カルチャー
渥美志保さんインタビュー

韓国ドラマ通が語る、『梨泰院クラス』日本版リメーク『六本木クラス』の懸念点とは?

2022/07/02 16:00
サイゾーウーマン編集部

――ほかの登場人物にも、懸念点はありますか?

渥美 チャン・デヒ役にあたる長屋茂の過去が、どう描かれるかです。チャン・デヒは朝鮮戦争停戦後の激動の時代、4人きょうだいの長男として生まれ、末っ子が餓死、ほかのきょうだいも道端に落ちた腐った食べ物を口にして亡くなるという過酷な幼少期を過ごした。「家族を飢えさせない」という思いで、屋台から始めた店を一代で業界トップの企業に成長させた……という人物なんです。そういった背景があるからこそ、チャン・デヒの冷酷なまでにビジネスに徹する姿に説得力があるわけですが、長屋はそのあたりどう描かれるのか。

 長屋が具体的に何歳かはわからないものの、ティザーを見る限り、香川さんの実年齢より上の世代ではなさそうですし、戦争を背景に、家族が餓死した過去を持つキャラクターを演じるのは無理がありますよね。貧乏だったという設定は通用するにせよ、それだけだと、ただの傲慢で嫌なだけのキャラクターになってしまうのではないでしょうか。

――長屋のキャラクターに説得力がないと、彼に立ち向かっていく宮部の存在感もぼんやりしてしまいそうです。

渥美 『梨泰院クラス』は、パク・セロイがチャン・デヒを倒すことにより、前世代の“呪縛”から解き放たれる物語でもあると思います。というのも、「土下座」はいわゆる“有害な男性性”の象徴といえますが、パク・セロイはその価値観の中でチャン・デヒと戦っていたものの、最終的に土下座なんて“どうでもよくなる”んです。

――日本でも昨今、“有害な男性性”が問題視されるようになりましたが、韓国では日本以上に、そこからの脱却が意識されているのかもしれません。

渥美 『六本木クラス』の物語が、土下座をめぐる前世代の男性性の戦いに回収されるのではないかという懸念はありますね。またそれと似たような点で言うと、パク・セロイの「女性経験がない」という設定はどうなるのかも気になります。妻だけでなく愛人にも子どもを産ませたチャン・デヒと対比するようなこの設定は、「女性経験の多さが男性の価値ではない」という今の時代の価値観を表しているように思うんです。

 韓国では、女性経験がないことを「母胎ソロ」と言い、BIGBANG・SOLが18年、「母胎ソロのまま結婚」と話題になったり、『梨泰院クラス』と同時期にヒットした『愛の不時着』や『サイコだけど大丈夫』でも、主人公の男性が「母胎ソロ」という設定でした。こうした「女性経験の多さが男性の価値ではない」という価値観は、「#MeToo運動」の流れの中で出てきたものといえますが、日本ではまだこの価値観がそこまで根付いていないですし、『六本木クラス』では宮部の女性経験の有無について触れられないような気がします。

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