カルチャー
[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」10月22日号

「老後に怯える」ことの本質を捉えた、「婦人公論」のぴんぴん老後特集

2014/10/18 19:00

 しかしながら、ここまで老後問題に強い関心を寄せる裏には、過ぎた昨日より不確実な明日より「ここにある『いま』」を一番拒否したい! という複雑な思いがあるのかもしれません。老後問題に思いを巡らせることが、非常に“建設的な現実逃避”と考えているフシ、なくもないのでは?

 今号の特集ラインナップを見れば「『メタボ』より実は深刻。『ロコモ』対策で足腰の強化を」「話題の“ふくらはぎもみ”に挑戦してみました」「ゆっくりでも効果抜群! 指先体操で脳を元気に」などなど、「ゆほびか」(マキノ出版)のような健康&ボケ防止策が通常の1.5倍の量もあります。「ぴんぴん老後」を迎えられるためなら、ところかまわず「倍速指曲げ」「グーパー指先そらし」を実行、森光子ばりのスクワット、お風呂の中では揉むぜふくらはぎ……。“アイツ(夫、ご近所、友達)より絶対元気に長生きしてやる……”という執念で、今という貴重な時間を老後のスタンバイに費やす老人予備軍たち。さきほどまでロイヤルな風が吹いていた「婦人公論」が急にバトルロワイヤルな様相を呈してきました。

■寝たきりになっても、人生は続く

 そんな“とらぬ老後の皮算用”な前半から一転、特集後半は「今そこにある危機」、お世話する方される方を取り巻く深刻な問題を取り上げています。「『胃ろう』という選択を迫られたら」は「最近メディアによって悪者にされつつある『胃ろう』」について専門家にその功罪を聞くという企画。「胃ろう」とは「何らかの理由で飲み物、食べ物が飲み下せなくなった人のために、胃に穴を開けてプラスチックのチューブを通し、そこから栄養を直接入れる」方法。なぜこれが「悪者にされつつある」のかといえば、「『本人が望まない延命に使われるから、胃ろうは悪だ』と単純化され、刷り込まれてしまった」。つまり「胃ろう」そのものが、問題点の多い終末医療の1つのわかりやすいアイコンとされてしまったということです。

 一度胃ろうにすればもう二度と口からご飯は食べられないという思い込みと同時に、胃ろうにさせてしまうことへの罪悪感も介護する家族に与えてしまっていると、長尾和宏医師は語っています。「胃ろうも経鼻も点滴も、全部人口栄養。胃ろうだけがダメというのは誤解。一片の科学性もありません」。

 しかし、実際にはほとんどの人が終末期の人工栄養について正しい知識も持たず、明確な自己決定も行っていないのが現実。また、たとえ「延命措置としての胃ろうはやめてほしい」と文書に残した場合でも「植物状態の患者の胃ろうを中止し、その結果亡くなれば、医師は殺人罪に問われる可能性があります。そればかりか、遺族も殺人ほう助で取り調べを受けるかもしれない」といいますから、「死」は本音と建て前の間でグラグラと揺さぶられているといっても過言ではないでしょう。ピンピン老後の準備も大切ですが、元気でいる間にすべきことは終末医療にまつわるこうした矛盾だらけの状況を改善すべく、各人よく考えるということなのかもしれません。

 ルポ「認知症行方不明者1万人の時代に家族ができる見守りとは」の最後に、「『認知症発症後の人生』も、楽しく、安心して暮らせる社会でありたい」とあります。これを読み、自分がいかに「ボケたら(寝たきりになったら)一貫の終わり」と考えていたかを思い知らされました。たとえ認知症になっても、寝たきりでご飯が食べられなくなっても、人生は続くのです。そのとき自分はどうしたいのか、ということに思いを馳せていたら自然と“グーパー指先そらし”をしていた己の業に唖然としました……。
(西澤千央)

最終更新:2014/10/18 19:00
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