[官能小説レビュー]

愛する者を守るときのむき出しの本能? 『姉の愉悦』のインモラルな世界

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『姉の愉悦』(うかみ綾乃、幻冬舎)

■今回の官能小説
『姉の愉悦』うかみ綾乃

 女が愛する者を守ろうとする時、場合によっては不条理なほど残酷な行動をとることがある。それは、女であれば誰しも持ち合わせている本能がそうさせるのかもしれない。愛する者が外敵からの攻撃を受けないよう、徹底的に守る。魚や鳥と同じように、人間も、巣を守るためならばどんな手段選ばないのかもしれない。

 『姉の愉悦』の舞台は、三重県の志摩。美しく豊かな海に恵まれたこの地に、主人公の姉弟・凪と漣は産まれた。幼い頃に両親を失くした彼らは、家族同様に付き合っていた弁護士一家からの援助を受けながら育った。凪が13歳、漣が9歳、天涯孤独となった2人。彼らは互いの首に、少しでも離れれば死に至るほどの短い糸をくくりつけ、抱き合うような形で眠っていた。姉は弟を守り、弟は姉の存在がすべてだった――。

 それから15年。漣は、彼の後見人である弁護士の息子・義人とともに上京し、司法試験を受ける準備をしていた。義人は、登山先で足を滑らせ骨折してしまった漣と共に、故郷の志摩で過ごすことにした。幼い頃から憧れていた漣の姉・凪と再会できることに胸を高鳴らせて。

 化粧気はなく、流行の服を着ることはない。けれど誰よりも美しく、魅力的な凪が誰よりも大事にしているのは、たった1人の肉親である弟の漣だった。両親の生前から漣の世話をしていた凪。彼を想う気持ちは28歳になった今でも変わることはなかった。2人は天涯孤独となった時からの儀式のように、全裸のままで赤い糸を首に掛けて眠る。弟の安穏な寝息を耳にしながら、姉は充足した自慰にふけるのだった。

 弟を守るためならば凪は手段を選ばない。後見人である義人の父・坂崎とは金銭的援助の代償に関係を持ち、漣に近づこうとする女には当然容赦はしない。ところが、漣が家庭教師をしていた教え子の由香が訪れてくる。そして、彼女に好意的な瞳を向ける漣。由香の存在を、凪が許すはずがなかった。

 リビングで寝ている漣を襲うかたちで、由香はメスを露にして一方的に漣を抱く。リビングで重なる影をテラスから眺める凪と義人。

「あの娘を、犯して」

 凪は、自分に好意を寄せている義人を使い、漣と由香の仲を裂こうと試みる。凪の計画は思わぬ方向に転がって行く。そして、凪と漣は、誰も寄せ付けない世界へ籠っていったのだった……。

 天涯孤独となった女が何よりも守ろうとしたものは、一体何だろう? それは、女同士の嫉妬とか、表層だけで語られるプライドとかではなく、もっと女として深層に根付いている、揺るぎなく偉大な“母性”ではないだろうか。

 時として男女間での想いが強くなると、人はその想いが制御ができなくなる。それはもしかすると、人の根底に根付いている本能がそうさせているのかもしれない。
(いしいのりえ)

『姉の愉悦』

ちょっとねー、この姉はいかんよねー

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