お腹を痛めて産んだほうが勝ち? 無痛VS自然分娩トピで明らかになる出産の痛み信仰と苦労自慢

 同名の漫画が原作で、産科医療の現場を描いたドラマ『コウノドリ』(TBS系)が放送中だ。同ドラマでは、臨月で事故に遭った母親の出産、喫煙妊婦の出産など、様々なお産に向き合う家族や医療従事者らの様子が描かれ、話題を呼んでいる。これを観るたび、出産はひとつとして同じものはなく、皆大変な思いをして産んでいるのだと再確認する。今回、小町でも分娩にまつわるトピが議論を呼んでいるのでいくつか紹介したい。

◎「無痛分娩なのに…」

 トピ主(女性・年齢不詳)は自然分娩で出産し、同僚A(同)は無痛分娩で出産した。最近、結婚したばかりの後輩が出産について知りたいらしく、昼休みにトピ主とAに色々と話を聞いてくるようになった。その場でAは「いかに陣痛が痛いか、いかに出産が大変か」を語るのだが、これを聞くたびトピ主は「え…? 無痛なのに?」とモヤモヤするのだという。

「もちろん無痛分娩だって立派なお産ですし、無痛分娩でもある程度は痛いと聞きます」「でも、まるで武勇伝を語るように、『痛かったー。死ぬかと思ったー。』と、同僚の出産痛かった自慢を聞くたびに、もやもやする自分がいます。心の中で『無痛なのに、大袈裟だろ』とツッコんでしま」うのだという。

また、Aは後輩に自分が無痛分娩だったことを言わないのだという。トピ主の抱えるモヤモヤは何なのか、「私の器が小さいだけでしょうか」という相談だ。

 無痛分娩も痛みがあるという前置きをしたトピ文だったが、やはりコメントではここに食いつかれていた。“無痛”と銘打たれているが、痛いものは痛いらしい。経験者たちは語る。

「無痛分娩でしたが、かなり痛かったです」

「自然分娩の方が無痛分娩よりも痛くて苦しいのは一般的な話ですが、万人にあてはまるものではありませんよ」

「痛みの感じ方は人それぞれなので、多分その同僚さんにしたら、死ぬほど痛かったのかもしれませんよ」

などなどである。前置きしたのに怒られるのが小町であるからこれは仕方がない。

 一方、トピ主の抱えるモヤモヤについてのコメントは的確だ。

「無痛分娩を否定するつもりはない、と言いながら、自然分娩の私の方が痛かった!と上から目線ですよね」

「ここでみんなを巻き込んで、同僚を責めあげたいほどストレス溜めてるなんて、確かに器が小さいなと思います」

結局のところ、トピ主は「痛みに耐えた私の方が、Aより辛いお産をしている!」という自負があるため、Aに対してモヤモヤするのではないかという指摘である。筆者も同じように感じた。また「さらっと『無痛だったよね』とAに言えばいい」とのコメントも多く、これにも同感だ。が、「いまだに帝王切開や無痛分娩に対する偏見があるので、(Aは無痛分娩したことを後輩に)なかなか言えないってこともあるのでは?」というコメントもある。確かにAもなにか思うところがあり、隠しているのかもしれない。

「出産って不思議で、何故か『痛み自慢』が多いですよね。より大変なお産、よりも痛みを永く感じたママが偉い、みたいな」

 というコメントにもまったく同感だ。お産は人それぞれ、皆大変なのだ。人によっては言いたくないこともある。苦労自慢はそれなりの関係を築いてからにしてほしいと思う。

「主さんのような方や、無痛分娩の対しての偏見があるのを知っているので、わたしは夫にさえ言ってません。同じ病院で出産した親戚だけです。友人にさえ言ってません。」

 無痛分娩を選べる時代なのに、こんな罪悪感を感じる女性もいる。次に紹介するトピ主と同じように……。それもこれも、『お腹を痛めて産んだ子』などという言葉がある通り、痛みや苦労を伴ったものであるからこそ尊いという宗教めいた“痛み信仰”ゆえだろう。『母乳で育てた方が愛情が伝わる』などといった母乳育児礼賛ともセットになりがちだが、出産や育児にはとかく女性の“苦労”が伴わないと愛情が足りないと思われるようだ。これは男性に限った話でなく、トピを見ると女性にもまだ根強い価値観なのかと驚かされる。とにかくコメントでは“私も痛かった”、“私も大変だった”のオンパレード。トピ主を批判しながら、結局コメント主らも“苦労自慢”になっているところが皮肉である。まあまあそんなにアツくならなくても……。

◎「計画無痛分娩への罪悪感」

 トピ主(女性・38歳)は先日、第二子を計画無痛分娩で出産した。「第一子は3年前に自然分娩(約12時間)またあの痛みを味わうと思うと怖くなり、38歳と高齢で体力面でも不安だったので、無痛分娩を検討」したのだという。確かに産後の肥立ち、高齢での2人子育て等、産んだ後の事を考えれば、できるだけお産のダメージを少なくしておきたいと考えるのはよく分かる。ところがトピ主は今、無痛分娩で出産したことに対して罪悪感を抱いているのだという。

「自らのお産を振り返り、赤ちゃんは辛いのに自分だけが楽をした、赤ちゃんが産まれてくるタイミングを無視してしまった、という罪悪感に駆られています。罪悪感に苛まれながら子どもと向き合うのが辛く、自分に自信が持てません。前を向かねばと思いつつ、どうしたら気持ちを切り替えられるのかわからず鬱々としてしまう日々です」

 そんな気持ちを切り替えるためにアドバイスをください、というトピだ。産後はものすごくハイになる女性、気持ちがふさぎ込みがちになる女性どちらもいるが、トピ主はプチ産後うつなのではないか……? 心配になる。コメント欄も、トピ主への励ましで埋まった。

「どういう形で産まれてきたか?なんて関係ないですよ。それよりも、産まれてからどれだけ愛されてきたか?そっちの方がずーーーーーっと大事だと思いませんか??」

「ホルモンが悪さをしているだけですよ!いわゆる産後ブルーです!」

「出産イコール苦しまないといけないなんて、いまどきナンセンスですよ。同じ悩むなら、どうやったら、いかに楽に2人の育児をやっていけるかな?というほうにエネルギーを使うべきですよ」

「愛情が薄いなんて言葉が問題ですね。お産はただでさえ辛いものなのに、帝王切開や無痛分娩などで生んだ方に向けられる代表的な暴言です。出産方法と愛情の有無とは科学的に根拠はないようですから、雑音に煩わされずにたっぷりトピ主様なりの愛情を注いで下さいね」

 ほんとほんと! そう思う!

「自然出産至上主義が、無痛分娩を選択する人の潜在意識にまで刷り込まれていることにびっくりです」

 そう思う!

 しかしまあ、このトピ主に関しては筆者と同じく“産後うつ”を心配する声が多く、トピ主レスでは心療内科を受診したことが報告されていた。そして、トピ主が罪悪感を抱くようになったきっかけとして、周囲の声が影響したことも明かされた。

「海外では無痛分娩が主流、先進国で自然分娩は日本くらい、と決めた時は思っていましたが、心のどこかで『お腹を痛めてこそ』、『産み方は生き方』といった自然分娩礼賛の声に少なからず影響を受けていたんだなと思います。お姑さんが、無痛と聞いてあまりいい顔をしなかったのも関係しているのかもしれません」

 ほんと余計なことする義母だよ…!

「痛い思いをしたくないって普通です。痛みから逃げて、楽して何が悪いのかさっぱりわからない。赤ちゃんは辛いのに、って辛かったかどうかわかりませんよ。(中略)赤ちゃんが生まれてくるタイミングに合わせる普通分娩じゃないと、まともなお産じゃないって誰かに言われたんですか?だったら帝王切開もだめってことになりませんか。お産はどれがよくてどれが悪いなんてないんですよ」

 日本産科麻酔学会のHPでは諸外国の無痛分娩普及率が記されており(参考:Q20「海外ではどのくらいの女性が硬膜外無痛分娩を受けているのでしょうか?」)、これによればアメリカやフランスでは半数以上の女性が無痛分娩を選択している。お産の痛みに長時間耐えたからこそ愛情あふれる子育てができる、というエビデンスもない。根拠のない“痛み信仰”、日本ではいつまで続くのか。(ブログウォッチャー京子)

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