[女性誌速攻レビュー]「プレジデントFamily」3月号

算数が苦手な子を救済する魔法!? 「プレジデントFamily」が公文式を大絶賛

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「プレジデントFamily」2013年3月号
(プレジデント社)

 「プレジデントFamily」(プレジデント社)の今月号の特集は「算数がグンと伸びる!」、全編が算数克服と称した“公文アゲ”です。公文式創始者・公文公氏と息子・毅氏との物語「ある父親が与えた奇跡の教材」、小学生がつまずきやすい問題に公文式が答える「小学生の『3つの壁』徹底攻略」、さらに公文式教室に通う(通っていた)デキるお子さんたちの成長ヒストリー「算数でつまずいたら、どうしたらいい?」など、特集の大半が公文式の解説に費やされています。算数で悩んでいる親子に「逆に何でやらないわけ!?」という強制力まで感じてしまう内容です。

 「基本的な問題を繰り返す」「その子の理解度に合わせる」など、公文式の理念はとても素晴らしいものですが、「算数」という主要教科に対して、一教育企業のやり方を「ファイナルアンサー」として提示することへの違和感は否めません。今、なぜ公文なのか……早速中身を見て参りましょう。

<トピックス>
◎算数がグンと伸びる!
◎目指せ花園!超進学校「6度目の決勝戦」
◎一挙紹介!売れ筋の理数系ビジュアル図鑑

■プレファミ“理想の子ども”像ここにあり

 「やっててよかった公文式」の前にまず見ておきたいのは、巻頭の連載「未来の泰斗」。「泰斗」とは、ある世界・分野で権威となる者の意、です。要するに何かに秀でた若者が毎回登場する企画ですが、やはり「プレジデントFamily」、タイトルセンスがキてます。今回は「目指せ花園!超進学校6度目の決勝戦」と、埼玉県立浦和高校ラグビー部を取り上げています。

 浦和高校といえば、2012年の東大合格者数で全国の公立高校ナンバーワンに輝いた屈指の進学校です。県下の秀才がゾロゾロ揃うこの学校で、なんとラグビー部が全国大会県予選決勝まで進んだとのこと。学力優秀でさらにスポーツも強いなんて、まるで草野仁です。想像上の生き物だと思っていたスーパーヒトシ君がここ埼玉の地に生息していたとは。

 残念ながら浦和高校は決勝戦で涙を呑んだようですが、それでも過去4年ベスト4以上の成績で、うち3回は決勝戦まで駒を進めたとのこと。ただここで重要となるのは、花園に行ったか否かではありません。体格やパワーで他校と見劣りする部員に「基本に忠実に」を求め続けた監督。「相手の動きを読んだクレバーな組織的ディフェンスによって、ピンチの芽を摘む」「泥臭い捨て身の攻撃網からリズムをつくり、フォワードが数少ないチャンスをトライに結び付ける」などなど、「ほら、これは受験にも同じことが言えるでしょう?」と親御さんが説教を垂れる格好の素材ではないですか。

 「生徒によく聞くんです。相手チームの選手に、練習で疲れたから全然勉強しないタイプと、練習後に眠くてもひと踏ん張りして勉強するタイプがいるとき、どちらが戦いにくいか、と。(中略)一日一日を完全燃焼する行動が人間の器を大きくし、社会的なリーダーになろうとするときのベースになります」という監督の言葉にもあるように、ここで説かれているのはあくまでも精神的鍛錬としてのスポーツ。ラグビーのパブリックイメージとも相まって、親御さんたちはそこに「理想の息子」を思い描くのでしょう。プレファミ読者たちはただひたすら勉強して東大に行くのではなく、自分の好きなこと(スポーツ、趣味など)も楽しみつつの東大合格を望んでいる……それはこの連載だけでなく雑誌全体から匂ってきます。それは東大を目指すことが親のエゴだと思われないためのエクスキューズでもあり、まかり間違って「ラグビーのプロになりたい!」なんて子どもが言おうものなら、大騒ぎになることでありましょう。勝手なものですね。

■親にとっては渡りに船、な公文式

 東大という見果てぬ夢を追いかけてはいるものの、受験のためならなりふり構わずの、いわゆる“教育ママ”には「ダサい」と白い眼を向けるのが「プレジデントFamily」。先ほどのような文武両道信仰も、「賢い子どもは何をやってもうまくいく」の論理あってこそです。部活をがんばっていてもできる子はできる。「部活なんかやめて勉強しなさいと言うのは(実際には言っているかもしれませんが)浅い親のやること」という空気があるような気がします。

 ということで、冒頭にも書きました公文アゲの内容を振り返ってみましょう。当時小学2年生だった息子が算数のテストで「38+15」を間違えたのを見て、高校の数学教師だった公文氏自ら問題を作り始めたというのが公文式の起こり。毎日30分、息子の理解度に応じて問題を作っていたら、3年生の終わりには三元連立方程式まで、5年生までに因数分解、分数式、無理式、6年生では微積分からさらに数列へと驚異的な習熟を見せたということです。それを「算数が苦手な子を救済する魔法のような方法が発見された瞬間」とまで言い切るプレファミ。

 公文氏最初の著書『公文式算数の秘密』(くもん出版)が発刊されたのは1974年(現在絶版)なのに、今あらためて「世の親を驚かせた『公文式算数の秘密』の中身」「大ベストセラー『公文式算数の秘密』に感動」などと煽り立てるのは、「やっぱり洗濯板が一番!」と鼻の穴をふくらませるような、妙なズレを感じてしまいます。

 筆者もご多分に漏れず公文キッズだったわけですが、今このありさまです。もちろん筆者のような悪い事例だけを取り上げて「公文式意味なし」としたいのではなく、設立から50年以上がたち公文式の効果も一周した感のある今だからこそ、もっと良し悪しが見えるのではないか、ということです。公文先生の優秀な息子さんや、公文キッズの成長ヒストリーに登場する「実際の学年の5年先の教材をやっている子ども」たちを見て、「うちの子も!!」と思う親が果たしてどれだけいるのか。周囲にごまんといる元公文キッズたちによるリアルな意見(たまりゆくプリントの恐怖、自学自習の孤独などなど)と、その果てに出来上がった現在のご様子に、もはや公文式に夢は見られないというのが正直なところです。

 受験目的の進学塾ではないというハードルの低さからか、比較的罪悪感なく始めさせる親も多い公文式。「なるべく早い時期から始める」を提唱しておりますゆえ、何かせずにはいられない親御さんたちにとっては渡りに船なのかもしれません。「自分から進んで勉強して、計算が得意になって、気づいたら東大に入っていました」というストーリーの入り口として。それだけ「算数」にコンプレックスを抱いている親が多いと言えるのかもしれません。

 理数系に強くなってほしいという親はかなり多いようで、今号には「入学祝い、バースデイプレゼントに最適 一挙紹介!売れ筋の理数系ビジュアル図鑑」なんていう企画も見られました。もちろんリコメンダーは両者とも東大卒博士! これがですね、本屋さんで撮影しているのにもかかわらず、お2人とも白衣を着てるんです。見れば編集後記に「今月号の図鑑記事では、博士に白衣姿でご登場いただきました。白衣が着たくて、理系を目指す子も多いとか。お子さまへの贈り物に(白衣は)いかがでしょう」という一文が。プレファミのこういうミーハーなところ、キライじゃないです。ただプレゼントで白衣をもらったら……ちょっと考えちゃいますよね。
(西澤千央)

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しぃちゃん

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