コラム
仁科友里「女のための有名人深読み週報」

おぎやはぎ・小木博明、『バイキング』山口達也へのコメントが不愉快だったワケ……転換期迎えるワイドショーの在り方

2020/09/24 21:00
仁科友里(ライター)

 有名人の起こした事件というのは、ワイドショーでは扱いやすいネタだろうし、コメンテーターも乗っかりやすい案件だろう。なにせ犯罪者なわけだから、悪く言ってもいいという意識が働くからだ。しかし、その発言には引っ掛かりを覚えることも少なくない。

 山口の芸能界復帰が限りなくゼロになったかだろうか、9月23日放送の『バイキング』(同)で、おぎやはぎ・小木博明の山口に対する物言いは厳しかった。山口は警察の取り調べに対し、「(バイクで)友達の家に行くところだった」と説明しているが、大きなリュックを背負っていたことから、小木は「デリバリーのバイトでもしていたんじゃないか。突然仕事が入って、お客さんのことを思って、飲酒運転をやっちゃったんじゃないか」とコメントしていた。これは冗談だろうが、私にはまったく面白くなかったし、転落したアイドルを小バカにするような言い方は不愉快だった。

 多くの人にとって、リラックスの手段とされるアルコールが、ある人にとっては、人生を破壊しかねないものに変化してしまう。アルコール依存症に限らず、たいていの病気には「発症しやすい条件」があると知られているが、その条件を満たす全ての人が罹患するとは限らないだけに、人が病気になるのは「たまたま」という部分もあるのだろう。

 小木と言えば今年8月に、ステージ1の腎細胞ガンであることを公表したが、この病気が見つかったのは「たまたま」だったそうだ。持病の片頭痛の治療のために入院し、エコーや精密検査をしたところ、がんが見つかったという。病気になることだけでなく、病気が見つかるのも「たまたま」な面はあるだろう。そんな「たまたま」に助けられた小木だからこそ、病気の人を茶化すようなことを言ってほしくなかった。

 が、小木にとっては、それがお仕事なのも事実である。毒にも薬にもならない真面目なことを言ったら、「ギャラ泥棒」と呼ばれるだろう。小木は、忠実に自分の仕事をしているにほかならないのだ。

 でも、ワイドショーは今、転換期に来ているのではないかと思う。昭和、平成中期のワイドショーと言えば、芸能人の熱愛を追いかけ、披露宴を中継し、新婚旅行にもついて行った。しかし、今は、芸能人本人がSNSで交際や結婚報告をし、披露宴をしないカップルも増えるなど、ワイドショーの出番は減っている。

 その代わりと言っては何だが、新型コロナウイルスや、地震や台風といった災害など、生活の安全を脅かすことが次から次に勃発し、視聴者の関心が移ってきている。依存症もどちらかというと、このカテゴリの問題であり、実際の依存症当事者、また家族の依存症に悩んでいるものの、誰にも相談できずにいる人は多いのではないだろうか。

 だとすると、ワイドショーもお笑い芸人でお茶を濁していないで、上記のような問題に「こういう時はこうしてください」などと、はっきり言える専門家を、今よりも積極的に招いていく方針にしべきではないか。ワイドショーというと、司会者の人選やタレントの発言ばかり注目が集まるが、シロウトの意見なんて聞いても意味がないと思う人もいるはずだ。今の視聴者が真に求めているのは「正しい情報を伝えてくれる、しっかりした番組」のように思えてならない。

仁科友里(ライター)

1974年生まれ、フリーライター。2006年、自身のOL体験を元にしたエッセイ『もさ子の女たるもの』(宙出版)でデビュー。現在は、芸能人にまつわるコラムを週刊誌などで執筆中。気になるタレントは小島慶子。著書に『間違いだらけの婚活にサヨナラ!』(主婦と生活社)、『確実にモテる 世界一シンプルなホメる技術』(アスペクト)。

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Twitter:@_nishinayuri

最終更新:2020/09/24 21:00
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