AV出演=人生崩壊?「紗倉まなの知るAV業界」と「さまざまな偏見」への葛藤

 先月『最低。』(KADOKAWA)という名の小説を出版させていただきました。もしかしたらご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、AV女優として生きる女性四人を題材に書かせていただいたんです。タイトルの“最低。”や、帯に書かれた“そこに落ちたらもう戻れない”というキャッチコピーを見て、普段仕事を全肯定するような呟きを発信している私は、ちょっとした批判や攻撃もやはり受けてしまうわけで……。

 AVしかり書籍しかり、ジャンルは違えど、どんな作品においても賛否両論いただけてこそですが、やはり人って潜在的に褒められる快感を他人に求めてしまっている部分もあるのだなと感じたりもします。「否」のコメントを見ると、反論を含めた自分の意見を少し強気に言いたくなってしまうことがあるのです。

 この際、ネットでよく言われる“意識高い系AV女優”“かたいことばっかり言われると抜けなくなる”“肉便器(もしくは娼婦)は黙ってろ”だとか(結構とんでもないこと言われてんな……)そういう皮肉めいた意見は少し置いとかせていただきまして。もちろん「それはそう思うよね」と納得できるものに関してはきちんと飲み込ませていただいているのですが、【AV女優につきまとう偏見】について、少し真面目に語ってみたいと思います。

◎普通の会社で、普通の人が、真面目に働いています

 AV業界には、身ぐるみをはがされ売り飛ばされるといったネガティブなイメージが、いつまでも“しこり”として残り続けているのだなと感じることがあります。先日「AV出演を強要される女性が相次いでいる」と人権団体・ヒューマンライツ・ナウが調査報告書を公表した、というニュースが流れていましたよね。私が言うのもなんですけど、正直、もうそれって相当昔の話なのだと思っていました……。そういうあくどい事務所も隠れているようですが、“私に見えているAV業界”では、騙されたり陥れられたりなど、お仕事によって「人生が終わる」なんてことはないのです。

 以下は“私に見えているAV業界”に限った話ですが、事務所と女優さんの相性が悪かったりすることもあるでしょう。双方の志のベクトルが全然違う向きだったり、そんな相違のせいで関係がこじれてしまったり、事務所のあまりよくない待遇に不満を感じて移籍する女優さんの話も聞きます。でもそれって、仕事、友達、恋愛、何においても対人関係がある限り、一生悩むことだと思うんです。私の知っているAVプロダクションは、普通の会社として運営していたり、女優さんをきちんとケアしています。AV業界のすべてが悪徳なわけではないし、多くの方が真面目に働いているんです。

◎「母に認めてもらっている」の意味

 よく「お母様は仕事を認めてくれたのでしょうか?」「両親ともさすがにショックを受けていらっしゃるでしょ?」なんて質問や、辛辣な疑問を投げかけられることがあります。やっぱり、気になりますよね。「家庭環境が悪かったのかな」とか「お金がないのかな」とか……。AV女優になる動機に関してもネガティブに捉えられることが多く、中には「そういう辛い状況でAVデビューしたって考えると、興奮する」というオナネタ材料として不幸な女優を求める男性もいるようです。私の場合、母親に“認めてもらって”はいます。

 ……こういうことを言うと、もう、大変。「そんな母親頭おかしいでしょ」「狂ってる」なんて、AVに勝手に出たのは私なのに、なぜか母親に批判が殺到することもありました。ただのとばっちり。母に申し訳ないし、辛い思いをさせてしまったのは重々承知しつつ、あまりにも炎上が激しい時は、「別に人を殺したわけでもないのに大げさだな」と呆れてしまうこともあります。盛り上がっている批判部隊を眺めているうちに、「きっと関わったことのない未知の世界は『触れてはいけない闇』のように扱われ、過小評価されやすいのだ」と次第にわかってくるようにもなりました。

 ひとつだけ声を大にして言いたいのは、「母に認めてもらっている」とはいえ、進んで「よし、AVで立派に稼いで来い!」なんて運びではなかった、ということです。

 本当は普通に就職して、普通に結婚して、普通に子供を産んでほしいなどの自分が掴んだような幸せを願ったり、もしくは優良企業に勤めて玉の輿に乗ってほしいなどのちょっとした欲を上乗せした希望を、親は子供に抱いているはずなんです。私の母も例外ではありません。小さい時から手塩にかけて育て、エリート街道へ進むことも夢見ていたのに、まさか娘がアダルトの世界に足を踏み入れるとは微塵も想像していなかったでしょう。それでも、最終的に「元気に楽しく生きていてくれるならいい。職業に貴賤なし」と、深い愛情でしぶしぶ了解してくれました。眠れない辛い夜もきっとあったでしょうが、“親なりの苦しい応援の形=認める”、ということになったのです。

 ここをいつも省略して話してしまうから、本来の意味で受け止められずに「納得できない」と批判されるのかもしれませんね。

 私はそんな親の心の葛藤を覗き見たわけでもないし、女優さんの中には家族に勘当された方もいらっしゃいます。親だけでなく、恋人や友達をも傷つけてしまっているかもしれない。それはとても罪深いことでもありますが、自己表現の手段として、絵を描こうが文章を書こうが身体を酷使しようが、そこに本質的な価値の差異はないのではないでしょうか。少なくとも、私は自己承認欲求に駆られながら、作品に残ることや見てもらえることが楽しくて仕事を続けています。

◎「セクシー女優」と「AV女優」

 以前、私はTwitterで論争したことがあります。「まなつんは間違いなく頭いいね。それだけに安易にAV女優という道を選んで、人生を崩壊させたことが残念でなりません」というリプ(メッセージ)をいただいたからです。私がそれに対して「『人生を崩壊』とまで断言してしまう、“あなただけの視野で見ている世界”が残念でなりません」と返したんですよね。けっこう考えて返事をしたんですけど、凍てつくような言葉の槍があらゆる角度から降りかかってきたので、それ以降は胸の中で消化するようにしています……。

 「AV業界にとって、偏見こそが職業としての価値を生む」という、なんとも奥深い意見もありますが、この「AV出演=人生崩壊」というイメージを払拭できたら、どれだけめんどくさい意見を回避することができるか。

 ネットやテレビでの「セクシー女優」という表記も、なんともむず痒いのです。小さな子供への影響とか、「AV女優」と表記することでクレームはたっぷりあるかと思いますが、そもそもクレームをひとつも生み出さない事柄なんてあるのでしょうか? いつしか子供だって大人になるわけで、性に目覚めるわけです。心理衛生的に良くないと言われても、目の前にスマホがあれば子供だっていじってしまうし、これだけネットが普及した現代では、もう何も隠すことなんて出来ないんじゃないかとすら思います。どんなメディアでも潔く「AV女優」と表記され、呼ばれる時代が来てほしい。でも、意外に近いんじゃないかな、と思ったりもします。あと一歩、というところにある壁が大きいだけで。

 厚い鉄製の壁を壊す作業を、今はアイスピックくらいの小さい工具でほじくっているだけですが、ちょこちょこといじるのが私の楽しみであり、仕事の遣り甲斐でもあります。「もしかしたら、何かの拍子にツンとつついたら壊れるかもしれない」という希望を抱けるのも、ある意味で“グレーな領域の仕事”だからこその醍醐味なのかもしれません。

 誰にでも「自分って最低だな」と思う瞬間があると思います。それは私も同じで、ポジティブに活動し続ける自分の土台には、傷つきながらも応援してくれた母親の支えや、誰かの不幸がいくつも重なっているのかもしれません。私の悩みの根源は常に地中深く潜りこんで、目の前に現れることは今もまだありませんが、この孤独が続く限り、ずっと現役をまっとうし、AV女優を続けていきたい。そう思っております。

 最後にまた宣伝になってしまいますが、『最低。』(KADOKAWA)も、こうした女優さんの葛藤を私なりの解釈で書き綴ったつもりです。もし気が向いたら、お手に取ってみてくださいね。それでは皆さん、あぢゅー!!!

■紗倉まな/高等専門学校の土木科出身。18歳の誕生日の翌日に事務所に応募し、所属が決定。2011年にイメージビデオデビュー、翌年2月にAVデビューするや否や人気沸騰! SOD大賞2012では最優秀女優賞、優秀女優賞、最優秀セル作品賞、最優秀ノンパッケージ作品賞などなどを総なめで6冠を達成する。『ゴッドタン』キス我慢選手権でも「かわいすぎる」と話題☆

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