サイゾーウーマンカルチャー大人のぺいじ「ノンケだけど、タチやっています」ノーマルだった彼がウリ専という世界で見たもの/インタビュー カルチャー 「ノンケだけど、タチやっています」ノーマルだった彼がウリ専という世界で見たもの/インタビュー 2017/06/17 20:00 女性が男性に対して性的なサービスを行う風俗に対して、男性が男性に対してサービスを行う「売り専」。歴史を遡ると、少年たちが男色を売っていた江戸時代の陰間茶屋にまで行き着きますが、売り専が一体どのようなものなのか、どのような世界なのか、女性である私たちは知る由もありません。 そんな時、知人のツテで実際に売り専で働くボーイさんと会うことができました。長身のガッチリ系イケメンのいちごう君(22)は、異性愛者だけど売り専に入店し、約1年勤めているそう。しかも、ノンケなのにタチ(アナルセックスにおいて挿入する側)をやっていると――。 いちごう君が売り専という業界に足を踏み入れたのか、そして気になる売り専という世界について、じっくり教えてもらいました。 ■出張ホストだと思っていたのに売り専だった ――どういうきっかけで売り専の世界に足を踏み入れることになったのですか? いちごう とりあえず勢いで田舎から東京にやって来たんですが、お金がなくて。即日でお金が欲しかったので、出張ホストに応募してみたら、実はその店が売り専だったんです。 ――え~~! いつその店が売り専だと気づいたんですか? いちごう 面接が終わってからでした。面接中もスタッフとの会話がどことなく噛み合わないなぁとは思っていたのですが(笑)。面接が終わった後に「うち男性のお客様しか来ないの、知っているよね?」って言われて。「いえ知りませんが」って返して……さすがに少し考える時間をもらいました。 ――どのくらい考えたんですか? いちごう 10分くらいですかね。まあ、お金ないし、とりあえず稼げるなら男性相手でも良いかなって思って。それでプロフィール用の写真撮影が終わったころに、いきなり「指名入ったから」って言われて。それでお客様の元に向かい、最初の一件目をこなし。 ――こなしって言ったけど! そもそも研修とかなかったんですか? いちごう 研修は一応ありました。まず、シャワー室の使い方とお客様の体の洗い方の説明ですね。自分が舐めたりするところは徹底的に洗って、うがい薬でうがいしてもらったらベッドに移動して。講習の時は「フェラさえできれば、あとは女性と一緒だ」って言われましたね。 ――女性と一緒……なんですかね? いちごう 前戯の内容自体にはたいして隔たりはないので。「童貞じゃないんだったら、フェラさえできればいい」と、フェラのやり方だけ習って……習ってというか、「されたことがあるならそのイメージでしてやってみて」とアドバイスされて実際にやってみた感じでした。それで「まあ最初はこんなもので大丈夫だよ」って。事前に新人だと伝えておけば、お客様もそういうものだと思ってくださるので。 ――初めてを求めているんだから、まだぎこちないくらいのほうが良いかもしれません。 いちごう そうですね。新人にあんまり無茶なことをさせてくる人も少ないですし。でも初日は1件目が終わって脱力しているところに、すぐに2件目が入って、行ってみたらなかなか厳しいケースに当たってしまって。言葉責めをしながらすごい力でしごいてくる方でした。そのお客様は射精していたけど、僕はできず。多分“同時イキ”したかったんだと思いますけど……。 ――初日と考えるとつらかったですね。 いちごう 今ならきっと上手く対処できるんですけど、最初は何をしたら良いのか分からないですよね。やっぱりどれが正解かわからない、どれが普通なのかもわからない状態なので、「そういうものなのかな」って思ってしまいますよね。だからその時は「ヤバイ世界だな」って思いました。 ――そもそもいちごう君はノンケですよね。初対面の男性と密着する、キスをするということに対してすんなりと入って行けたんですか? いちごう ……初日はやっぱり衝撃的でしたけど、2日目からは良識のある常連のお客様に当たって、その時の感覚として、初日受けた感覚よりも「ずっと楽だな」って言い方も変ですけど、気持ちとして楽だなっていう風に感じましたね。たぶん初日との落差のおかげで「これならできる」と思えて。2日目もきつかったら飛んでいたかもしれません。 ■売り専は性行為だけをする場所じゃない ――そもそも売り専というものをあまり知らないので教えてください。風俗嬢の男性版ってイメージではあるんですけど。 いちごう 基本的にはそうですね。でも業務内容は性行為だけを求められる風俗と違って、売り専ってボーイの使い方が自由なんですよ。ボーイの時間を買う感覚に近いですね。 ――じゃあ接客内容は性行為だけじゃないと。 いちごう たとえば話すのが上手いボーイだったら、お客様は一晩中貸し切って一緒に飲みに行ったりすることもありますし、見た目がきれいなボーイであれば、恋人みたいにデートすることもあります。あとマッサージが上手いボーイだったら、メンズマッサージをしたり。中には英語を話せるボーイもいて、外国人のお客様に連れられて通訳として使われたりっていうこともあります。風俗と違って求められる範囲は結構広くなっていますね。 ――となると、風俗より料金は高くなるんですか? いちごう それが風俗と比べると安いんですよね……。60分コースの場合は、風俗も売り専もだいたい1万5,000円前後。でも風俗の場合60分が90分になると料金が2倍近くになるんですが、売り専の場合は30分あたり4,000円前後しか増えないですね。24時間貸しきったとしても、だいたい7万円前後が相場になっています。長時間貸しきった場合、売り専は風俗と比べると大分安いですね。バック(給料)の取り分も、知り合いの風俗嬢はお客様が払う分、いわゆる売り上げの7割程度をもらっているらしいのですが、売り専はだいたい5割程度ですね。貸し切りのような長時間になるにつれて、取り分は上がっていくのですが、それでも6割くらいになります。 ――風俗には店舗を持っているヘルスやソープ、店舗を持たないデリヘルなどがありますが、売り専ってどういう業務形態になっているんですか? いちごう 個室はシャワーだけがついている部屋にベッドがあって、くらいのイメージですね。あとは売り専バーと呼ばれるもので、お客様がホストみたいにボーイを指名して飲んで、気に入ったらそのまま外に連れ出して性行為をするっていう、だいたいこの3種類ですね。 ――女性が遊べるお店もあるんですか? いちごう ありますね。でも女性が個室でボーイを指名するのはどこの店でも基本的に禁止ですね。ただ、やっぱり僕のようなノンケのボーイのところに行って、飲み指名という形で「他の店へお酒を飲みに行きます」という形で外に連れ出して、そこでボーイと女性の同意があれば買うことはできますね。飲み指名は通常の指名(60分1万5,000円前後)より数千円安いのですが、その分のバックを女性が払えば、ボーイが応じるって聞きますね。でも全面的に女性の入店を禁止している店もあるので、禁止されている店ではこの方法は無理ですね。 ――でも女性も入れる売り専バーもあるんですね。 いちごう 一度行ってみれば分かるんですけど、ゲイバーとかウリ専バーっていうのは、店によっては「女性来るな」って雰囲気を出している店もあるんですが、中にはホストクラブに行くよりもずっと安くて、ある程度見た目も良い男の子と楽しく飲むことができる店もあるんです。また、スタッフの中には僕のようにゲイじゃない子もいるので、それ目当てで通っている女性もいるにはいます。 ――女性向けとしてはそれこそいちごう君が最初働こうとした出張ホストもあるんですけどね。売り専と出張ホスト、どっちのが稼げるんですかね。 いちごう お金はどっちも見た感じ大差ないレベルでしたね。でも仕事の本数を詰めて稼ぐなら、売り専のほうが稼げるのでは。出張ホストはそんなに栄えていないですし。実は出張ホストのことを馬鹿にしている売り専は多くて、僕もその一人なんですけど。 ――どうしてですか? いちごう ルックスが悪いから(バッサリ)。出張ホストのスタッフ一覧を見て、「これで仕事になるのか?」って思いますね。むしろ払えって感じの人が多くないですか? ――たしかに。出張ホストのサイトを見ると、お金を払ってまで何かをしたいっていう男性キャストはあまりいないかも。売り専はイケメンが多いんですか? いちごう ノンケの僕から見てもかわいい子とかいますよ。やっぱりルックスで売っている子は整っていますね。お客様にもいろんな好みやタイプがありますが、人気なのはほどほどに筋肉があるボーイさんか、小さくてかわいい系のボーイさんかなと。ぽっちゃり系の需要はそこまでなくて、ぽっちゃり系のボーイさんは周りから痩せろと突かれていますね。 ――いちごう君も体型維持のためになにかしているんですか? いちごう 筋トレはある程度していますね。鍛えすぎたら、筋肉フェチのお客様のカテゴリに入っちゃいますし、逆に鍛えすぎなかったらスレンダーな体型が好きな人しか指名が来なくなってしまうので、ちょうど中間の体型を維持できるようにしています。 ――意識が高い。いちごう君はまだ22歳で若いですけど、中にはもっと年齢が上のボーイさんもいるんですか? いちごう 業界で見ると僕は普通の年齢ですね。18~19歳のボーイさんもいますし。最年長だと30代前半くらいですね。でも、ある程度経験を積んだ30代のボーイさんは、コミュニケーションの取り方が上手で、相手の趣味にピタリと合わせた性行為のプレイができる。そういう人のがチップなどをもらえているので、店自体の売り上げ自体はそんなになくても、月で受け取っている金額としては年齢が上のボーイさんのが多かったりしますね。 ――ちなみにいちごう君は今どのくらい稼いでいますか? いちごう 今はだいたい週5日出勤して、昼から翌日の朝まで待機して、指名が入ったら仕事をする感じなんですが、それでおよそ月に60万くらいもらっていますね。でも売り専は、「月40万を超えると人間を辞め始める」って言いますね。なにか大切なものが本人の気づかない内に削れていってしまっているらしいです。 ■気合で勃たせる!? ――いちごう君はノンケですよね。キスの感触って男性も女性でも変わらないですか? いちごう 変わらないですね(バッサリ)。 ――変わらないですか。でもキスは変わらなくとも、ノンケが男性とそういうことをしてモノを勃たせるって出来るものなんですか? いちごう 気合で勃たせていますね。 ――気合で勃つものなんですか!? 妄想とかするんですか? いちごう 妄想は特にしないですね。しているノンケのボーイは多いと思いますけど。でも妄想とかしていたら、お客様の動きが目に入らないじゃないですか。気配りも出来なくなるので、妄想に浸るのは良くないですよね。だから気合で勃たせています。あと、そこまで強くない刺激でも勃ちやすい力の入れ方とかあるんですよね。 ――コツがあるんですね。 いちごう イメージとしては、女性が自分の膣を締める動きってあるじゃないですか。そういった類のものだと思っていただければ。 ――ちなみに、ノンケだけどウケって子もいるんですか? いちごう というかノンケはウケのがやりやすいと言われていますね。ウケは穴さえあればできますけど、タチになるには勃たせなきゃいけないので。基本的にはウケのが楽と言われています。 ――ノンケなのにバリタチってすごいんじゃ……。ウケも出来るようにすることは考えていないんですか? いちごう 考えていないですね。 ――自分がタチで攻めていて、気持ちよさそうなお客様を見て、興味が沸いたりしないんですか? いちごう 別にならないですね。こちらは仕事で男性としているわけですから。快感を求める手段としては見ていないわけです。 ――指名のお客様を増やすためにウケもするってことも考えていない。 いちごう 僕を指名してくれているお客様の多くは、タチである僕がウケに回って掘られている姿は想像したくないと思うんですよね。女性の方も自分の彼氏がペニバンで後ろから突かれていたら嫌だと思うんじゃないですか。 ――なるほど。ひとつ聞いておきたいことがあって、売り専のボーイさん同士で恋愛ってあったりするんですか? BL(ボーイズラブ)だと売り専が題材の作品もあったりするので気になって。 いちごう 基本的にボーイ同士の恋愛は禁止ですね。過去に店のボーイに手を出したボーイさんはいますけど、やっぱりダメなものはダメで。罰金モノですよね。遊びでやるのもダメです。男としたいなら、外で拾ってくるなり、他の店の売り専を買ってって感じです。 ――同僚とは言え、店としては大事な商品ですもんね。 いちごう ゲイのボーイさんからしたら、手を出してはいけないけど、見た目の整った男性が周りにたくさんいるっていう空間は多少の大変さはあるって聞いたことがありますけどね。でも売り専でボーイをやっている子って、二丁目を歩いていれば適当な男性を引っ掛けられるので、男に困っているボーイを見る方が珍しいですけどね。 最終更新:2017/06/17 20:00 次の記事 嵐・大野智のダンステクニックはどう生かされる!? 映画『忍びの国』鑑賞券プレゼント >