コラム
老いゆく親と、どう向き合う?

アルコール依存症で認知症の母、被害妄想がひどくなり……「どうしても優しくできない」介護する娘の告白

2021/02/07 18:00
坂口鈴香(ライター)

 東野さんは、母親と二人になる時間を減らすために仕事を増やすことにした。夜勤も積極的に引き受けている。

「幸い、今は大学生の娘が家にいるので、デイサービスの送り出しや迎えもやってもらえて助かっています。母も娘と一緒の方が穏やかですし。娘の後追いをして、リモート授業の邪魔をしたりしているようですが(苦笑)」

 母親は東京にいるのがイヤなようで、時折「帰りたい」と言う。東野さんは、母親としゃべるとケンカになるので、母親が耳が遠いというのを理由に、あまり会話しないようにしていると明かす。

「私自身の幼さなのかもしれませんが、口をきかないことでしか対処できないんです。乗り越えるには時間がかかるでしょう。娘には、昔母がしたことは伝えていませんが、私も年を取って母と同じようなことを娘にしてしまうかもしれません。『そのときは許してね』と言っています」

 インタビューが終わったあと、東野さんはメールでわざわざこんなことを付け加えてくれた。

“私は難産の末に生まれてきた子で、しかも父はお産の後もまったく母を助けることもなく、ミルク代をお酒に替えるほどで、母はとても苦労したそうです。妹のお産のときは、父も病室ですき焼きを振る舞うほど協力的だったとのことです。私は父に顔立ちがそっくりで、価値観も父の影響をかなり受けているので、母には疎ましい子だったかもしれません。母の私への厳しさは、そんなところに原因があったのかもしれません。友達も、母の気に入った人でないと仲良くさせてもらえませんでした。

 そんなことも含め、母を恨んでいるのかというとそうとも言い切れず、ただ子ども時代を思い出してしまうのがつらいだけなんです。これは私が克服しなければならない自分の幼さで、修行と思って母と一緒にいるようなものです“

 母親は85歳。母親の母、東野さんの祖母は102歳まで生きたという。「あと17年、在宅介護を覚悟しています」と笑う。長い長い修行になりそうだ。その修行は、絶対にしなければならないものなのだろうか?

 東野さんは、この記事に本名を出してもいいと言ってくださった。正直で、真っ直ぐな人なのだ。そんな人だからこそ、“修行”を決めたのだろう。それでも、しなくていい修行はしないという手もあると思うのだ。このインタビューで、客観的に父親や母親を見ることができて、東野さんの気持ちが少しでも軽くなるといいのだが。

坂口鈴香(ライター)

終の棲家や高齢の親と家族の関係などに関する記事を中心に執筆する“終末ライター”。訪問した施設は100か所以上。 20年ほど前に親を呼び寄せ、母を見送った経験から、 人生の終末期や家族の思いなどについて探求している。

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最終更新:2021/02/07 18:00
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