筆跡鑑定人に直撃!

「この遺言書は本当におじいちゃんが書いたものか?」知られざる筆跡鑑定の世界

2017/05/28 16:00

 サスペンスドラマで見ることの多い筆跡鑑定。騙す目的で他人が似せようと書いた筆跡をプロは何をもってして、どう見破っているのか? 筆跡鑑定人で『自分のイヤなところは直る!』(東邦出版)著者の牧野秀美氏に筆跡鑑定の現場について話を聞いた。

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『自分のイヤなところは直る!』(東邦出版)

 婚姻届を勝手に偽造され、知らぬ間に結婚させられているケースも

――筆跡鑑定というと遺言書のイメージが強いですが、そのほかの筆跡鑑定もあるのでしょうか。

牧野秀美氏(以下、牧野) はい、「貸借契約書の鑑定」や、「誹謗中傷文書の鑑定」もあります。子どものいじめ被害、従業員や店舗に対する悪質な誹謗中傷文書、職場の同僚に対する誹謗中傷や暴露文書などの書き手を明らかにします。

――誹謗中傷の場合、「筆跡」のないオンラインのものが多そうな印象です。

牧野 そうですね。ただ、メモや手紙、アンケート用紙の誹謗中傷がまったくないわけではないんです。自分の素性を知られたくない場合、匿名であっても履歴が残るITツールの使用は控える一方で、アナログな手書き文書ならば筆跡さえバレなければ足はつかないと考えるのでしょう。ほか、「遺言書以外の公文書の鑑定」ですね。「婚姻届」や「養子縁組届」などに偽造がないか鑑定します。

――筆跡鑑定は、刑事事件が絡むケースもありますよね。

牧野 はい。依頼者の要望として、「1.裁判所に証拠として提出するため鑑定書を作成してほしい」「2.結果がわかればいいので鑑定書の作成は必要ない」の2パターンがあります。

1のうち、殺人に絡むもの、詐欺、横領、贈収賄、有価証券偽造、公文書偽造などは刑事事件となります。その場合、書き手の特定のほかに状況を特定するための証拠として、科捜研の最新のハイテク装置による解析が適宜必要になります。それにより劣化した文字の復元や、書き足した文字の浮き出し、紙やインクの成分分析、数値化された筆圧の強弱などが明らかになります。それ以外の私的紛争の範疇に属するもの、書き手特定が目的の民事事件は、私たち民間の鑑定人で対応できます。

『自分のイヤなところは直る!』
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