コラム
“中学受験”に見る親と子の姿

ジャガー横田さんの夫も罹患!? 最難関N中合格の母が襲われた「中学受験ロス」の実態

2019/02/24 16:00
鳥居りんこ

 美紀さん(仮名)の場合はこうだった。

 息子の大地君(仮名)は優秀な子どもで、塾に入ってから卒業するまで最上位クラスをキープし、特に何の問題もなく第一志望校であったトップ校に合格を決めた。

 傍目には順風満帆。何の文句があろう? というような受験である。しかし、美紀さんは一人息子である大地君の中学受験終了直後から浮かない顔をする日々が続いていた。「何の問題もないんです。大地は自分から受験をしたいと言い出し、自分で勝手に勉強していましたから、私がやったことと言えば、塾の送り迎えとお弁当作りくらいなものです……」

 美紀さんはそう謙遜するが、いくら優秀な子であっても小学生であることには違いはないので、受験に快適な環境を作るべく、美紀さんが大地君をサポートしてきたであろうことは想像に難くない。

「大地の成績がなまじ良かったものですから、周囲からの期待も半端なくて……。『当然、N中学に行くんでしょ?』って会う人ごとに言われてしまい、大地もその気になっていますし、これは失敗は許されないよな……って気持ちになっていました。成績的には問題ないので、もし不合格だったら、その原因は全て私のコンディション作りの失敗しかないなって考えると、すごく怖かったです」

 そして、念願かなって、大地君は無事に最難関N中学への合格を果たした。

「自分でもわかっているんです。これが『燃え尽き症候群』なんだなって……。私なりに使命を果たそうと、全力を注いだつもりだったので、ゴールに到達した途端に気持ちがフッと抜けちゃったみたいになって……。大地と主人が、それぞれの生活を満喫しているのを見ていると、次第に自分は元々、誰からも必要とされてなかったんだなと思っちゃって、心にぽっかり穴が開いたみたいになっちゃって、何もする気になれないんです」

 「失敗は許されない」という使命感を背負い続けてきた美紀さんにとって、大地君の中学受験は、心理的にギリギリの綱渡りだったのかもしれない。そして、受験終了。それまで一種の生きがいのようになっていた「大地君をサポートすること」が、合格と同時に突然必要なくなってしまったのだ。その影響で美紀さんは、“何もする気になれない”心持ちに陥ったのだろう。

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