カルチャー
『重版未定』著者・川崎昌平さんインタビュー

「他人の記事をパクるのはこんな人」弱小出版社の編集者が語る、パクリ騒動が起こるワケ

2017/01/23 15:00

■本来、引用はアカデミックな世界だと名誉なこと

重版未定』(河出書房新社)

――キュレーションメディアは、きちんと著作権問題をクリアしていれば、非常に便利な読み物だと思います。紙媒体でも、もともとある情報をまとめて書籍にすることはありますが、川崎さんはその点はどう考えていますか?

川崎 本というのは情報の塊ですが、情報は単体として存在するわけではありません。ある情報に注釈を加えたり、内容を変更したり、新しい解釈を重ねたりするためのツールが本です。ですから、本来の行為としての引用や転載は、情報のあり方、本の作り方としては正当なものだと思います。「引用が1カ所もない学術論文」なんてものがあったとしたら、むしろ「ちゃんと勉強しているのか?」と疑いたくなっちゃいますし、書き手側からしても引用されるのは、アカデミックな世界では名誉なことであり、かつ研究の弾みにもなるわけです。「へえ、私の考えは、こうした読まれ方をするのか。なら次は、こういう実験をしてみようかな」という具合に。

 ただ、そこにはルールがあります。引用にも厳格な作法が定められているのが普通です。私は本を編集する上では、適切な引用ならば引用のルールに則った表記の仕方で引用し、図版・画像の使用、テキストのまとまった転載であれば、著作権者への連絡および許諾を必ず取るようにしています。転載の許諾申請が大量になると、面倒なことは確かですが、まあ、編集者の仕事ってそこだろうと、「複数の知をつなぐ仕事」が編集なのだから、そこをサボっちゃいかんだろうと思いながらやっています。

 それと、そうされることで書き手も喜ぶというのを知っているからでもあります。2012年に出た『村上隆完全読本 美術手帖全記事1992-2012』(村上隆〈著〉、美術手帖編集部〈編〉、美術出版社)という本があって、私が美術ライター時代に書いた記事が転載されたんですが、そのときに、小さな記事だったにもかかわらず、ちゃんと編集部が連絡をくれたんですね。それがうれしかったというのもあって、編集者としても、そこはちゃんとやりたいというふうに考えています。

 キュレーションメディアも連絡や許諾申請をサボらず、ちゃんとやればいいのに、と思いますね。

――今回、ユーザー側も意識が少し変わってきていると思ったのが、女性向けキュレーションメディアの「MERY」で、SNSに投稿したオシャレな画像が記事に使われたことを喜んでいるユーザーがいたと聞いたことです。パクられて喜ぶ人もいるのだと知りました。

川崎 「私の論文が引用された!うれしい!」というのとは違う気がしますね。引用した側が相当の覚悟と決意とで作ったものであるならば、その労作に貢献できる喜びはあるでしょう。でも「なんかテキトーな画像ないかな」とググって探して見つけられて転載されても……うれしいんですかね? 自己承認欲求と自己表現が、ごっちゃになっているものを今の日本のウェブではよく見かけますが、そのあたりの気風も、パクリが横行する土壌を産んでいるのかもしれません。

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