コラム
ブルボンヌの映画批評 「女優女優女優!」第17回

希望すら残酷な感情だとわかっていても、ね? 『風立ちぬ』の光を信じるの

2013/07/27 18:00
その後の日本を支える創造力は、まっすぐな男たちの汗と情熱のおかげ。片っ端からアタシが癒やしてあげたい……(そればっか)。

 またこうした、ものを生み出す夢を支えているのが、「憧れの人」「共に励む人」たちであることも忘れてはいけません。主人公、堀越二郎は、現実には会えなかった飛行機設計の先輩、イタリアのジャンニ・カプローニとたびたび夢の中で会話をします。また同僚の航空技術者、本庄(声優は「わしは男狂いじゃ!」と家光役も好演した細マッチョ西島秀俊たん)との、良きライバルであり親友でもある関係も描かれています。

 創造の世界は、同じ道で闘う人々との想いの絆があってこそ、前に進めるもの。アタシも、50歳を過ぎて、アニメコスプレで夜な夜な2丁目を徘徊する女装の先輩マーガレットさんなど、多くの先輩との絆を思い出しました(またレベル低下)。

 そんな、技術者らしい寡黙な主人公のもの作りストーリーに、中盤から恋という王道のドラマが加わります。

宮崎作品のヒロインの純粋さは「希望」なので、現実には存在不可能なレベルです。

 なんせ「サナトリウムもの」が原作。もう、本当にベタな悲恋でありながら、これがたまらなく胸を打つのです。「若手女優が難病で苦しむお涙頂戴邦画なんて見とうない!」と悪態をついてきたアタシが、手のひらを返すようで申し訳ないのですが、ずっと涙腺をやられてしまいました。ああまた、なけなしの潤いが体から抜けるぅ。

 千人斬りを終えているような真っ黒なアタシが、あんな清らかに思い合う2人に、どうシンパシー感じろっちゅんじゃ! と我ながらツッコミたくなりますが、逆に言えば、真っ黒なババアだからこそ、彼らの関係性にやられるのかも。

 別にこれを見て貞淑を取り戻そうってんじゃないの。人が惹かれ愛し合うシンプルな喜びは、どんなアバズレにだって心のどこかにあるものなのです。

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