カルチャー
[サイジョの本棚]

小説・映画・アートの「名作アレルギー」を解消してくれるのは、“はみ出た”知識と捉え方

2016/03/08 19:00

■『ヘンタイ美術館』(山田五郎・こやま淳子、ダイヤモンド社)

 文学作品と同じように、鑑賞する際、ついつい身構えてしまうものの1つが美術。純粋に作品の美しさを感じることはできるが、それ以上に深く知りたくなった時、歴史的背景や作者への基礎知識が不可欠になる。『ヘンタイ美術館』は、美術評論家・山田五郎氏が、西洋美術の世界を初心者向けに解説したトークイベントを書き起こしたもの。

 「“変態”と企画に冠するのは、本物の変態にも芸術家にも失礼」と山田氏が語るように、タイトルに反して、芸術家の変人ぶりを見世物のように楽しむ意図は薄い。またく知らないスポーツをそのまま見るより、ルールや選手の特徴・背景を知った方がより楽しめるように、作品をより深く鑑賞するための堅苦しくない手がかりを提供してくれる本だ。

 「ダ・ヴィンチはオダギリジョー的な芸風」「クールベは『19世紀の絵が上手くてイケメンの蛭子さん』」「レンブラントは妻に花の女神のコスプレをさせて絵を描いていた」など、画家の知識を持たない人にもわかりやすくイメージを喚起させつつ、読者にルネサンス期から印象派までの大まかな流れを把握させてくれる。さらに、芸術家としての美学も卑近な恋愛ゴシップも幅広く把握する著者の解説によって、人間関係に悩んだり恋や性愛に溺れたりする画家の人生の陰影が、そのまま作品に、ひいては美術史に色濃く影響してきたことが自然と理解できる。

 美術、そして小説や映画でも、時代や国境を越えて惹きつけられる作品に出会えることは、幸運なことだ。「作品のどこにグッとくるかは、鑑賞者次第です。(略)グッとくるということは、鑑賞者がまた画家と同じくらい変わっているからにほかなりません」と山田氏が結ぶ通り、作品から何を受け取るかは、鑑賞者次第でもある。変に構えず背伸びせず、未知のものに触れた時、何に惹きつけられるのか――。それにより、新たな自分の一面を発見することができるかもしれない。
(保田夏子)

最終更新:2016/03/08 19:00
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