[女性誌速攻レビュー]「LEE」6月号

超保守思想を「オシャレ」スパイスで消す、「LEE」の編集手腕

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「LEE」2012年6月号(集英社)

 今月号の「LEE」の大特集は「おしゃれリーダーに学ぶワードローブ強化月間」。「LEE」のオシャレリーダーは誰を指すんだろうと思ってページをめくってみると、そこには“やっぱり”の辺見えみりと、“意外な”ともさかえりえが笑顔で微笑んでいます。ともさかは時折「LEE」に出ていますが、オシャレリーダーとして君臨しているとは思いませんでした。でも読者からの声を拾ってみると、「だんなさんやお子さんと過ごす日々の小さなことが幸せ、という感覚が素敵です」「子育てやいろいろなことに対し、常に真剣なところ。その考え方に共感します。おしゃれやお料理のレシピも参考になります」と、ライフスタイルを含めて共感、憧れの念を抱いているようです。一方、私生活は別として外見やファッションセンスでは女性に絶大な支持を得ているえみりは、「LEE」での連載「Emiri’s Favorite Items」でガラスの器を語り、お気に入りのガラス作家を紹介しています。女優及び女性タレントが行きつく先に、「アート」は多いんですよね。山口智子しかり、壇れいしかり。「常に自分の見た目だけ気にしているような、薄っぺらい人間じゃないんだから!」という主張するタイプに、えみりも仲間入りしちゃうんでしょうか。

<トピック>
◎おしゃれリーダーに学ぶワードローブ強化月間
◎未来の地球を変えるかもしれない服
◎今だから話せること、伝えたいこと 母と娘のストーリー

声なき思想に“オシャレ”を着せる「LEE」マジック

 今月号は大特集こそファッションページですが、その他の企画は「LEE」の得意とする、素敵な生活を彩る趣旨の内容がぎっしり。編集記事では「LEEハピ家電対象発表します」「使える! 豚コマ」「インテリア最前線の“壁使い”」、タイアップ系の記事でしたら「手作りキャンドルを愉しむ」「未来の地球を変えるかもしれない服」などなど。「LEE」の主な読者層は専業主婦、いつもの料理を変えたり、自分の基地である自宅をより素敵な空間にしようと家具や収納に気を配ったり、家事を助けてくれる家電にこだわったり、というのは当たり前のことだと思います。でも同時に立ち上ってくるのは、別の意味。

 例えば、今月号の「未来の地球を変えるかもしれない服」はかなり強い「思想」を感じる記事。前半ではインド産オーガニックコットンを使用した製品1枚につき、300円をインドでの綿花栽培に還元するという、基金付きのTシャツ、ワンピースなどを紹介。後半ではこのプロジェクトをプロデュースするメーカー、販売店、NPOをサポートする国際協力機構(JICA)などの担当者による座談会となっています。ちなみに、この活動に対し「LEE編集部も賛同」と書いてあり、「LEE」の名前もついているので、コラボしているようです。座談会では、インドの綿農家の現状も軽く触れているのですが、この手の話は深く語れば悲惨な現状がドロドロ噴出してくるからか、話のメインはプロジェクト達成までの苦労話と、「オシャレを楽しみつつ、大地にも恩返しできる」というプロジェクトのコンセプトでした。真面目に向き合うならいくらでも違うアプローチはあるのに、それを見せず、軽やかに着地点である製品を買うことに誘導することで、この手のプロジェクトが持つ「思想」の臭みを激減しています。

 これと並行して考えたいのが、毎号「LEE」に掲載される、手作りページ。それは自身の洋服だったり、ちょっとしたインテリアだったり。確かに既製品にはないオリジナリティを楽しみたいという趣旨に乗っかって、手作りすることで己の良妻賢母ぶりを証明したいという気持ちが見え隠れするんですよね。でもページのレイアウトや写真で、強烈な自意識がうまく中和されているんですよね。

 「LEE」の根底に漂う、強い保守思想は雑誌1冊を俯瞰してみると、こんなにも色濃く立ち上ってきます。でもそれを「オシャレ」というふりかけで封印する力を持っているのが「LEE」。声なき思想が全体を覆い、表面的にはただ「家でのステキ時間を過ごす私」を布教するというのだから、「LEE」の持つしたたかさは半端じゃないですよ。

親子関係も人間関係

 今月号はそんな「LEE」の二面性に恐怖を感じる部分もありますが、ハッとさせられる名言が溢れる企画がありました。「今だから話せること、伝えたいこと 母と娘のストーリー」に登場した、元テニスプレイヤーの杉山愛さんと、母で、2001年から9年間コーチとして愛さんを支えた芙沙子さんです。とにかく芙沙子さんのチャキチャキぶりが爽快で、子育てに関しても

「『ああしなさい、こうしなさい』って親が口うるさく言う必要はないのよ。だいたい、目先の小さいことなんてどうでもいいじゃない。私はにんじんが嫌いだけど、にんじんくらい食べられないからって、大勢に影響はない(笑)。それよりも、物事の根本をしっかり教えたかった。私は人を愛せる人間、思いやりのある人間、魅力的な人間になりたいし、娘たちにもそういう人間を目指すように育って欲しい、と」
「親じゃなくても、娘が私と一緒にお茶を飲んでおしゃべりしたいと思う人間でありたい。『子供なんだから親孝行するのが当たり前』という考え方は嫌いでね。子供が『親孝行したい』と思うに自分になっていなければ、無理に孝行を押し付けても意味がないから」

 親子というだけではなく、コーチと選手として四十六時中一緒に過ごすというのは、想像以上に大変なこと。実際に同様のケースで、親子関係まで壊れてしまう選手とコーチは多いそう。そんな日々でも、

「子供は親のものではなく、社会からの預かりもの。親子関係も人間関係なんだから、その時々で適切な距離を保つのが大事」(芙沙子さん)

 と、してテニスの話は夕食まで、夕食は母娘として食べるという約束をしていたそう。もちろん、言葉通りにすべてが上手く行くわけではなくても、愛さんが芙沙子さんのことを「『距離感』を大切にする人」と評するほど、客観的だったからともに戦えたと振り返っています。子どもを大切に思うがあまり先回りで問題を回避させたり、客観的に子どもの成長を見られなくなってしまう親が多い
中、芙沙子さんの言葉は多くのママたちに響いたのではないでしょうか。

 今月は「LEE」の声なき思想に分量を割きました。振り返ってみれば、これまでの「LEE」の読み物ページも「私たちのAfter3.11」といった震災ものや、節電を考えるものもあったのですが、これといった提案もなく、被災読者の声もそれほど深くなく、読み流すものが多かったです。事象を気にしているという姿勢は分かるのですが、中身が響いてこないというか……。でもあまりにも考えさせられるレポートが続くと、読者に敬遠されるのでしょうね。それが「LEE」が誌面思想を消そうと躍起になる要因なんでしょうから。
(小島かほり)

「LEE」

「LEE」の怖さって言語化しにくいッス。

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