風邪薬や頭痛薬のレシート捨ててない? 新制度「セルフメディケーション税制」が教えてくれるロスのチリツモ

2017/03/28 20:00

こんにちは! ファイナンシャルプランナーで社会保険労務士の川部紀子です。3月10日、私の著書が発売されました。タイトルは『家計簿不要!お金がめぐる財布の使い方 財布の中に神棚を!』(永岡書店)。女性向けのお金に対する心構えを一生懸命書きました。メッシー読者の女性にもピッタリの内容だと思います。巻頭と巻末にはマンガも入っていて、気楽に読める内容を心掛けました。書籍の方もぜひ読んでみてくださいね!

さて、2017年も4分の1が終わりますが、今年に入ってから薬局やドラッグストアで薬を買いましたか? その時のレシート、取ってありますか? このレシートがあると税金が安くなる可能性がある「セルフメディケーション税制」が今年から始まりました。

今年初めにはニュースなどでも話題になっていましたが、最近はすっかり聞かないので、今日は、おさらいとレシート探しをしてほしいと思います。

◎どんな人がお得になるの?

まずは、セルフメディケーション税制でお得になるのはどんな人なのか3つのポイントを確認しましょう。

1つ目は、所得税、住民税がかかる人。そもそも、所得税や住民税が安くなる制度ですから、当たり前の話ですね。「私はパートやアルバイトで、年収90万円くらいだから、所得税も住民税も払ってない」という人でも、家族が税金を払っている場合は関係ある話ですので要注意。

2つ目は、健康診断や予防接種を受けている人。この制度は要するに「健康を無視しない人にお得がある」というものです。病気になって病院などで治療した場合、医療費の3割を負担するだけで済んでいますよね。残りの7割は誰が払ってくれているかというと、それはもちろん国です。国にとっては、重大な病気になる前に健康診断で病気の予兆を早めに見つけようという人や予防接種で未然に防ごうという人は、たいへんありがたい存在になります。というわけで、セルフメディケーション税制はこういう人に対してちょっと税金をサービスしてあげる制度だと考えると分かりやすいと思います。

3つ目は、1~12月の1年間に、薬など(この制度の対象になるOTC医薬品なるもの)を12,000円超購入している人。家族の分も合わせてOKです。これだけ薬を買っている人からは、病院などに頼らない、「自力で治そう感」が出ていますよね。懐具合が苦しい国にとっては、これもやはりありがたい人達と考えることができるわけです。

◎どうすればいいの?

まず薬関係のレシートは何でももらいましょう。対象はOTC医薬品のみですが、OTC医療品と言われてもよくわからないと思います。対象になるものは意外に多いので、すべてのレシートをもらっておくのが無難です。

例えば、風邪薬や咳止め、頭痛薬、胃腸薬といういかにも「薬」というものだけでなく、塗り薬、目薬、栄養剤も対象になるものもあります。パッケージに「OTC医療品」と書いてある場合もありますが、書いてない場合でも対象となる可能性はあります。レシートをみれば対象商品かどうかがわかるので確認しましょう。

年末が過ぎて、12,000円超であることが確認できたら、確定申告をします。確定申告は面倒だし難しいというイメージがあるかもしれませんが、国税庁のサイトで挑戦すると、思ったより簡単だったという人も多いです。毛嫌いせずに一度チャレンジしてみてください。

自力でできなくても、税務署に行けば丁寧に教えてもらえます。確定申告と言えば、2月~3月のイメージがありますよね。でも、自営業などでけっこう稼いでいる人以外は、お金が戻ってくるタイプの確定申告(還付申告)をすることになるのですが、この場合1月から手続きが可能です。税務署が混み合う前の1月にやってしまうのも賢いですね。確定申告についてはまたいずれ説明したいと思います。

◎どのくらい税金が安くなるの?

なにより「セルフメディケーション税制はどのくらいお得なの?」と疑問に思う方がほとんどでしょう。結論から言います。平均的な年収の方の多くは、おそらくガッカリするほどの金額だと思います。

ニュースなどのメディアや各種サイトなどでは、「課税所得400万円の人が5万円対象の薬を買った場合」の例がよく出ています。この例では所得税と住民税が11,400円安くなると書かれているはず。でも、ちょっと待った! よく見ると「年収400万」ではなく「課税所得400万円」と書いてあります。これ、ざっくりと大手企業の勝ち組会社員というイメージを持ってください。しかも、5万円も薬を買った場合です。

ということは、日本の平均年収である400万円ちょっとの人が、薬をそこそこ買ったくらいでは、税金が安くなる額なんて知れています。お得額は1000円くらいなんてことは当たり前に起こるでしょう。

ですから、金額に期待するのはやめましょう。

でも、バカにして、この制度を利用しないのもNGです。だって、普段ペットボトルの飲み物が10円安かったらちょっと嬉しくないですか? 100円引きのお弁当なんて超お得と感じませんか? だったら、いいじゃないですか、この制度。

そして、こういう制度をスルーしない、その精神が、お金のあちらこちらに繋がっていくのです。

そのくらいのお得なんてどうでもいいや、という人は、少しのATM手数料なんてどうでもいいや、ポケットやその辺の謎の箱に入れた小銭なんてどうでもいいや、というふうに、ロスの「チリツモ」がかなりの金額になっていることは確実です。

お得額ではなく、その精神や意識がけっこうな金額の損や得に繋がっていくことを覚えておきましょう。目指すところは、クールな「お金の意識高い系」。目の前の損得だけに左右されず、あくまでクールに賢く生きましょう。

■川部紀子
1973年北海道生まれ。ファイナンシャルプランナー(CFP® 1級FP技能士)・社会保険労務士。大手生命保険会社のセールスレディとして8年間勤務。その間、父ががんに罹り障害者の母を残し他界。親友3人といとこも他界。自身もがんの疑いで入院。母の介護認定を機に27歳にしてバリアフリーマンションを購入。生死とお金に翻弄される20代を過ごし、生きるためのお金と知識の必要性を痛感する。保険以外の知識も広めるべくFPとして30歳で起業。後に社労士資格も取得し、現在「FP・社労士事務所川部商店」代表。お金に関するキャリアは20年を超えた。セミナーに力を入れており講師依頼は年間約200回。受講者も3万人超。テレビ、ラジオ、新聞等メディア出演も多数。

最終更新:2017/03/28 21:26
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