映画『ヤング≒アダルト』レビュー

『ヤング≒アダルト』のメイビスは、都会と故郷どちらでも勝てない惨めな女?

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(C)2011 Paramount Pictures and Mercury Productions,
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 37歳、バツイチ独身女・メイビスの朝は二日酔いで始まる。デカいペットボトルのコーラをグラスにも注がず直飲みしては、シリーズ終了が決まった少女小説のゴーストライター仕事に取りかかるという、絵に描いたような冴えない朝。そんな彼女のもとに、学生時代の元カレから赤ん坊の写真が添付されたメールが届いたことから事件が始まる。

 ただ赤ん坊の誕生を知らせただけのメールなのに、メイビスは「元カノにこんなメールをわざわざ送ってくるなんて、彼はきっと私に未練があるんだわ! 赤ん坊の世話に追われる毎日がつらすぎて私に救いを求めてるのかも!?」と怪電波ばりのSOSサインを勝手に読み取ってしまい、元カレとよりを戻すべく、普段着のヨレヨレのキティちゃんTシャツを脱ぎ捨ててゴージャスでセクシーな胸元開きまくりのドレスに着替え、実家のある(そして元カレの住んでいる)田舎町へと降り立った!

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 ……という、もはや悪い予感しかしない始まり方をする映画『ヤング≒アダルト』だが、もちろんこの先にはヒドい展開が待っている。元カレは復縁など望んでいないし、むしろ子どもが生まれて幸せいっぱい。都会ではイケてるメイビスのファッションセンスも、田舎町では浮くばかり。仕事では成功しているフリをしてみても、実際には「作家」ではなく表紙に名前すら載らない「ゴーストライター」。唯一田舎でも誇れるのは「美貌」だが、それも37歳だとかなり微妙だ。それでもメイビスは「カレは私を好きなはず!」と信じて暴走を続けていく。その大迷惑な行動を見ていると「いくら独り身で仕事もうまくいかなくて寂しいからって、元カレのメールをきっかけに変な電波を受信するのだけはやめておこう……」と彼女を反面教師に教訓を心に刻み込みたくなるが、その一方で簡単に「イタイ女」と切り捨てられないところもある。

 メイビスは高校時代、プロムクイーンと呼ばれたモテ女だった。田舎町からミネアポリスという小都市へ自力で出て行き、ライターといういわゆる「クリエイティブな」職業に就いた。華やかでモテモテな人生をこれからも謳歌するつもりだったに違いない。なのに、実際に待っていたのは陽の当たらないゴーストライターの仕事と、37歳になっても男と継続的な良い関係が築けないため、寝る相手はいてもバツイチで彼氏もいない孤独な生活……。気づけば、あんなにバカにしていた田舎の同級生たちのほうが堅実に生きて幸せそうな暮らしをしている。「こんなはずじゃなかった!」という心の叫びが聞こえてくるようだ。だが、メイビスはそこで自分の負けを決して認めようとしない。自分をみじめな女だとは全然思っていないし、元カレを奪えば何かに勝てると思い込んでいる。ちなみにメイビスが元カレを本気で愛していると感じられるエピソードはまったくと言っていいほど、ない。田舎の同級生に負けられないとか、自分が振った元カレが、自分なしで完璧に幸せそうな顔をしていることが許せないとかいう「プライド」しか見えてこない。

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 これだけなら「プライドが高くて見栄っぱりで、自分の自尊心のために他人を踏みつけにしてもいいと思ってるイヤな女」だろう。だが、メイビスが今までの人生で努力し、ささやかに勝利して得てきたはずの「37歳でもイケてる女としての自分」「素敵なレストランでも堂々と振る舞えるファッションセンス」「普通とは違うクリエイティブな肩書き」は、地道で安定した生活が良いとされる保守的な田舎町では「37歳になっても浮ついた格好をして、夫も子どももおらず得体の知れない仕事をしている可哀想な人」というマイナスイメージでしか見られないのだ。メイビスが得た「ささやかな成功」は、田舎町では空虚な表面のことでしかない。メイビスの両親でさえそういう目で娘を見ている。自分の財産が、認めてもらえるどころかマイナスに見られる。これほどキツいことがあるだろうか。

 迷惑きわまりなく、滑稽で見苦しいメイビスの行動すべてに共感はできなくとも、田舎を捨てて都会に出てきた女の意地として、そこで戦いを挑みたくなる気持ちだけは、わかる。戦い方も、戦う相手も、なにもかも間違っていたとしても、都会の独身女の意地見せたる! と無謀な戦いに挑むメイビスの姿を笑う気持ちには、どうしてもなれないのだ。
(雨宮まみ)

『ヤング≒アダルト』

自称”作家”のゴーストライター、メイビス・ゲイリー(シャーリーズ・セロン)は三十代後半のバツイチ独身。執筆中のヤングアダルト(少女向け小説)シリーズは人気が落ちて終了間近、新作の仕事もない。そんなメイビスが、妻子のいる元カレとヨリを戻すため美貌とセンスを武器にして自信満々に帰郷するが大騒動を巻き起こす。

出演/シャーリーズ・セロン、パトリック・ウィルソン、パットン・オズワルト、エリザベス・リーサー ほか
監督/ジェイソン・ライトマン

公式サイト
2012年2月25日(土)TOHOシネマズシャンテほか全国ロードショー



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