カルチャー
『実録 泣くまでボコられてはじめて恋に落ちました。』インタビュー・前編

「ペニバンを着けたら、自分になれた」――女という性を壊したかった「私」の衝動とは?

2018/04/09 16:00

(C)ペス山ポピー/新潮社

 いじめの経験を「苦痛」と語りながらも、どこか余裕のある表情で回顧するペス山氏。しかし、そうしたいじめよりもペス山氏が「傷ついた」と作中に描く、こんなエピソードがある。小4のとき、男子と口喧嘩をしていると、クラスメイトの女子が現れ、こう言い放ったのだ。「やめなよ! ポピーちゃんだって女の子なんだよ!?」自分は“女の子”なのか? そうなのか……? 釈然としない感情が、涙となって溢れた。

――「女の子」に、そこまで強い違和感を覚えていたんですね。そんなふうに善意で「女の子」扱いされることについて、悔しかったんでしょうか。

ペス山 そうですね。このときの言葉は強く印象に残っています。かばってもらったのにつらくて泣いている。でも周りは、かばわれて嬉しくて泣いていると思うから、なおつらい。「違う! 私は嬉しいんじゃないんだ! 悔しいんだ!」と。

――だけど、当時は言葉にできなかった。

ペス山 それでも「わたし、“女子”に属するの、キツイなあ」って、当時からなんとなく、意識としてはわかっていたんですよね。たとえばテレビCMの女性は、“女性の完成形”が映し出されているじゃないですか。「わたしもこうなるの!?」と思うと、「イヤだ! なりたくない!」と拒絶の気持ちが生まれる。むしろ、サラリーマンになりたいと思っていました。自分の中での自然な将来の姿が、男性なんです。人生がものすごくうまくいったらロックスターになりたかったですが、さすがにそれは難しいかもしれない。せめてサラリーマンにはなれたらいいな、という感じで。“女性”になるという想像はできませんでした。

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