[官能小説レビュー]

少女が抱く、歪んだ性への思い——村田沙耶香『ギンイロノウタ』がさらけ出す心の闇

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『ギンイロノウタ』(新潮社)

 人には秘密にしたい性の話題だからこそ、昔から文学では自由に表現されてきた。日本では「官能小説」、海外では「ロマンポルノ」というジャンルが定着し、昨今では電子書籍でもライトな官能小説が気軽に読める時代になってきた。

 表立って話題にすることは少ないかもしれないが、着実に性に対してオープンになってきている。しかし実は、「性」というものは、決して他人には話すことができない闇を抱えている場合も多いのではないだろうか。

 少女時代にアニメや漫画のワンシーンに触発された、初めての性。同い年の異性とふざけ合って触れた肌の感触、小学生時代のスカートめくりなど……幼いながらに「これはいけないことだ」と理性的に自制しながらも、それを心の底では嫌だと感じなかった本能に惑わされ、大人になっても秘密にしてきた女性は少なくないのではないだろうか。

 今回ご紹介する『ギンイロノウタ』(新潮社)の作者である村田沙耶香氏は、誰にも打ち明けずに心の中に閉じ込めていたパンドラの箱を、いとも簡単に開ける。その描写は目を覆いたくなるほどおぞましく、ドロドロとしながらも、食い入るように文字を追ってしまうのだ。自分の中に秘めていた禁忌をたやすく破る村田氏のことばたちには、えげつないものを見せられる半面、こうした思いを抱くのは自分だけではなかった、という安堵感も得られる。

 『ギンイロノウタ』は、内向的で人と接することが苦手な主人公・有里の物語だ。普段は穏やかだが、気分によって突然豹変する母親に育てられた彼女を救ってくれる存在は、文房具屋で購入した銀色の指示棒であった。彼女は大好なアニメ『魔法少女パールちゃん』の主人公のように指示棒を振り、大人になればどこか違う国へ行けるものだと信じていた。

 いつものように『パールちゃん』を見ていると、とあるアクシデントから裸同然となってしまったパールちゃんに無数の男たちが釘付けになるシーンが登場する。そこで、有里の性は目覚めた。早く大人になって「大人の体」になれば、大勢の男たちに注目される——押し入れの中に無数の男の「目」の写真を貼り付け、そこで指示棒を使って自慰をすることが少女時代の有里の日課になった。

 そして中学生になっても胸は膨らまず、まっすぐな棒のような体形で「大人の体」に恵まれなかった有里は、誰よりも安く自分を売り、誰よりも喜ばれようと決意する——。

 息苦しくなるほど強い衝動を感じさせる少女・有里の物語に、幼い頃の自分を重ね合わせて胸が熱くなる。本来、自分の性に対する気持ちは、決して他人に口外できるようなものではない。有里のようにおぞましく歪んだ思いも性に重ね合わせていたはずだ。

 セックスは必ずしも気持ち良いだけではない。そして村田氏が表現する「性」も、決して心地良いものではない。性は心の闇もさらけ出す。だからこそ魅了されてしまう。
(いしいのりえ)

秘密だからこそ惹かれる

しぃちゃん

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