カルチャー
【サイジョの本棚・打ち合わせ編】

ドラマ『アンという名の少女』副読本にオススメ! 斎藤美奈子『挑発する少女小説』氷室冴子『いっぱしの女』

2021/08/14 14:00
サイゾーウーマン編集部(@cyzowoman

ライター・保田 子どもの頃読んでいた本といえば、私はコバルト文庫を中心に活躍されていた、氷室冴子さんが好きなんです。ちょうど7月に、氷室さんのエッセイ『いっぱしの女』(筑摩書房)が復刊したんですよ!

編集・A子 氷室さんといえば、漫画化された『なんて素敵にジャパネスク』(山内直実、白泉社)やジブリ作品『海がきこえる』の原作者でもありますね。氷室さんが男性記者から「ああいう小説は処女でなきゃ書けないんでしょ」と非常識な取材を受けたエピソードが、ネットでも話題になっていました。

ライター・保田 その話を筆頭に、「いったい世間では三十女にどういうイメージを持っているんだろう」と疑問を持った著者が、日常で感じたことや、当時、社会から女性に向けられていた視線への違和感を自由につづっています。

編集・A子 初版は90年代初めなんですね。日本では、やっと「セクシャルハラスメント」という言葉が使われ始めた時期ですかね。

ライター・保田 本作に通底する女性への信頼や愛情は、今でもストレートに届くと思います。特に、ファンレターに交じって時折届く、性的暴行を想起させる嫌がらせの手紙に「この写真が送られるのは、私でなくてもよかったのだという予感、(略)この写真によって衝撃をうける誰か、つまり女であれば」と、女性としての怒りと無力感を率直につづるエッセイ「それは決して『ミザリー』ではない」。これは、同様の被害を受けているであろう無数の女性、そしてその傷に鈍感でいられる男性に思いをはせていて、現代にも通じる社会構造のうみを明確に描いたものだと感じました。

編集・A子 数年前、駅などで女性だけを選んで体当たりをする「ぶつかり男」の存在が話題になりましたが、女性というだけで受ける嫌がらせや不利益は、現代でもまだ可視化されにくい。SNSが普及したことで、当時より一部の男性の悪意が顕在しやすい時代とはいえますが……。

ライター・保田 そういう意味では、現代のほうが、実感と連帯を持って彼女のメッセージを受け取る読者が多いかも。復刊の意義を感じるエッセイ集でした。

編集・A子  90年代に、30歳を超えて独身で働いた女性の記録としても価値がありそう。普段は意識しないですが、こういった強い向かい風を受け止めた世代の後ろを私たちは歩いているんですね。

ライター・保田 そうなんです。すべての女性に向けられた愛情深い文章を、いろんな人に発見してほしいです。
(保田夏子)

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