カルチャー
シルバーウッド代表・下河原忠道氏インタビュー

「認知症は不便があっても不幸ではない」VRによる疑似体験で変わるもの

2017/05/19 15:00

 初作品から1年、認知症の中核症状を疑似体験できるものから、最近はストーリー性を重視したものにシフトチェンジしたという。

「認知症の疑似体験だけでは駄目だなと思ったんです。興味のない人たちに『認知症について勉強しよう』と言っても、ハートは動きませんよね。そこで、これからリリースを予定している6話目は、39歳で若年性アルツハイマー型認知症と診断された丹野智文さんのストーリーを描くことにしました。冒頭は病院で告知を受けるところから始まります。エンターテインメント寄りのストーリーになっていますが、認知症のある人たちがどんな思いを抱えて生きているのか、作品をきっかけに想像力を働かせてもらえたら」

 下河原氏は、VR作品による追体験によって当事者ではない個人の心が動き、ひいては行動が変わっていくと考える。

「大事なのは“迷惑をかけられる側”がどうサポートしていいのかを把握すること。どこに行けばいいかわからなくなっている人が目の前にいれば、全力で何とかしてあげようと接すると思うんです。特に日本には、助け合いの精神が心に根付いていると僕は信じています」

■偏見なく想像力をもって認知症のある人たちに接する仲間が増えること

 差しあたっての目標はあくまでも、たくさんの人にVRで認知症を疑似体験してもらうことだという。

「これからは行政と企業を巻き込んでいきたいと思っています。やはり福祉施設や買い物先など、当事者の生活に密接に関わる現場での啓蒙活動が必要ではないでしょうか。ただ、どうやって収益をあげるか、ビジネスモデルはまだ確立していません。でも、我々のコンテンツをたくさんの人に見てもらえれば、結果はついてくると思います。ゴールは“偏見なく想像力をもって認知症のある人たちに接する仲間が増えること”です」

 今秋には、米サンダンス映画祭のVR部門で作品エントリーを目指しているという。コンテンツのクオリティが評価されることで、ますます注目度が上がることが期待される。個人の認知症リテラシーを高めることが、ひいては認知症の人に優しい社会、そして私たちが生きやすい未来の実現につながるはずだ。
(末吉陽子)

シルバーウッド

最終更新:2017/05/19 16:43
アクセスランキング

今週のTLコミックベスト5

  1. 塩対応な私の旦那様はハイスペックな幼馴染!?~トロトロに甘やかされて開発される体~
  2. 交際ゼロ日で嫁いだ先は年収5千万円のスパダリ農家~20歳、処女を弄ぶ優しい指先~
  3. お花屋さんは元ヤクザ~閉店後の店内で甘く蕩ける~
  4. 体育会系幼馴染は世界一の溺愛男子~全人類の好感度がある日見えたリケジョの私~
  5. 淫魔上司は不器用な溺愛男子~インキュバスが魅せる激甘淫夢は人外の快感~
提供:ラブチュコラ
オススメ記事
サイゾーウーマンとは
会社概要
個人情報保護方針
採用情報
月別記事一覧
著者一覧
記事・広告へのお問い合わせ
プレスリリース掲載について
株式会社サイゾー運営サイト