[官能小説レビュー]

兄妹の禁断の関係――無人島を舞台に繰り広げられる『瓶詰地獄』の官能ポイント

bindumezigoku
『瓶詰の地獄』(角川文庫)

 読書好きな女性の間で、昔から安定した人気を誇るジャンルが「耽美小説」である。その代表的な作家といえば、今回ご紹介する夢野久作だろう。独特な世界観となまめかしさが漂う夢野作品は、読者に深読みをさせ、1つの物語を何度も読み返させることで、“自分なりの解釈を掘り下げる”という楽しみを与える。読者としては、読むたびにぽつりぽつりと疑問が芽生えるところも、夢野作品の面白さの1つと言えるだろう。

 夢野作品の中でも、『瓶詰地獄』(角川文庫)は特有の色気を放つ、彼の耽美小説の代表作である。非常に短いこの物語は、“三本のビール瓶の中に詰められた三通の手紙の内容”で構成されている。

 主人公は、南方の島に漂流してしまった幼い兄と、その妹だ。2人は力を合わせて、島で10年近くも生き延びながら、兄は助けを求めるために、数少ない所持品であるノートと鉛筆を使って手紙を書き、ビール瓶の中に詰めて海へ流していた。

 最初に発見された手紙は、“兄の遺書”である。助けの船がやって来たものの、それを見届けながら、2人で自害することを選ぶ……という内容だ。その理由が、最初に発見された手紙より以前に書かれたと思われる、2番目の手紙に記されている。妹のことを女として意識してしまったことにより、兄が罪悪感を抱く様子がわかるのだ。無人島だが、食べ物は豊富で暖かい気候であったため、兄妹はあまり不自由なく育った。漂流から10年ほどたつと、ボロボロになってしまった衣服は棄て去り、裸で暮らすようになる。成長した兄は、妹に“女”を感じ、そしていつしか、妹も同じように兄のことを“男”として意識し始める。兄はそんな自分の罪に耐え切れず、持っていた聖書を焼き払ってしまうのだった。そして最後に発見された手紙は、おそらく漂流してすぐに書かれたものなのだろう。早く助けに来てほしいと、両親に求めている。

 兄は手紙の中で、自分たちの死について、“犯した罪の報償”のために自分たちの肉体と霊魂を罰する、としている。例えば、若者の遊びの延長で性的な関係を持ったとすれば、2人きりの秘密にして無人島を出て、平凡な暮らしに戻ればいい。しかし聖書を焼き捨て、死を選んだ2人は、その禁じられた愛の罪に耐え切れなかったということだ。それほどまでに禁忌と対峙した2人の真剣さや切実さに身がちぎれそうになる。

 この物語には、一切の性描写、また2人が性的な行為をしたという事実さえもはっきりとは記されていない。だからこそ、読者は懸命に文字を追い、想像を働かせて物語を楽しむ。こうして、わずかなヒントから自分の解釈を一歩一歩深めていくことによって、兄妹の禁断の関係性に辿りつくと、まるで官能の深淵を覗くような快感が生まれるのだ。ストレートな官能描写も、もちろん面白い。だが、たまにはこんな深読みを楽しんでみるのもおススメである。
(いしいのりえ)

本当に夢野久作ってこ洒落てるわ

しぃちゃん



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