テニミュ、刀剣乱舞、セーラームーン、おそ松さん、パタリロ……

「2.5次元ミュージカル」人気の裏で…… 権利元による儲けの囲い込み

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Photo by Jeffrey Smith from Flckr

 アニメなど日本の文化を世界に発信するクールジャパン・プロジェクト。人気アニメをミュージカル化する「2.5次元ミュージカル」は、その中でも基幹となるコンテンツだ。

 2.5次元ミュージカル協会の代表理事であり、多くの作品を制作するネルケプランニングの代表取締役でもある松田誠氏によれば、その魅力は「原作の世界観を忠実に再現していること」だという。一度舞台を見ればわかるが、原作のストーリーを2時間余りの舞台に集約する脚本家の努力、2次元を3次元で表現する演出家たちの創意工夫、キャラクターになり切る演者たちの熱意が生み出すシナジー効果は、原作ファンならずとも魅了される。

 2.5次元ミュージカルの創始者ともいうべき松田氏は、「ブロードウェイのミュージカルは、毎日、世界のどこかで上演されています。つまり権利の保有者には、日々ロイヤリティが入ってきます。2.5次元ミュージカルの原作である漫画やアニメは、今や世界中の若者の心を掴んでいます。ということは、ブロードウェイの原作に匹敵するビジネスの可能性があるんです」(ORIGINAL CONFIDENCE 2014年9月29日号掲載記事より)とも語っている。別の側面から見ても、すでに“ヒットしている”アニメや漫画を原作にした舞台は、一定の動員も見込めるため、勝つ可能性が高いビジネスだ。

 舞台を作り上げるクリエーターたち、俳優たちにとっても、名前を売る絶好の機会である。そこだけ見れば作品に関わった人たちはWin-Winの関係のようにも見えるが、現実はそれほど甘くはない。

「テニミュ(ミュージカル『テニスの王子様』)出身の俳優の中には斎藤工や城田優みたいに役者として成功する子たちもいます。でも、そんな子はほんのひと握りで、大半の子たちは舞台が終われば次第に人気は落ちていき、忘れ去られます。だからみんな作品にかける意気込みは半端ないですよ。それがきっかけで役者として売れるかもしれないから、ギャラが安くても必死に頑張るんです」(舞台専門誌ライター)

 舞台役者たちの収入は、よっぽどの売れっ子でもない限り一回の公演で1万円程度。それに公演数をかけた金額が支払われる。端役だともっと安く、稽古期間中はギャラが発生しないため、芸能事務所や劇団に所属していない役者はアルバイトをしながら稽古に通うケースが多く、それは2.5次元も例外ではないようだ。

 また、衣装やセットを一から作り、広告を打てば、ひとつの作品を作るのにかなりの金がかかる。公演の収益だけで俳優へのギャラを含めた諸費用は清算できるのだろうか?

 2.5次元のチケットは平均すると6,000円ほど。S席で8,000円ほどだ。渋谷の2.5次元ミュージカル専門劇場「アイア2.5シアタートーキョー」を例に考えると、834席が全て埋まれば1回の公演でおおよそ500万円のチケット収入がある。仮に全公演満席だったとしても、そこから俳優や運営スタッフへのギャラ、準備費用、著作権料などもろもろの諸経費を引いたら、制作会社が得る純利益は大した額ではないという。それでは、2.5次元で一番儲けているのは誰なのか?

「権利元ですよ。公演ごとに著作権料が発生するのは当然ですが、それだけではなくて公演直前に発売するオフィシャルブックや、公演後に発売するDVDなど2次的な収入も発生します。2.5次元を世間に周知させたテニミュは03年からスタートしましたが、09年の時点でDVDの累計販売枚数が50万枚(アニメビジネス専門サイト「アニメ!アニメ!」09年発表)。現時点での販売枚数は公表されていませんが、とっくに100万枚は超えているはずです。テニミュを制作したのはマーベラスさん(株式会社マーベラス)ですが、DVDの売り上げからも、かなりの額が著作権料として権利元に支払われているはずです。役者たちに? もちろんDVDが売れても役者にバックなんてないですよ」
(同)

 作品のヒットで金銭的なうまみがないのは役者たちだけではない。ヒットと共に、各メディアでも2.5次元ミュージカルの記事が取りあげられるようになったが、紙媒体は取材を厳しく限定されることが多い。

「某忍者漫画が原作の舞台で、主演陣全員の取材を申し込んだら、はっきり言われましたよ『〇〇社(原作の権利元)が出す媒体以外での全員取材はNGです』って。それでも主演の何人かは取材させてくれたからいい方で、テニミュの方はもっとひどい。主人公がいる学校の生徒役の役者を2人以上取材するのもNGなんです。『それはオフィシャルブックでやるから』って。舞台衣装での取材を申し込んだ媒体もあるようですが、衣装だと著作権料がかかるそうです。ラケットを持たせたり、役を連想させるポーズもNG。でも、権利元が出す媒体ではやっている。掲載するページ数も制限されるから、紙媒体の売り上げも権利元が独占しようとしているんでしょうね」(舞台専門誌編集者)

 公演の著作権料についても、チケットの売れ行きに関わらず、入場料と会場の定員数や公演回数から算定される料金が発生する。権利元が儲かるという松田氏の言葉通りではあるが、それに関わる人々にもう少しメリットがないと、2.5次元の未来は明るいとは思えないのだが……。

金はあるところに集まる

しぃちゃん

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