映画レビュー[親子でもなく姉妹でもなく]

老女の夢を二人三脚でかなえる年下の女――年齢を越えた関係を描く『マルタのやさしい刺繍』

――母と娘、姉と妹の関係は、物語で繰返し描かれてきました。それと同じように、他人同士の年上女と年下女の間にも、さまざまな出来事、ドラマがあります。教師・生徒、先輩・後輩、上司・部下という関係が前提としてあったとしても、そこには同性同士ゆえの共感もあれば、反発も生まれてくる。むしろそれは、血縁家族の間に生じる葛藤より、多様で複雑なものかもしれません。そんな「親子でもなく姉妹でもない」やや年齢の離れた女性同士の関係性に生まれる愛や嫉妬や尊敬や友情を、12本の映画を通して見つめていきます。(文・絵/大野左紀子)

■『マルタのやさしい刺繍』(ベティナ・オベルリ監督、2006) マルタ×リージ

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 私事だが、50歳を過ぎてから着物にはまった。私のように、義母など親族が亡くなって、まだまだ着られる上等な着物が何枚も残されたのをきっかけに、着物ライフを始める人は世間に多いようだ。

 一から誂えればかなりお金のかかる着物だが、今は中古市場でも探すとお手頃で状態のいいものが手に入る。洋服と違い、形が決まっていて、いくつになってもそれなりに似合う着物は、着付けさえ覚えれば、おでかけが楽しくなる。何より魅力的なのは、美しい手仕事の世界に触れられることだ。手織りの絹の風合い、染め抜かれた模様の多彩さ、アンティークの着物や帯の手の込んだ刺繍など、見ているだけでうっとりする。その1つをやっと自分のものにし、身にまとう時は至福の時間。

 長い歴史の中で美意識と技術が磨かれ伝承されたもの、手間暇かけて丁寧に作られたものは、美しい。そして贅沢だ。ああ私は贅沢で美しいものが好きなのだ! と、あらためて思う。昔は、自分にはそういうのは分不相応だと思ったり、そんなオンナオンナしたことを言うのは気恥ずかしいような気がしていた。しかし着物に出会い、思い切って着始めてから堂々とそう言えるようになった。

 普段、仕事や家庭に追われている同世代の友人知人と、揃って和装で集まる時、つくづく実感する。皆、同じことを思っているのだなぁと。女は美しくて贅沢なものが大好き。それと触れ合っているのが喜び。たぶん死ぬまで、そのことは変わらないのではないか。

美しい下着を自分のために身に着けるのよ

しぃちゃん

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