カルチャー
『東京タラレバ娘』レビュー

『東京タラレバ娘』で“説教芸”に興じる東村アキコは、愚かなお笑い芸人のようだ

2017/03/15 21:00

 余談だが、ある女友達がこんなことを言っていた。「年下の女が年上の女とコミュニケートするときって『結婚したいんです~』とか言っておくのがいちばんラクなんだよ」と。確かにそれは社会的地位も結婚歴もある年上の女性に対して、下手に出つつ、先輩を立てつつ、円滑なコミュニケーションを成立させるためのよい方法であるように思える。特に酒席においては。

 タラレバを読んで腹が立った、傷ついた、ショックを受けたという人は、どうか今すぐ読むのをやめてほしい。これはあなたたちのための物語ではない。「刺さる~」と言いたい人だけが読めば良い。これは単なる酒の席での与太話だ。それは作者が批判する「女子会」にも劣る、人を不快にさせるだけの不毛な交流である。世界にはもっとすてきなマンガがたくさんある。

 タラレバをたまたま読んで我が意を得たりとニヤついている中高年男性は、勘違いをしないでいただきたい。アラサー/アラフォー女性の現実であり総意であるかのように描かれているが、実際はそうではない。あなた方が周囲の女性とうまくコミュニケートできないのだとしたら、それは女性の側の問題ではなく、あなたの雑な現状認識に起因するものだ。

 マンガはマジョリティのエンタテインメントでありコミュニケーションツールであると同時に、はぐれ者たちにとっての自由の王国でもある。かつて『ひまわりっ ~健一レジェンド~』ではぐれ者たちの底抜けに楽しい日々を描いたのは、ほかならぬ東村先生ではなかったか。他者の生を罰し、毀損し、自由に対して制限をかけようとするマンガを、私は心底軽蔑する。今後タラレバが自己肯定と自由のマンガとなるわずかばかりの可能性を願いつつ、筆を置く。

小田真琴
(おだ・まこと)
女子マンガ研究家。1977年生まれ。男。片思いしていた女子と共通の話題が欲しかったから……という不純な理由で少女マンガを読み始めるものの、いつの間にやらどっぷりはまって、ついには仕事にしてしまった。自宅の1室に本棚14竿を押しこみ、ほぼマンガ専用の書庫にしている。「SPUR」(集英社)にて「マンガの中の私たち」、「婦人画報」(ハースト婦人画報社)にて「小田真琴の現代コミック考」連載中。

最終更新:2017/03/15 21:48
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