芸能
『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』父からの仕送りにも「反省しない」、夢を追う27歳芸人「ボクがなりたいもの~芸人になる。と上京した娘~」

2021/07/05 17:50
石徹白未亜(ライター)

 幸世の舞台で観客の反応がいま一つだったのは「自身の体の性と心の性の違和感というセンシティブなテーマで、笑っていいのかわからない」という困惑あると思うが、しかしそれ以外に「単純に面白くないから笑えない」のもあるのではないかと番組を見て思った。

 「父親に『男になりたい、すね毛を生やしたい』と懇願する」という、自分の実体験が幸世のネタだ。第一線で活躍する芸能人と比べるのは酷だが、同じトランスジェンダーのタレント・はるな愛の鉄板芸として、時たま「ドスの利いた声」を出すものがあるが、それと比べると、幸世のネタは「笑ってほしい」というより「わかってほしい」というものに私は見えた。はるなには「これで笑ってほしい」という意図を感じ、実際に笑えて、芸として成立しているが、幸世の場合は芸として微妙ではないだろうか。

 もし幸世が、人を笑わせたいというより、人に自分の身の上をわかってほしい、こんな人もいるということを知ってほしいのなら、お笑いという形式を取らず、自分の思いを率直に伝える方が向いているようにも思う。しかしそうではなく「笑ってほしい」のならば、自分の性を、プロの笑いとして提供するほどまでは乗りこなせていないという現実をしっかり噛み締めたほうがいいように思えた。

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