最高のセックス以外はセックスじゃない?『an・an』夏恒例特集に食傷気味

 『an・an』夏のセックス特集についてmessyで書くのも、これが3度目となります。

 今年も8月に入ってからは「そういえばそろそろかな、今年は誰が表紙なのかな」とちらりと考えてもいました。しかしどうしたことでしょう、まったくワクワクしないんです。

 目次を見ても、「心も体も満たされた、最高のSEX」「わたしたちが感じる、あの瞬間」「気になる“ひとりHの世界をのぞき見”」……えっと、昨年も一昨年も同じことやっていませんでしたっけ。タイトルだけでなく中身も、「昨年のコピペですか?」と既視感ありまくり。セックスに関する読者アンケートの数値や、読者による「私の最高体験」のこまかいシチュエーションこそ違えども、ここまで代わり映えしない内容で押し切るって逆に見事だなと感心するほどです。

 今年は「愛と絆が深まる、最高のSEX」と副題に謳っていますが、「最高のSEX」「私史上最高のSEX」という言い回しはどの年においても頻出します。漫画家・湊よりこさんもインタビュー記事で、「つまらないSEXなら、しない方がマシ。するなら最高のものでないと」と発言されていました。同インタビューでは「エクスタシーを得るのにもっとも大切なのは、お互い正直に、自分を解放すること」とあり、お説しごくごもっともなのですが、「満たされていると、仕事にも私生活にもいい影響をおよぼす」「正直、レスになったら髭生えちゃいますよ」とまでなると、セックスを過大評価し、かつセックスに期待するものが大きすぎるという印象を受けます。セックスはめくるめくもの。我を忘れるもの。なんなら人生まで変わっちゃうもの……それってかえって、しんどくないですか?

 最高のセックスを目指すこと自体は、たいへんステキです。私も、どうせするなら満足度の高いセックスがいいです。でも、当連載でもたびたび書いているように、セックスやオナニーってそんな特別で最高でめくるめくものである以前に、「生活」に根ざしたものだとも思うのです。

◎最高じゃなければセックスじゃない?

 たとえば、「今夜はイマイチ気乗りしない……でも彼が求めてくるし、たしかにちょっとご無沙汰だから、応じておくか」というテンションでするセックスはたいへん現実的で、キラキラしていません。でも、それはそれでふたりのセックスを維持するために必要な行為です。「あまりに疲れていたから挿入中に寝てしまった。しかもすっぴんで髪もぐしゃぐしゃで寝顔超ブス」っていう夜もあるでしょう。美しくも何ともありませんが、長くつき合ったカップル、夫婦のセックスってそんなものではありませんか?

 「100点はすばらしい」と「100点じゃなきゃダメ」とは明らかに違います。毎年「最高のSEX」を強迫観念的に連呼する同誌の特集においては、どうしても後者のニュアンスを強く感じてしまうのです。

 そんな100点セックスを目指すための特集が満載なわけですが、2015年いちばんのツッコミどころは「究極の男性愛撫法 恥じらう淑女の愛撫の心得」でした。「愛する人と芯から萌えるようなセックスがしたいなら、まずはカレの性感を高め、あなたと“早く繋がりたい”と思われるような振る舞いから身につけるべき」とは、実に『an・an』的。すなわち、自分が愉しむより彼に奉仕しろ! ってことですね。

 そこで紹介されるのは、とにかく男性を癒やし、ケアし、翻弄するテク。ときに笑わせ、ときに〈乳首で男性の頬や手の甲を愛撫〉というビックリ技をくり出しながら、男性の性感を引き出すのが女性の務めだそうです。女性だって受け身じゃなくてもいいし、相手の快感を高めるため積極的に働きかける姿勢はすばらしいけれど、ここまでくると〈サービス〉っぽさしかありません。こんなに徹底的にお膳立てしてもらって初めて勃つ男性って、なんだかなぁ。

 そうしてやっと勃起したペニスの愛撫法を指南するパートが、2015年のハイライト! ペニスを〈チャペル〉に見立てるそうですが……なぜチンコ=教会!? 一部女性のあいだで熱狂的に支持されている〈子宮教〉では、〈子宮の「宮」は神社の「お宮」を表し、膣は参道の役割〉と考えられているそうですが、それに近い考えなのでしょうか? 私にはさっぱりわかりません。そして「各部位のキュートな呼び名に注目♡」として紹介されていたものの一部を、下記に抜き出しました。

 尿道口=亀頭の一つ目小僧
 亀頭=チャペルの屋根
 カリ=愛の果実(ドーム型チャペル)
 裏筋=愛の吊り橋、樹木ヴァージンロード
 睾丸=愛の細道へつづく……

 チャペル的な世界観で統一されるかと思いきや、「亀頭の一つ目小僧」といきなり妖怪が出てくることにまず驚きましたが、すべてどうツッコんでいいのかわからないほどのオモシロ物件です。

◎2015年は男性目線も取り入れました!

 セックスに飛び道具的テクニックはありません。特殊な技術は必要なく、基本を押さえつつ、その人に合った愛撫をするのがいちばん、という意味ですが、雑誌の特集などでは、とにかく「いままでないテクニックや知識」が求められます。私もたびたび「バイブの新しい使い方ってないんですか?」と訊かれますが、バイブの新商品はあっても、新しい使い方なんてそうそうあるわけがない。チャペルもヴァージンロードも斬新ではありますが、ただ奇を衒ってみただけという感が否めません。

 そして今年は、男性側に切り込む「男のSEX解体新書」が8ページにわたって展開されていました。AV男優のしみけんさんや、みうらじゅんさんがエロスの教祖として降臨し、男性の体や性感、性反応について教えてくれます。そのなかの「こんな男はこんなセックスをする」という企画を最初は楽しく読んでいたのですが、だんだん気持ちが萎えてしまいました。

・お腹がぽっこり出ている人は、淡白なセックスをする
・筋肉がググッと盛り上がったふくらはぎの持ち主は性欲強し
・肩を揺らして歩く男は、上手に腰を振れません

……のような小ネタが計50も紹介されていて、真偽のほどは別として根拠も記されているのですが、ルックスや行動の特徴で、セックスの巧拙や性癖を判断するのって、あまり上品な行為だと私は思えないのです。男性が、「こういう外見の女は、こういうセックスをする」「こういうクセのある女は、◯◯癖があるはず」「こういう女は、すぐヤラセる」というような会話をしているのって、すごく不快。ルッキズム的側面も強いし。されたらイヤなことをし返すことが、「愛と絆が深まる、最高のSEX」につながるのでしょうか?

 続いて、みうらじゅんさんの「エロフェッショナルな女の流儀2015」。エロフェッショナルとは、〈男が気持ちいいセックスとはなんたるかを理解している女〉を指すそうで、そこからして、あーはいはい、です。具体的な内容も、「男って馬鹿でスケベで幼稚なんです、すみません」を前提として女性からのサービスを求めるものばかり。でも、なんか面白いんですよ。「なるほど」と思っちゃうところも多いんですよ。さすがです。そして、「ドNになれ!」という提言には深くうなずきました。

 SやMや変態を気取りたい人はいるけど、たいていの人は凡人。つまり、N=ノーマルです。それを自覚して、「平凡な自分がどうしたらセックスを楽しめるかということを考えたほうがいい」というアドバイスは、特別で最高で、ときに逸脱しちゃって、常にめくるめく世界が花開く性体験しか認めない『an・an』的セックス観ではなく、フツウで平凡で人間くさくて、まったくオシャレじゃないけど「なんかいいよね」という、「生活」としてのセックスに通じるのではないか、と読めたのです。ということで、『an・an』さん、来年はドNなセックス特集でいきませんか?

■桃子/オトナのオモチャ約200種を所有し、それらを試しては、使用感をブログにつづるとともに、グッズを使ったラブコミュニケーションの楽しさを発信中。著書『今夜、コレを試します(OL桃子のオモチャ日記)』ブックマン社。

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