児美川孝一郎氏インタビュー【前編】

「教育改革」で学校に新たな動き! 「目標達成主義」と批判渦巻く「キャリア・パスポート」を考える

児美川孝一郎氏

 2020年度、戦後最大規模の「教育改革」により、「新学習指導要領」が導入され、「道徳の教科化」「英語教育の早期化」などが実施される。一体、教育はどう変わるのか――いま「教育現場」に世間の関心が集まっている状況だ。

 そんな中、新学習指導要領の実施を踏まえ、来年度から小中高校生を対象に、学校生活の目標を自ら設定して、どの程度を達成できたのかを評価するための「キャリア・パスポート」なるものが導入されることをご存じだろうか。この「キャリア・パスポート」とは、「小学校から高等学校を通じて、児童生徒にとっては、自らの学習状況やキャリア形成を見通したり、振り返ったりして、自己評価を行うとともに、主体的に学びに向かう力を育み、自己実現につなぐもの。教師にとっては、その記述をもとに対話的にかかわることによって、児童生徒の成長を促し、系統的な指導に資するもの」(文部科学省「『キャリア・パスポート』の様式例と指導上の留意事項」より)とのこと。

 子どもたちの成長をサポートするような画期的な制度だと見る向きがある一方、「自己評価制度って窮屈そう」「『人生は横道にそれてはいけない』という目標達成主義を強いられているようだ」といった批判の声も少なくない。果たして「キャリア・パスポート」は今の社会に合った教育なのだろうか――。今回、キャリア教育について詳しい、法政大学 キャリアデザイン学部教授・児美川孝一郎氏に聞いた。

「キャリア・パスポート」目的通りに使われれば悪くはない

――「キャリア・パスポート」が導入されると知った時の印象をお教えください。

児美川孝一郎氏(以下、児美川) これまでも、市町村教育委員会単位、あるいは個別の学校単位の取り組みとして、同様のことは行われていました。大学でも、学生に学習・行動履歴などを付けさせるポートフォリオを持たせて、就職活動に役立てるという試みはあります。こうした草の根で行われていたことを、文科省が政策化するのだという印象を受けました。新しい点としては、「キャリア・パスポート」と名付けたところと、記録が小・中・高と持ち上がるという点です。

 ちなみに高校では、大学入試に向けた「eポートフォリオ」というものを実施する学校も少なくありません。これは、1年時からの活動の記録をネット上に蓄積し、大学受験の調査書をつくるときに役立てるもの。全国の高校の4割以上が導入しているとも言われています。「キャリア・パスポート」は、それと混同されるのではないかとも思いました。

――「評価できる点」「問題があると感じる点」「今後課題になりそうな点」について、それぞれ教えてください。

児美川 現時点では、キャリア・パスポートは“ふんわり”したもので、学校によってどういう様式にするか、何を書かせるか、基本的には決められていません。決まっていることと言えば、「活動の記録を書く」「小中高を通じて行う」「生徒は自分を振り返る材料にし、先生は生徒を指導する資料にする」ということくらい。様式や内容が「自由」というと学校現場が困るので、「例示資料」として様式の例が文科省ホームページにアップされてはいますが。

 学校によって使い方は任されているということを前提とすると、一義的にいい点悪い点、課題は言いにくいですね……。自分の学習や活動を振り返るという目的通りに使われれば、児童生徒自身が「自分はこれだけ成長できたんだな」と実感できて、自己肯定感を高めることになるので悪いことではないですし、先生がそれを見て「成長したね。今後はこういう点を新たな目標にしたらいいんじゃないか」などと対話的に関われるようであれば、うまくいくと思います。

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