[官能小説レビュー]

妻、愛人、部下とのセックスを謳歌する経営者――自称「満ち足りた男」を暴く爽快感

yorunomomo
『夜の桃』(新潮社)

 女性である筆者は、男性が書く官能小説よりも女性が書いたものの方に共感を抱くことが多い。やはり同性であるからこそ同調できる部分があるのだろうが、もっと言うと、著者が男性である場合、登場人物の女性が男性にとって好都合な存在に映ることが多いのだ。

 そんな中、久しぶりに女性登場人物の全員に共感を持てる、男性作家の官能小説と出会えた。石田衣良の『夜の桃』(新潮社)である。

 主人公の雅人は、“全てを手に入れた男”だ。事業で成功をして会社は順風満帆、神宮前の自宅でフラワーアレンジメントの教室を営む妻・比沙子との間に子どもはいないが、結婚して12年たった今でも恋人同士のようなメールのやりとりをし、激しいセックスをしている。

 一方、4年間交際している愛人・麻衣佳との仲も順調だ。彼女は美しく、また雅人が家庭を持っていることに対して文句ひとつ言わない女性である。むしろ、自分という存在がありながら、比佐子をも抱いている雅人に対して「夫婦仲が良くて嬉しい」とまで言う、最高のセックスパートナーだ。

 全てが満ち足りている雅人の前に、若い女が現れる。彼の会社にウェブデザイナーとして入社してきた千映だ。どことなくミステリアスな雰囲気が印象深く、雅人は彼女が気になるようになる。ひょんなことから千映の稀有な生い立ちを知り、さらに興味を持った雅人は、彼女と関係を持ってしまう。しかも、彼女は処女であった。

 妻の比佐子、愛人の麻衣佳、そして千映――3人の女と関係を持つようになる雅人だが、次第に体の相性の良さから、千映の魅力にはまっていく。そして千映もまた、雅人の手ほどきによって快楽を得て、セックスに溺れてゆくのだが――。

 地位も名声も女も手に入れた男の自慢話で終わるかと思いきや、そうはいかないところがこの作品の面白さである。オセロの面がパタパタと白から黒に変わるように、終盤に近づくにつれて、雅人の元にいた3人の女たちは、全員彼から離れていってしまうのだ。

 そして、女たち全員が、同性から見て実に清々しい去り方をするところが爽快である。雅人にとって自分は特別な存在ではないと感じた麻衣佳は別れる決意をし、貞淑な妻を演じていた比沙子は、ボーイフレンドの存在を告白して離婚を切り出す。そして千映は、最も男にとって苦痛を強いる別れ方を選んだ。この結末は、ぜひ女性たちに手にとって読んでいただきたいほどアッパレなものだった。

 雅人のように、男が“満ち足りている”と感じている場合、大抵、女性に少なからず負担を強いているものなのかもしれない。にもかかわらず、呑気にそれを良しとしているだけの男性作家による官能小説は多く、筆者はイラ立ちを覚えていたのだ。そんな男の“満ち足りている”の裏側を暴いてくれたからこそ、この作品に強く共感するのだろう。
(いしいのりえ)

「夫婦仲が良くて嬉しい」って嫌味でしかないよ?

しぃちゃん

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