしないってことは“告発者が悪”だと思ってるんじゃんって思っちゃうんです。あと、調査してうやむやに終了とせず、時間がかかってもいいから、なんらかの結果は出してほしいと。行く末を見守りたいなとは思ってます。

C よく指摘されていますけど、きっとここまで大きくならないだろう、って高をくくっていたんだと思います。本当はスルーしようとしてたくらいだったと思うんです。でも国内だけに収まらなくなっちゃったから、仕方なく動いているんだと思うんですけど。ジュリーさんのあの動画、公開してから何カ月かたちますが、いったいなんの意味があったんだろうって、あらためて思います。

D でも、調査結果を出すのが早すぎても、いや、本当に調べたんかいってなるんですけど。過去の出来事なので、時間がかかるのはしょうがないんですけど。もっと、初動のやり方はあったのでは? と思いますね。

A 今後、ジャニーズへの気持ちが戻る可能性ってありますか? 私自身は応援したいJr.グループはあるので、その子たちに幸せになってほしいとは思ってますが、一方で見続けることは難しい気持ちもあります。

B 気持ちが戻るかわからないから、今距離を取っている状態というか。明確に「嫌い」になるということもなかなかできない。結局、タレント本人には罪はないと思いたいので……。「知っていてほっといたんでしょう?」とは思うけど、でも、やっぱりタレントが被害者だとしたら、守ってあげたいという気持ちもあるはある。ちょっと距離を置いて応援しているという感じですかね。

C 簡単に解決する問題ではないと思うので、私もしばらくはモヤモヤした気持ちを抱えたまま応援していくことになりそうだなと思っています。性加害問題と切り離して彼らを見続けていくことは難しいからこそ、タレントたちにはキラキラ輝いていてほしいし、元気をくれる存在でいてほしい。だだのジャニオタのわがままですが……。

D 私は性加害問題とは別の理由でジャニーズから離れたんですが、もう戻らないと思います。応援していた担当のことは今も遠目から見てはいますが、今回の性加害問題をきっかけに、「ジャニーズ事務所に時間とお金を使う」という行為に強い抵抗感が出てしまいました。オタクとしての時間とお金は有限ですし、後ろめたい気持ちを抱えながら応援するのは、自分がつらいだけなので。

最終更新:2023/07/27 17:05
見なかったことにしてオタク続けられないでしょ
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