カルチャー
シルバーウッド代表・下河原忠道氏インタビュー

「認知症は不便があっても不幸ではない」VRによる疑似体験で変わるもの

2017/05/19 15:00
シルバーウッド代表・下河原忠道氏

 最近、認知症と見られる高齢者が線路内や踏切内に立ち入り、電車にはねられて死亡する事故が相次いでいる。超高齢化社会に突入した日本は、国内の認知症高齢者が2012年時点で約462万人にのぼり、25年には1.5倍以上の700万人を超えると予想されている(厚生労働省発表)。もはや認知症は、誰にとっても他人事ではない時代になっているのだ。

 認知症になると、方向感覚が低下したり、家族など身近な人を認識できなくなったりするため、日常生活に支障が出てくることもある。現状では完治は難しく、「認知症になったら人生終わり」と思っている人も少なくないだろう。しかし、そうした認識を覆す啓蒙活動を先行している企業や団体も増えている。そのひとつが、高齢者向け住宅を運営するシルバーウッド。同社が手掛ける「VR認知症プロジェクト」では、VR(バーチャルリアリティー)の技術を活用して、認知症の症状や当事者の気持ちを疑似体験することができる。同社がこのプロジェクトを始めた経緯や目的、認知症のある人たちにとって暮らしやすい社会について、代表の下河原忠道氏に話を聞いた。

■従来の高齢者向け住宅に対するイメージを払拭したい

「認知症は重度でない限り、1人で電車も乗れますし、会話もできます。症状の出方はグラデーションで、人それぞれなんです。ただ、時として誰かに教えてもらわないと、自分がいまどこにいるのかわからなくなるケースもあります。じゃあ家に閉じこもっていればいいのか、というと、そんな押しつけはするべきではないし、認知症になったって自分らしく暮らす権利はあります。周囲に迷惑をかけたっていいんです」(下河原氏、以下同)

 こう語る下河原氏は、建築業から介護業に参入。インテリアや内装をはじめ、住み心地の良さを考えたサービス付き高齢者向け住宅「銀木犀(ぎんもくせい)」を建築・運営する中で、認知症のある人たちに対する社会的心理環境に、さまざまな違和感を抱いたとなったという。

「よくある高齢者施設って、無機質な“ビニールクロスの館”みたいで、こんなところは住みたくないな……という印象しかなかった。認知症は、確かに病気には変わりありませんが、徘徊と呼ばれる行動ひとつとってみても、『当事者の方にとっては散歩なんじゃないのかな……?』 と思いましたし、運営者側の都合で入居者を“きれいな牢屋”に閉じ込めてしまうのは、ちょっと違うんじゃないかという気がします」

 高齢者や認知症の人が、一辺倒な暮らししか選べない現状に疑問を持った下河原氏。そこで、「銀木犀」では全館ヒノキの無垢フローリングを使用、家具や食器も厳選するなど、こだわったという。また、地域にオープンでありたいと、住居内に入居者が店長を務める駄菓子屋を作ったり、住民をおもてなしする趣旨のお祭りを開催したりと、斬新な試みをしている。

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