[女性誌速攻レビュー]「VERY」10月号

子どもの遠足“いも掘り”をなぜか“ミラノ”と結びつける「VERY」の力技

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「VERY」2012年10月号(光文社)

 先月は、読者モデルの滝沢眞規子さんが表紙に起用され、これから「VERY」はどう変わるのか? という視点でお送りしましたが、単にイレギュラーな事態だったようで、何事もなかったように、今月号では井川遥さんが舞い戻り、通常営業に戻っていました……。一安心というか、若干の肩透かし感も! 今月はファッションの秋ということで、広告ページが普段よりも多くてかなり厚めの「VERY」。華やかな、景気の良さを感じます。そんな中に垣間見える、「子どもができても絶対主役の座を降りたくない!」というような、今の日本の既婚女性の本音を探ってみましょう。

<トピック>
◎主婦的、細見え服
◎秋の運動会&遠足は肩肘張らないオシャレで参戦!
◎関西ママの公立志向・座談会

■買うのは通販、が意味するもの

 今号の大特集は「主婦的、細見え服」という、女のシンプルな欲求からくるテーマです。やっぱり、自分をよく見せてくれる洋服選びのバイブルであることが、本来の「VERY」読者が雑誌を買う動機ですもんね。

 この中で読者の細見えに関する緊急座談会が行われているのですが、参加者5人の年齢は、31歳から39歳までで、主婦1人、専業主婦3人、フルタイムで勤務しながら子育てをしている人1人という構成になっています。景気が悪くなり、働くことより、専業主婦になる方が難しくなってしまった現代、既婚女性は「専業主婦」への憧れを強めているのでしょうか。「VERY」誌面にも、専業主婦がより多く登場しているようです。

 座談会では、「どんなシルエットのパンツを選ぶか」「そのシルエットによって靴はどうあわせるか」「いいパンツが売っているお店はどこか」など、ごくごく普通にファッションを語っているのですが、後半になってある方が「J BRANDというブランドのパンツが好きで、試着して、海外のサイトで買います 」と切り出すと、ほかの方も「私もそれする」「細見えパンツは試着して出会うしかないもんね」と続きます。なぜ、こんな面倒くさい手順で洋服を購入するのかといえば、実店舗よりも、通販で購入する方が、安いからなんですよね。

 にしても、「VERY」に登場するきらびやかな主婦の方たちでも、店舗で試着だけして、通販で同じものを賢く買うんですね。そんな姿は堅実にも見えますが、店内での立ち回りより「安さ」を選んでいる「VERY」読者に、体裁より安さ重視のオバちゃんっぽさを感じてしまいます。きらびやかな「VERY」読者でさえも値札を気にするこの時流は、そのまま専業主婦への憧れに繋がりそうです。でも、本屋が立ち読み用になり、実際に買うのはamazonとなって店舗が減少するという事例もありますし、「VERY」読者うんぬんではなく、ブランドショップのあり方が変わっただけなのかなと、たった一言からいろいろ考えてしまいました。

■一大イベント「いも掘り」対策

 今月はVERY本来の、「優越感を感じて生活を楽しんでいる私たち」という持ち味が全面に出ている楽しい企画がありました。「秋の運動会&遠足は肩肘張らないオシャレで参戦!」では、運動会、遠足、いも掘りなどのシチュエーションでのファッションを提案。それぞれ、面白すぎる見出しが躍っています。運動会を「リベラル運動会」と「コンサバ運動会」に分け、「リベラル運動会」では紅茶のCMが話題のミランダ・カーを、「コンサバ運動会」ではブラピの嫁という説明も必要のないアンジェリーナ・ジョリーをお手本にファッションを指南。 もともと学校行事に興味のない層にとっては、そこまで運動会って一大イベントなのか! と驚きを隠しきれないのでは。

 内容を詳しく見ていくと、いかにユニクロが使えるブランドであるかを紹介したり、運動会に持ってくためのグッドデザインなグッズを紹介してたりしているのですが、思わず注目してしまったのは、秋の遠足の定番「いも掘り」ページでの、「いも掘りファッションはミラノマードレを目指せ!」というコピーです。「ミラノマードレ」って一体なんのことか、ほとんど説明がなかったので、調べてみると、「ミラノのお母さん」という意味だとか。「いも掘りファッションにミラノのお母さんを持ってくるって!」と突っ込んだ方も多かったのでは。昔のように情報が少なかった時代に、フランスのリセエンヌ(フランスの公立学校の女生徒)に思いを馳せる「オリーブ」(マガジンハウス)少女がいたのは納得いきますが、インターネットでなんでも情報が得られる時代に、ミラノのお母さんに思いを馳せちゃう「VERY」にしてやられた気がしました。

 しかし、昔の「オリーブ」少女が、ただ盲目的に「リセエンヌ」に憧れを抱いていたのとは違い、「いも掘りミラノマードレ」というコピーには、「遊び」とも「本気」ともつかないところがあり、発売後、ネット上で読者からのツッコミもあったとのこと。この言葉は、ガチなだけでなく、編集部からの「ツッコミ待ち」のコピーだったかもしれませんね。

 それにしても、運動会も遠足もいも掘りも、全て子どもの行事。なのにグッズで目立とうとしたり、イタリアを持ち出してファッションを工夫したりと、子どもを産んでも、自分はまったく主役の座を下りていない「VERY」のお母さんたちの姿が垣間見えました。

■「VERY」に脱私立の流れが

 今月は広告いっぱいで華やかなページも多かったのですが、地味に「関西ママの公立志向・座談会」なるページもありました。「VERY」には「受験バカ一代」という私立お受験企画が長らく続いていて、表向きは「環境がいいからいい学校に通わせたい」でもその実態は、「人より良い暮らしをしていると誇示したい」という気持ちが見え隠れしていたわけですが、小島慶子さんが「名門幼稚園の卒業生であることを勲章のように生きていく人たち」の滑稽さを連載ページで書いたりと警笛を鳴らし出してから、「VERY」のお受験思考も「脱私立」へと向かい始めたようです。

 ママたちが公立を目指す理由は「小中高大って私立で育って社会に出たとき、考えに偏りが出そう」「私学で放課後も塾や宿題に追われて、親の過度な期待を背負った子はフラストレーションが溜まりやすい」「なまじ頭がいい分、陰湿になりそうな気がする」など。また、「某私立小の間で繰り広げられている親の見栄の張り合いも、私が公立を選んだ理由」と、親同士の人間関係も公立選びの大きな要因となっているようです。

 そして、最後にはもっとあからさまな本音が見え隠れしていました。「公立では親より友達の影響が大きくなるから」学力の低下が心配だけど、例え公立に進学しても「最終学歴さえよければいいと私は思う」「最終学歴で帳尻合わせできれば、経過はいいと思う」とのこと。

 ぬるい環境で勉強のできる子を目指すのではなくて、雑多な環境で人間力を身につけながら強い子になってほしいとは言いつつ、でもやっぱり、結局は今私立に入るよりも、最終的に勝てる人材に自分の子どもを育てたいだけなんじゃ……。「VERY」の「人より優れていたい」願望は、相変わらずのようです。

 秋の始まりにふさわしい華やかなファッションページに、「VERY」のリアルな個人の生活をひしひしと感じた、今月号の「VERY」でした。
(芦沢芳子)

ミランダ母VSアンジー母の綱引とか超見たい

しぃちゃん

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