カルチャー
『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』刊行記念トークイベントレポート

「日経記者なのに元AV女優」鈴木涼美が語る“夜のオネエサン”へのレッテルと、キャラとしての私

2015/02/28 16:00
『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』(幻冬舎)

 “慶應なのにAV女優”“新聞記者なのにAV女優”――いつも“なのに”というレッテルを貼られ続けてきたものの、そうしたイメージや軽薄な期待をひらりとかわしてきた鈴木氏。前作を「正体不明の作者が書いた」ようにしたかったのも、「ちょっとしたいたずら心で、ギャップを感じられたいんですよ。AVの時は『頭いいのになんで?』とか言われたし、それから院生になった時も『夜の仕事から何で急に勉強するの?』っていう目で見られて。新聞記者をやってた頃は、もはやそういうのはキャラとして楽しんでましたね。“記者クラブに出入りする私”みたいな。院生の時は“ギャル服着て、国会図書館にこもって修論書く私”みたいな。でもどれもこれも自分」と自らギャップを演出していることを告白。それは「別に普通の家庭に育ったのに、経歴だけで何か問題があると思われてる。みんな、ストーリーとか事件にするのが好きなんですよね」と、勝手に固定化される自身の人物像を打ち砕きたいという思いからのようだ。

 するとアケミン氏も「AV女優に対して、『あんなに可愛いのになんで』『そうは見えないのに』っていう男性意見って、いまだに多いんですよ。こんなに“清純派”をキャラで売ってるAV女優が中にはいるのに、まだそんなこと言ってる」と、借金を背負ったり、非行に走る人生を送ってきたり、精神的に問題があるような女の子がなる職業だという、ありきたりなAV女優像を押し付ける世間の風潮に疑問を示した。

 鈴木氏も、AV女優への偏見はいたく感じていたようだ。「女優さんのインタビューもそうですけど、ありがちな話が好きですよね。ケータイ小説的な世界というか、家庭に不幸があるとかトラウマがあるとか決めつける。実際はそんなものあんまりなくて、たまたま手の届くところにその仕事があったって女優さんが多いですよね。妙な目的意識を持って始める子より、なんとなく始める子の方が、意外と生き残ったりします」と話すと、アケミン氏はその一因に「一元化したがるマスメディア」を挙げた。「新聞なんかの報道もそうですけど、ストーリーをつけて事件を演出したがる。わかりすい方が盛り上がるし、AVに関しては、わかりやすくないと抜けないですしね」と、私たちがいかに、画一的なイメージを作り出すメディアに翻弄されてしまっているかについて論を展開し、会場からは納得の声が漏れていた。

 多くの偏見がつくり出されるAV業界や夜の仕事に対して、鈴木氏は社会学の側面から普遍性を取り戻すことでぶつかり続けている。ギャップを感じられたいというのは、こんなにも普通な自分にアレコレと騒ぐ周りを俯瞰して楽しんでさえいるのだろう。夜の仕事をする女性たちは別に特別なわけではなく、普通に恋愛もするし、愛や幸福を求め、交際相手からの電話を待ち続けるのだ。アケミン氏はトークの終わりに「私はAVライターをしているけど、それはたまたま取材対象がAV業界やAV女優だったってだけで。業界の人は外部の人が考えるよりもよっぽど普通だし、ちゃんと理性を持ち合わせて働いていますよね」と、さらりと話したのが印象的であった。

最終更新:2015/02/28 16:00
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