[官能小説レビュー]

アラフォーの元アイドルが“濡れ場”で再起!? 女性讃歌としての官能『甘く薫る桜色のふくらみ』

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『甘く薫る桜色のふくらみ』(幻冬舎)

■今回の官能小説
『甘く薫る桜色のふくらみ』(うかみ綾乃、幻冬舎)

 挫折や苦しみを味わった女ほど強い人間はいない。秘めたる「女としてのプライド」がそうさせるのだろうか、「負けたままでは終われない」という女性のパワーは底知れないと思うのだ。

 例えば恋愛沙汰であれば、自分の夫が不倫をしていたことが発覚した場合、不倫相手である女をとことん陥れようとする女性がいる。その怒りは男である夫以上に、女に向けられる。愛する夫を取られたという「負けた女」のままではいられないという思いが、女性の復讐心を掻き立てるのかもしれない。

 今回ご紹介する『甘く薫る桜色のふくらみ』(幻冬舎)は、アラフォー世代の3人の女たちの物語。主人公の桜は、元アイドル。夫に先立たれて料理屋でアルバイトをしているものの、おっとりした性格のせいかどうもうまくいかない。

 そんな桜の前に、同じアイドルユニットで活躍していた麻矢がやってくる。アイドルを引退した後も女優として活躍していたが、年齢を重ねるとともにその人気は右肩下がりになっていた。そこで麻矢は、桜と、現在は専業主婦であるもう1人のメンバーのこずえに、昔大ヒットした映画『伝説姉妹』の続編を撮ろうと提案したのだ。

 しかし元アイドルのアラフォー女たちが映画を作るということは、並大抵の覚悟ではいかない。彼女たちに与えられた脚本には「濡れ場」があるのだ。しかも桜の相手は俳優の大高弘毅。まだアイドルだった18歳の頃、彼のファンだった桜は、とある仕事での共演がきっかけで大高と深い仲に発展しそうになる。大好きな大高に抱かれることに期待と喜びを感じていたが、彼女が処女だということを知った大高に「簡単に処女を捨てるものじゃない」と逆に説教をされてしまう。

 約20年ぶりに大高と共演することになった桜。この20年、処女を捨て、結婚をし、そして夫と死別――波瀾万丈な人生を経て、再び大高の前に立つ桜は、一体どのような演技を見せるのだろうか。

 そして女優として下降線をたどる麻矢と、夫に浮気をされている冴えない専業主婦のこずえも、この映画にかける思いは並々ならぬものがあった。さまざまな男たちとの関係を経てきたアラフォーの3人は、1つの映画を作ることによって再び輝きを取り戻す――。

 アイドルとしてスポットライトを浴びていた異なる個性の3人の女たちが、文字通り「身を粉にして」再び輝きを掴む姿は非常に爽快である。決してセックスに対して奔放ではない、臆病者の桜だが、20年という時を経て大高と裸で向き合う姿は、18歳の頃とは違い、彼女の生きてきた足跡を感じさせるほど大胆に、そして妖艶に描かれている。そんな彼女には、同性としてあこがれを抱いてしまうほどだ。

彼女たちの輝きとは、「このままでは終われない」という意思を持ったときに、自分を振り回してきた男を踏み台にしてまでも強く生きていこうとする、その姿から発せられるのかもしれない。捨て身の女が持つプライドに勝てるものは何もない。この物語は、官能小説という枠を超えて、気弱な女たちへのエールが詰まった1冊である。
(いしいのりえ)

セックスにもその人の人生が出るってことなのかも!

しぃちゃん

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