[女性誌速攻レビュー]「婦人公論」5月22日号

「婦人公論」で野田聖子議員が主張する「中絶禁止の社会」は、“弱い女性”を守れるか

2013/05/20 21:00

 確かに40代的な世界観においての地方女子は「ここではないどこか」に憧憬を抱きながら現実の中でそれをあきらめ、永ちゃん好きなカレの補完物になっていったかもしれないけど、東京に対する盲目的な信仰がない若い世代においては、スモーク張ったワゴンでEXILEを聴きながらカレシとイオンモールに向かうのは、もっと主体的な選択なのかもしれまえん。

 最後に中島氏が「保守化や右傾化という言葉に代わる、今の状況を端的に表現するワードが必要ですね。存在意義をきちんと言い表せる言葉が見つかれば、自己承認欲求を満たすことにもつながりますから」とまとめていました。「保守」なのか「右傾」なのか、みなさんはどうお考えになりましたか?

■野田さんの「中絶」への執念が浮き彫りに

 続きましては「野田さんに問う!“中絶禁止”発言の真意は?」。2月23日付「朝日新聞」デジタル版での野田聖子・自民党総務会長の発言「年間20万人が妊娠中絶しているとされるが、少子化対策をやるのであればそこからやっていかないと。(中略)堕胎を禁止するだけじゃなくて、禁止する代わりに例えば養子縁組(をあっせんするため)の法律をつくって、生まれた子どもを社会で育てていける環境整備をしなきゃいけない」が物議を醸したのは記憶に新しいところです。産婦人科医の宋美玄氏が野田氏と直接対決する形で、少子化対策に対する本音を聞き出しています。

 「私は『中絶禁止で少子化対策を』なんて一言も言ってません」と、まずは自分の発言が曲解され伝えられたことを弁明。しかし「中絶と少子化解消とは分けて考えるべきではないですか?」という宋氏に対し、「私のゴールは、中絶しなくていい社会を作ることなの。ピルをコンビニで買えるようにしたり、産みたいと思いながら経済的な理由であきらめてしまう若いカップルたちの受け皿として、アメリカにあるような養子縁組あっせん法を提唱した。緊急課題である少子化対策には、こうしたこともやっていかなければならないと思っています」「堕胎罪という刑法があって、日本はもともと堕胎しちゃいけない国なんですよ」と、え? 中絶禁止=少子化対策を否定したんじゃなかったの……? これが政治家の詭弁というもの?

 「でも、彼氏から『俺は結婚しない。産みたいなら勝手にしな』と言われて産んだ子を養子に出して、その女性はハッピーでしょうか」「(ピルの自由化について)なかなか承認されなかったのは、そもそも自民党が反対していたからですよね」「育児休業制度を利用できるのは、恵まれた職場の人だけ」などなど、宋氏のまっとうなツッコミに、野田氏は同じ女性として共感したり党での立ち位置の厳しさを吐露したり。正直スカっとした答えは期待できません。

 ただ1つ、野田氏が本当に子どもを望んでいたんだなぁと実感した箇所は「私も不妊治療の途中で養子をもらおうと考えたけどダメでした。共稼ぎだからダメ、私がオバハンだからダメ。子どもが欲しくて長く不妊治療を続けた40代の人たちは、養子がもらえないようなシステムができあがっている」というところ。だからこそ中絶で消えていく20万の命がはがゆく忍びない。そこには一種呪いにも似た執着があります。

 しかし世間の女性たちは、みんながみんな野田氏のような強くて優秀な女性ではありません。どんなに情報を周知徹底させたとしても、断り切れずに避妊具無しでセックスし、育てられない子どもを妊娠する人がゼロになる日はないと思います。妊娠を知って逃げる男がゼロになることも多分ない。中絶禁止の世の中では、それこそそういう“弱い”女性たちが「産む機械」になってしまうのではないか。野田さんの言う「中絶しなくていい社会」「女性が主体的に生きられる世の中」を作るためには、中絶禁止より「産みたくなる環境」を作ることの方が生産的ではないでしょうか。
(西澤千央)

最終更新:2013/05/20 21:00
「婦人公論」
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