[女性誌速攻レビュー]「美ST」7月号

ブロッコリーを食べる、富士山の絵を肌身離さず持つ、現実感薄い「美ST」の妊活

2013/06/17 18:00

■富士山で妊娠できたら苦労しない!

 「実録・『40代で産む』の努力! 感動! 現実。」という企画です。41歳で第1子を出産した参議院議員の丸川珠代、40歳で第1子、42歳で第2子を出産した女優の田中美奈子を含め、40代で出産、または妊娠中の女性7人が登場し、妊活の経験談を語っています。“妊活”の定義はあいまいで、不妊治療のほかにも、

・ブロッコリーを一日一株食べる
・オーガニックフードを食べる
・コーヒーとアルコールを止める
・パイナップルを食べる
・妊婦さんが描いた富士山の絵を肌身離さず持っている

 といった“あるある大事典”系や迷信までさまざま。心構えも人によってまちまちです。

・生命力を旺盛にして、諦めなければ絶対大丈夫!
・年だからと諦めないで!
・あまりにものめり込みすぎると良くないと気持ちを立て直し、なるべく普通の生活を送るように心がけたのが良かったのかも。

 さらに、40代で出産するメリットとして、「エイジング中だから、産後の衰えにがっかりし過ぎずに済む」「出産が最高のデトックスになる」、デメリットは「病院や親戚、周りの心ない言葉に傷つく」「母親学級で浮く」などが挙げられていました。どことなく本気度というか逼迫感が薄い。申し訳程度にちょっぴりと、加齢に伴う妊娠率の低下や卵子の老化についても触れていますが、そのデータをあっさり覆すように「40代が私の出産適齢期だったのかも」なんてキャッチコピーが誌面を踊っています。「40代が私の出産適齢期」って、それは産めた人だから言えることであって、現実はそんなカジュアルな話じゃないと思うんですがね。一体この企画は何を目指しているのかなあと疑問に思いました。

 40代、まだ産めるのか。深刻な問題だと思います。「どうなっても、それはあなたが選んだ道だし、あなたの生き方だ」と他人は言うでしょう。でも、本当にそうなのかな、とたまに思うんです。自分の生き方、自分で選んできました? 自分の生き方に責任取れてますか? 筆者はなんとも言えません。自分で選んだところは後悔だらけ、選んでないところも後悔だらけ。「シミがいっぱいあっても、笑顔があればいい」くらいは言えるけど、「どんな生き方でも、笑顔があればいい」なんてことは絶対に言えない。

 人それぞれ、自分らしい生き方をせねばならない。その“自由”という名の強迫観念にずっと苦しめられているような気がします。40歳になっても自分が何をしたいのかさっぱりわからない。価値観が定まらない。自分らしさなんてない。だから、「40代が私の出産適齢期」なんてフワフワしたことを言ってないで、もっともがいて苦しんで悩んだことを語ってほしかった。今が幸せなら、そこに行き着くまでのストーリーを。それは、出産のことに限りません。もう上辺だけを装うだけじゃいろんなことがうまくいかない年齢。「美ST」には、40代をもっと赤裸々にしてほしいし、それができる媒体だと思っています。
(亀井百合子)

最終更新:2013/06/17 18:00
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