芸能
『ザ・ノンフィクション』レビュー

『ザ・ノンフィクション』茨城ディープ・ママたちに癒やされる「酒と涙と女たちの歌 ~塙山キャバレー物語~ 前編」

2021/05/31 17:23
石徹白未亜(ライター)

 「ラブ」の美佐子ママは、さばけた雰囲気だが、自分のことをあまり語りたがらない。そんな美佐子ママのもとに、2020年の暮れに、ママの娘、夏海が訪ねてくる。美佐子ママはかつて農家に嫁ぎ、3人の子どもに恵まれたが、実家の借金を背負うことで義実家との関係が悪化、当時10歳の夏海ら子どもたちを置いて、家を出ていったという。夏海自身が母親になり、母に会いたい思いで探し当て20年ぶりの再会となった

 夏海の話によると、美佐子の舅姑はかなり厳しい人だったようだが、美佐子にも別の男の影があったようで、また美佐子ママの実家の借金も義理の家が結局返したなど、さまざまな事情があったようだ。親子の対面は、最初は和やかな様子だったものの、出ていった真相を知りたい娘、言いたがらない母との間で、徐々に雲行きは怪しくなっていく。

ママと客に流れる「いい酒」の雰囲気

 春という時期的な事情もあると思うが、最近の『ザ・ノンフィクション』は社会に出たての若者をテーマにした回が続いていた。しかし、やはり『ザ・ノンフィクション』は中高年の人間を見つめるときに本領を発揮する。改めてそう思うほどの「神回」だった。

 ママたちだけでなく、客もよかった。客たちの笑顔がとてもくつろいでいて「いい酒」であることが伝わってきた。仲間内で酒を飲み盛り上がり、ここがホームグラウンドだと上機嫌で話す客もいれば、イヤなことがあったのか、一人沈んだ顔でカウンタ―に座っていたものの、ママからハイボールに金粉をサービスされて、少し笑顔を取り戻した客もいた。

 わいわいやりたいときも、イヤなことがあって、このまま家に帰るのも……というときでも、人生のベテランのママたちが笑って受け入れてくれる。うちの近所に、なぜ塙山キャバレーがないのだろうと思った人は、私も含め多いと思う。

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