カルチャー
鳥居りんこさんインタビュー【後編】

「余命10日」宣告の母が死なない……壮絶な看取り介護を通して知った「尊厳死は苦しまない」のウソ

2021/02/28 17:30
サイゾーウーマン編集部
写真ACより

 両親を10年以上にわたり介護し、看取った経験を持つ、エッセイストの鳥居りんこ氏が、親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)を上梓した。同書には、あまり知られていない“看取り”の実情が克明に描かれており、介護・看取り初心者にとっては参考書のような1冊となっている。

 そんな鳥居氏へのインタビュー前編では、“毒母”だったという母親の介護体験を振り返っていただいた。後編では、母親の延命治療は「しない」という選択を下した鳥居氏の葛藤について詳しくお聞きする。

(前編はこちら)

延命治療しないと決めたのに……決意が揺らぐ看取りの現場

親の介護をはじめる人へ伝えておきたい10のこと』(学研プラス)

——鳥居さんは、お父さまとお母さま、どちらも看取られているそうですね。

鳥居りんこ氏(以下、鳥居) 父の看取りについては、「父の希望をある程度かなえられた」という点で納得感はありますね。というのも、父は「もっと生きたい」と、自ら望んだ最新の治療に挑戦し、「自宅で死にたい」という希望通りに息を引き取りました。終末期、子どもである私たちには「痛い」「触るな」「この苦しさはわからないだろう」なんて文句を言ってたんですが、私の夫や姉の夫には「いい人生だった」「孫のことをよろしく」と遺言のようなことを伝えていました。しかし母の場合は……最後まで「どう死にたいのか」という本音が、まるでわからなかったですね。

——自らの死について触れることを、拒否していたのでしょうか?

鳥居 いえ、老人ホーム入所時に、母は「ここで看取られたい」「延命治療はいらない」という契約書の項目にサインしていました。でも、どこまでが本心なのかわからない。「本当は生きたいけど、あなたに迷惑だから早く死にます」とか言うんですよ。私は、心の中で「本当にその通りだから、早く死んでください」と思っていたけど、“儀式”として「そんなこと言わないで、長生きしてよ」と返さなくちゃいけない。母はそれを聞いて、安心していたようでした。おそらく、本音の本音のところでは、「病気を克服し、健康になって、今後も女王様のように子どもたちを従えて長生きしたい」んだろうなとは、うっすら感じていましたが、死は避けられない状況だったんです。

——お母さまの看取りは、どのようなものだったのでしょうか?

鳥居 ある日、老人ホームの訪問医の方から、「あと10日で亡くなる」と宣告されました。延命治療をせず、そのまま死を待つことにはなったのですが……想定外に母が苦しそうにしているんです。私はてっきり、最期の10日間、母は痛みも感じない状態で、家族と穏やかにお別れをして、フーッと眠るように死んでいくと思っていたんですが、そんなことはなかった。目の前の母は水を欲しがっているのに、「誤嚥して肺炎の症状が出たら、さらに苦しめてしまう」と言われ、絶飲しなければならない。病院に搬送してもたらい回しにされるだけだから、延命治療をせずにここで看取ると決めたのに、「病院に行けば、母はちょっとでも楽になるのでは」とも葛藤しました。しかも、余命10日だったはずなのに、なかなか死なないんですよ。母の死についての責任を誰かに押し付けて、逃げ出したい——それが当時の心境でした。

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