インタビュー対談【後編】

ネットのおかげで「ここには何もない」感覚が薄れる――山内マリコ×笹井都和古が語る、地方と消費

2019/07/13 18:00
番田アミ

「mixi」が教えてくれた、SNSとの向き合い方

――「mixiで人に出会う」というのは、友達づくりですか?

笹井 いえ、友達は学校にいるし事足りてるんで、その友達と盛り上がって、一緒に男の人を探したりしていました。多分、すっごく暇だったんです。恐怖心は少しだけありましたが、友達とキャッキャしながら、「こんな返事来たよ」「えー、会いなよー」「会ってみようかなあ」なんて報告し合うのが楽しかったですね。

山内 抵抗感のなさ(笑)。

――山内さんはmixiに愛着があった一方、笹井さんはTwitterをよく利用されていたようですが、どんな情報を得ていたんですか?

笹井 最初は元から知っている友達とつながって、徐々に何でつながったのかわからない子とつながりだして、最終的に、Twitterばっかりやっている“ツイ廃”みたいなユーザーをよく見ていました。朝起きたら「むくり」とつぶやくような人です。あとは「京都でイベントしてます!」みたいな、バンドマン界隈の人たちともつながったんですが、嫌な感じの人もいましたね。

 わたしはサブカル系でもないし、ファッションにこだわりもないから、そういう男性たちに、すごく舐められている感じがあったんです。アイコンを見た段階で「こいつは違うな」ってはじかれるというか。アイコンの雰囲気から、“品定め”されている感じがありました。

――そういう男性にとっての“正解”の女性のアイコンって、どんなものですか……?

笹井 モノクロで遠くから自分を捉えている感じとか、映画のワンシーンとか、映画『レオン』のマチルダとかですかね。

山内 へぇ〜マチルダのスタイルアイコンぶり、すごいな。サブカルは死んだけど、マチルダだけは時代を超えて生きてる(笑)。

――Twitterで出会った人と、恋愛として関係を深めることはありますか。

笹井 Twitterで出会った人といい感じになったことはありますが、よかったかと聞かれたら、どうなんだろう……。恋愛じゃなく、一夜限りだったとしても、Twitterでその人の中身を見た上で行為に及ぶのって、なんだかスッキリしない感じがします。実際に会う前から「この人、こんなこと考えてるんだ」とわかってしまうって、あまり健全ではないですよね。

山内 人ってリアルとTwitterで全然違うしね。私はmixiでSNSのいろはみたいなものを学んで、あんまり消耗しないよう距離とってたりするけど、笹井さん世代は青春真っただ中にSNSを全力でやって、SNSに適応しつつ、でもやっぱりけっこう摩耗してるんだなぁと、『県民には買うものがある』読んでて思いました。pixivにはpixivのすり減り方があるってこと、知らなかった。これが今の、地方都市の青春なのか〜と。すごく面白かったです。
(番田アミ)

■山内マリコ(やまうち・まりこ)
1980年富山県生まれ。大阪芸術大学映像学科卒。2008年「 女による女のためのR-18文学賞」読者賞を受賞し、 2012年刊行のデビュー作『ここは退屈迎えに来て』は、 2018年に映画化された。 主な著書に『アズミ・ハルコは行方不明』『 さみしくなったら名前を呼んで』『パリ行ったことないの』『 かわいい結婚』 『東京23話』 『買い物とわたし お伊勢丹より愛をこめて』『あのこは貴族』 『皿洗いするの、どっち? 目指せ!家庭内男女平等』 『メガネと放蕩娘』 『選んだ孤独はよい孤独』 など。 最新刊は短編小説&エッセイ『あたしたちよくやってる』。

■笹井都和古(ささい・とわこ)
1994年滋賀生まれ、滋賀育ち。京都精華大学人文学部中退。2016年「県民には買うものがある」で第15回「女による女のためのR-18文学賞」友近賞を受賞。ドラえもんとハムスターがすき。
『県民には買うものがある』試し読みはこちら

最終更新:2019/07/13 18:00
県民には買うものがある
あ~、なんだかお買い物がしたくなってきた!
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