[映画公開記念インタビュー]

女優・久保田紗友は「とにかく真面目で視野が広い」——映画『Love Will Tear Us Apart』宇賀那健一監督が語った“魅力”

2023/08/23 15:00
サイゾーウーマン編集部
映画『Love Will Tear Us Apart』の宇賀那健一監督(C)サイゾーウーマン

 映画『サラバ静寂』(2018年)や『転がるビー玉』(20年)などで知られる宇賀那健一監督の最新作『Love Will Tear Us Apart』が絶賛公開中だ。

 同作は、とある出来事をきっかけに、主人公・真下わかばと関わった人物が次々と殺されていくサスペンスホラー&ラブロマンス映画。数々のドラマや映画に出演している今注目の新進女優・久保田紗友が主演を務め、青木柚、莉子、ゆうたろう、前田敦子(特別出演)、高橋ひとみ、田中俊介、麿赤兒、吹越満らがキャストに名を連ねている。

 今回、「サイゾーウーマン」では宇賀那監督にインタビュー。「狂おしいほどの、愛。」というキャッチコピーがつけられた映画の見どころはもちろん、製作のきっかけや撮影の裏側についてお話を伺った。

オーディションで選んだ、久保田紗友と青木柚の“魅力”

――まずは、製作過程のお話からお聞きしたいのですが、撮影はいつ頃行われたのでしょうか?

宇賀那健一監督 2021年の8月に撮影しました。コロナ禍での撮影だったので制限されることが多く、しかも真夏ということもありハードな現場ではありましたが、なんとか形にできました。

――今作は、渡辺紘文さんとの共同脚本ですよね。「狂愛」がテーマになっていると思うのですが、ラブストーリーとホラー要素を掛け合わせようと思ったきっかけは?

宇賀那監督 ずっとジャンルというものに縛られていることに違和感があったんです。そんな中、ここ数年、主に海外などでジャンルを越境する作品がすごく増えているなと感じていて、挑戦するなら今じゃないかなって思ったんです。

 あと、「喜劇王」と呼ばれたチャールズ・チャップリンの言葉で、「人生はクローズアップで見れば悲劇だが、ロングショットで見れば喜劇だ」というものがあるんです。渦中の人物はすごく必死で、いろんな感情が渦巻いているけど、冷静になって俯瞰してみると、笑い話になったりすることってあるじゃないですか。近年、世界では新型コロナウイルスの流行や戦争など、いろんなことが起きている中、そういった不条理を笑い飛ばせるような作品にしたいなと思いました。

――渡辺さんとはどのように製作を進めていったのでしょう。

宇賀那監督 共同脚本の場合、いつもは初稿まで僕が担当することが多いんですが、今回はロングプロットまでを僕が書いて渡辺さんに初稿を起こしてもらい、あとはお互い確認し合いながら、「こういうアイディアがほしい」などと細かいやりとりをしながら本の精度を上げていきました。

――メインキャストはオーディションで選ばれたそうですね。

宇賀那監督 キャスティングの上で大きなポイントとなったのは、いかに“真面目にやりきるか”という点です。コメディ要素があるところで、演者が良かれと思って「笑わせよう」とすることってよくあるんです。でも、観客側の見る目って実は肥えていて、そのあざとさがすぐにバレて冷めてしまうこともよくあると思っていて。そうはしたくないので、とにかく「真面目」ということにはこだわりました。

 特に、主人公のわかばは、彼女の気持ちに入り込んで、最後まで演じきることができるかというところを重視しました。オーディションでは、みなさんにシリアスなシーンとコミカルなシーンを演じてもらったんですが、久保田さんは感情を高ぶらせた演技がとにかく素晴らしく、惹きつけられました。そしてその後、コメディシーンを演じる前に、「ちょっとだけ待ってもらっていいですか」と、気持ちが切り替わるまでの時間を確保したいと言ってくれたんです。その役や芝居に対する真面目さが、わかばの真面目さに通じるところがありました。

 また、男性キャストに関しては、一番最後にオーディションに参加したのが、青木さんだったんです。セリフを言いながらも、セリフと感情が必ずしも一致してないところがすごく人間臭くて魅力的だなと感じ、惹きつけられました。

――お二人と事前に役柄について話すことはありましたか?

宇賀那監督 僕は基本的に、撮影前に本読みをすることはありません。相手の出方を想定して役を演じると、だんだん自分自身の芝居に飽きて、本番で「何か違うことをやらなきゃ」と勝手に思い込むことがあるんですよ。こちらからしたら、それがベストの芝居なのに、考えすぎたり、どう演じるべきか迷ってしまう人がいるので、それをできるだけ避けたい、鮮度を保ちたいという意味で、今回も本読みは行いませんでした。でも、役について話し合う時間は設けて、「このとき誰がどういう感情でこういう行動をしたか」という質問に答えたり、参考作品に関するお話をしましたね。

 ただ、セリフの言い回しなど、「このほうがいい」と現場で変更したことはあったものの、大きく変えた部分はほぼありません。僕は脚本を変えることに対してネガティブではないんですが、今回、“当て書き”的に変えていった部分はなかったように思います。

ぜひ劇場へ!
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