[官能小説レビュー]

不倫を“された側”は、かわいそうな存在なのか? 夫の不貞を許し続ける妻の心理

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『夫と妻と女たち』(幻冬舎文庫)

 今年のワイドショーで一番のキーワードとなっているのが「不倫」である。清純派タレントとミュージシャンとの不倫劇を皮切りに、ご意見番的なタレントやイクメン政治家や大御所タレントなど、多数の不倫騒動が勃発した。

 テレビで報道されているのは、不倫を“した側”の謝罪のみ。ネットでは、不倫を“された側”は徹底的に守られ、援護される。不倫をされた妻、夫は100%被害者で、同情される存在であることが常だ。しかしもしかすると、不倫をされた側にも、人に言えない秘密を抱えているかもしれない。

 ベストセラーとなって続編も多数出版されている『夫と妻と女たち』(幻冬舎文庫)は、1人の男と、彼と関係した複数の女たちの物語で構成された1冊である。

 キーパーソンの清野潤一は、妻と娘を持つ平凡なサラリーマン。しかし彼は生まれ持った浮気性が災いして、結婚後も複数の女性と交際する。仕事が先細りとなったモデルの真由子、奔放な性格の麻理恵、一夜限りのセックスをした美鈴――手癖の悪さは、家庭内では知られていないつもりでいた潤一だが、妻である由樹にはお見通しであった。早く帰宅する夫の行動に対して、「最近はお外にカノジョがいない」と察知し、そう気付いても、粛々と夕食の支度をしてきた。

 しかし、潤一の不倫相手が変わるたびに、由樹はそれを身をもって体感していた。いたって普通のセックスを好む潤一が、ある日突然両手首を縛るという荒々しい行動に出たりするのだ。また、潤一のジャケットの内ポケットからコンドームを見つけて問い詰めた時には、妻の問いに対して隠すこともなく肯定し、女性について「出された物はいただくのが礼儀」だと言ってのけた。そんな夫に由樹は呆れて何も反論できずにいた。

 しかしそんな由樹も、潤一には打ち明けていない秘密の存在がいたのだ。毎年訪れる寒中の日、由樹は1人霊園の一角に訪れ、ある墓石に心を通わせる――その墓に眠るのはは、高校時代の同級生で、かつて由樹の恋人であった。

 由樹が潤一の不貞を許し続ける理由は、今は亡き恋人の存在があるからだろう。この世に存在しない恋人の墓前に、毎年手を合わせる由樹の姿を想像すると、彼女の想いの強さを感じる。蝶のようにふわふわと女たちを渡り歩く潤一の不貞など、比較することすらばかばかしくなるほどに軽いように思えてしまうのだ。こうした由樹の行為が、潤一に知られることになったかどうかは記されていないが、パートナーとは別の異性を心の支えにしているという点で、由樹はもしかすると、潤一の不貞には到底及ばないほどの重罪を犯しているのではないだろうか。だからこそ、由樹は潤一を許し、諦めることができたのだろう。
 
 「浮気は男のたしなみ」とはよく言われているが、女は男に浮気をされてただ泣いている“かわいそうな存在”ではない。それでもなお凛と立ち続けている“された側”の女性には、それなりの秘密と理由が存在するのかもしれない。
(いしいのりえ)

そりゃあされっぱなしでは済まないでしょ?

しぃちゃん

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