コラム
【連載】庶民派ブランドの落とし穴

しまむらが抱える“3つの地雷”! 「都心の人には相手にされない」という大問題の背景

2018/06/30 20:00

 それ以外にも、しまむら成長の要因はさまざまありますが、今回はこの3点についてどう弱みに転じたかを見てみましょう。

◎ユニクロ化で「しまむららしさ」がなくなる

 しまむらグループ全体の現在の売上高は5651億円(2018年2月期決算)あります。世界のアパレル小売企業ランキングは1位がZARAのインディテックス社、2位がH&M、3位がユニクロ、ジーユーのファーストリテイリング社、4位がGAPというのは有名ですが、しまむらグループは10位にランキングしています。ここまでの巨大企業となると、商品を揃えることに苦労します。せっかく揃えてもそれが各店に5枚ずつしか配布できないようでは困ります。もちろん、数量が多すぎれば売り切れ御免にならずに消費者からの人気が落ちますが、少なすぎてもあっという間に売り切れるため、欠品による機会損失が大きくなり、ある程度の枚数は必要なのです。しかし、1416店舗にまでなると在庫品の仕入れだけでは賄いきれなくなります。ですから、しまむらも近年はジワジワと自社企画製品を増やしていたのです。

 その施策が顕著だったのが、3年ほど前に大ヒットした保温ズボン「裏地あったかパンツ」。これは2015年に100万本以上が売れた大ヒット商品で、これによって決算も増収増益となりました。しかし、100万本も商品を揃えようとすると仕入れ品では当然不可能で、これは自社企画生産せざるを得ません。100万本となると相当に大掛かりな生産システムが必要になり、それはユニクロのやり方とほぼ同じになります。これまでの「仕入れ品による売り切れ御免」から「自社企画による大量生産」というビジネスモデルに切り替わりつつあるということで、通常、ビジネスモデルの変更には大きな危険が伴います。もちろん、しまむらもその例外ではありません。消費者にとっても「しまむららしさ」がなくなることは、魅力激減となるでしょう。

◎都心の消費者は、購買欲が湧かない!?

 店舗数が1416店となり、地方・郊外ではほぼ飽和点に達しようとしています。地方・郊外では、もう有望な出店先はほとんど見つけられなくなっています。残るは大都市都心となりますが、ここはユニクロをはじめとしてジーユー、ZARA、H&M、GAPなど強力なライバルがひしめき合っています。どれもそれなりに外観・内装・商品陳列と、工夫を凝らして「雰囲気作り」を行っており、ローコストを追及した、簡素なケレン味のない外観・内装・商品陳列で太刀打ちできるとは思えません。都心の消費者には、相手にされないのではないでしょうか。また大都市都心は家賃や土地代、人件費も地方・郊外に比べて高くなっていますから、お得意のローコスト戦略は通用しにくくなります。

◎インターネット通販が遅れてる&不便すぎる!

 インターネット通販が万能だとは思いませんが、ファッション業界において、重要な一部になりつつあることに異論はありません。しまむらは、ネット通販をこれから始めるという段階です。昨年秋にEC構想を発表しましたが、通常の宅配されるインターネット通販ではなく、希望商品を指定店舗に取り寄せるという、いわばインターネットを介してのお取り寄せサービスに過ぎず、最近、改めて通常のネット通販への参入を明らかにしました(自社ブランドをゾゾタウンに出店)。

 そもそも、店舗取り寄せでもあまり強みを発揮できないのではないでしょうか。ユニクロや無印良品も、ネット通販での店舗受け取りが可能ですが、両者は都心やターミナルにも店舗が多く、通勤・通学の途中で立ち寄れる利点があります。しかし、しまむらは地方・郊外の店がほとんどですから、休日に「わざわざ」出かけなくてはなりません。さらに、イオンモールなどの大型ショッピングセンター内に出店していれば、休日に食料品を買いだめする際に立ち寄ることが可能ですが、ローコスト戦略の影響で、そういうテナント出店ではなく、ロードサイドに路面店として出店している場合が多いため、やはり「わざわざ」立ち寄らねばなりません。こんな不便なお取り寄せサービスを好んで使う消費者は、ごく限られた一部でしょう。

 しまむらグループ=安売り専門店が巨大化したブランドだとすれば、いつまでもそのビジネスモデルのままでは成長が難しくなります。成長しなければ現在のような悩みにぶち当たることもなかったのでしょうが、さらなる成長を目指すのであれば、これまでのビジネスモデルを変える必要性が出てきます。その舵取りを誤ってしまうと、一気に衰勢となってしまう危険性も。巨大化した故の苦悩というのが、現在のしまむらの大きな地雷と言えるのではないでしょうか。
(南充浩)

最終更新:2018/06/30 20:00
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