稲垣吾郎の番組も終了? ジャニーズへの業界忖度で落ち続けるテレビの信用度

2019/02/05 20:00

TBS系の読書バラエティ番組『ゴロウ・デラックス』が今春を持って終了することが内定した、と2月5日付の日刊スポーツが報じた。「良質な教養番組として評価が高かった」が、「春の改編を機に、一区切りつける形となったようだ」としている。

 春と秋に番組編成を見直すのはテレビ業界の慣例。しかし『ゴロウ・デラックス』打ち切りの報に、ネット上では「ゴロウ・デラックスは作家自身がその本の話をしてくれる。 こんなシンプルな素晴らしさを持つ番組が他にある?」「こういった番組が無くなることは日本の文化の衰退を意味する」など、存続を望む声が続々と寄せられている。

 『ゴロウ・デラックス』はそのタイトルからわかるように、MCを稲垣吾郎が務める稲垣の冠番組だ。同局の外山恵理アナウンサーと共に、<課題図書>として毎週1冊の話題書やベストセラーなど、さまざまなジャンルの本を紹介。毎回ゲストを招き、話を聞くというスタイルで番組が進行する。番組のスタートは2011年4月15日で、現在は毎週木曜日の深夜0時58分からの放送だ。

 深夜の時間帯のため、筆者は毎週欠かさず視聴していたわけではない。ただ、観るといつも「本と著者を大切にする非常に良質な番組だなぁ」という感想を持った。本好きにはとても心地いい空気を感じる番組、と言えばいいだろうか。教養番組だけれど、決して押しつけがましい雰囲気はない。それでも「あぁ本を読みたい」と観終わったあとにしみじみと思わせてくれるような放送内容なのである。

 深夜の放送ゆえ、おそらく視聴率はそう高いものではなかっただろう。それでも2011年からいままで、何度か放送時間帯の変更などを経ても続いてきたのは、決して派手ではないけれど「これこそテレビで放送すべき番組である」と感じ、支持してきた多くのファンがいるからだろう。そしてそれはおそらくSMAPや稲垣のファンだけではないはずだ。純粋な読書好きがたくさんいるだろうと推測できる。

 そんな8年続いた長寿番組の突然の終了。日刊スポーツは「これまでも何度か番組存続について議論されることがあった」とした上で、「複数の関係者によると、このほど終了内定が決定した」と報じている。理由については言及されていないようだが、終了が事実だとすれば、どうしても脳裏にチラついてしまうのは稲垣が長年所属していたジャニーズ事務所からの圧力問題だ。そう考えているのは、筆者だけではないだろう。

香取慎吾は約1年ぶり地上波で華のある存在感証明
 稲垣吾郎、草なぎ剛、香取慎吾の3人が2017年にジャニーズ事務所を退所したあとに発足したのが「新しい地図」。だが、契約の関係上なのだろうか、3人がそれまで持っていた地上波レギュラー番組は次々と終了していった。現在、地上波で唯一の「新しい地図」メンバーのレギュラー番組となっているのが『ゴロウ・デラックス』だったのだ。

 むろん、彼らは活躍の場をなにも地上波テレビだけに限っているわけではない。AbemaTVや映画、舞台に積極的に出演し、それぞれCM出演も多い。特に、香取は昨夏にファミリーマートのイメージキャラクターに就任。店頭ポスターでもテレビコマーシャルでもしょっちゅう見かけるため、香取が地上波テレビからいなくなったという感覚はない。

 だが、先日2月2日に放送された『欽ちゃん&香取慎吾の全日本仮装大賞』(日本テレビ系)は、香取慎吾にとって実に約11ヵ月ぶりの地上波登場であった。収録の司会のみならず、生放送パートでナビゲート役を務めた香取は、冒頭で「みなさんこんばんは、香取慎吾です。2月2日土曜日、現在ここ汐留の天候は晴れ……」と2017年9月に放送終了したテレビ朝日系『SmaSTATION!!』を彷彿とさせる挨拶をし、自らの番組をパロディ化したこのユーモアセンスにネット上でファンは大喜び。筆者も同番組を観ていたが、香取が持つ独特の華は変わらず健在であり、実にいい司会ぶりであったと思えた。稲垣といい、草なぎといい、香取といい「どうしてこの人たちが地上波で出ていない?」と不思議に思えるような存在感がやはりある。何より、SMAPとしてジャニーズ事務所に所属していた時点までは、各局で彼らは活躍していたではないか。

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 ジャニーズ所属時代にスタートしていた彼らの番組が、事務所を離れたことで終了するのは、契約上の問題もあるのかもしれない。だが、タレントとしてあれほど活躍していたにもかかわらず、新事務所に移籍してから地上波テレビへの出演回数が激減し、新番組も一切ないというのは、やはりおかしなことだろう。彼らを出演させることが、ジャニーズ事務所を不愉快にさせ、局への圧力につながるという暗黙の了解が存在しているとしか考えられない。

 ここ最近で圧力と忖度を感じさせるような出来事は、ほかにもあった。朝の情報番組『おはよう朝日です』(ABCテレビ)の1月31日放送で、SMAPというグループが“なかったこと”のような扱いをされたのだ。番組では「2020年東京五輪のメイン会場として建設中の新国立競技場で、こけら落とし公演を行うアーティストを予想する」という企画を流したが、国立競技場でこれまでに単独ライブを行ったアーティストをまとめたフリップにSMAPの名前がなかったのである。

 そこには07年のDREAMS COME TRUEを筆頭に、計5組のアーティスト名が書かれており、SMAPはドリカムより前の05年に単独公演をしているのにも関わらず名前はなし。番組には芸能リポーターの井上公造氏が出演しており、「国立に縁が深い」として20年末でグループ活動を休止する嵐を最有力に挙げている。そのため視聴者がSNSに「嵐とSMAPを同じフリップに書いてはいけないという忖度?」「明らかなSMAP外しで不自然」「圧力ですか」といった疑問を投稿。結果、2月4日の放送では、05年から始まりSMAPの名前が追記された新たなフリップとともに、アナウンサーが「初めて(単独)ライブをしたのは2005年のSMAPです」と訂正。「決して他意はなかったのですが、誤解を招く表現でした。失礼しました」と謝罪した。

 昨年の11月には『歌のゴールデンヒット -年間売上げ1位の50年-』(TBS系)の中で、平成最大のヒット曲である「世界にひとつだけの花」の曲名が登場すべき場面で登場せず、完全になかったことにされてスルーとなったという珍事もあった。

 香取慎吾は『仮装大賞』の司会を17年間務めており、これはジャニーズを離れた後も変わらず継続している唯一の仕事だ。萩本欽一は、「『仮装大賞』をいずれは慎吾ちゃんに任せたいのよ」と公の場で発言しており、彼のバックアップがあるからこそスタッフはジャニーズの圧力に屈さずいられるのかもしれない。逆に言えば、業界の大御所が盾にならなければ、テレビは芸能事務所の言いなりということだ。

 こんな不自然なことをいつまでも続けていたら、それこそ視聴者はテレビの情報を信用できなくなるだろう。いち芸能事務所への忖度や圧力が幅を利かせている業界の提供する情報を、誰が信じられるだろうか。

(エリザベス松本)

最終更新:2019/02/05 20:00
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