「女性はだめ、アマチュアはだめ、オレたちがやる」と勇み立つ政治家たちの危うさ

 本サイトを読まれる方が日頃手にすることがないであろうオヤジ雑誌群が、いかに「男のプライド」を増長し続けているかを、その時々の記事から引っ張り出して定点観測していく本連載。今回はオヤジ雑誌群からのチョイスは少ないが、趣向は変わらない。

 この連載がアップされるのは15日、執筆しているのは11日だが、現段階での報道では、政府は安全保障関連法案を16日の参議院特別委員会で採決し、翌17日の参議院本会議での法案成立を目指しているという。いずれにせよ19日から始まるシルバーウィーク前に成立させて、すっかり忘れてもらおうという算段だ。前々から練られていたスケジューリングだろうが、国民の頭はそんなにシルバーではない。

 自民党総裁選挙は、野田聖子議員が推薦人20人を集めることができずに、無投票で安倍首相が再選した。安保法制に対する不満が渦巻く中で党内意見が割れることを嫌がり、とにかく無投票にこだわった。野田は朝日新聞のインタビュー(9月10日)で、党内に残る男尊女卑的な空気についてハッキリと言及している。

「今回も、女性はちょっとだめよ的な批判はありました。どうしても男性に、女の後ろにつきたくないメンタリティーはある。それがやっぱり最大の壁かな」

 彼女は100人もの自民党議員に電話をかけたが、その多くが電話に出てくれさえしなかったという。各派閥が安倍支持で一本化する中で、党内の多様性を国民に知らせようとした「無派閥の一匹おばさん」(本人談)。しかしながら、こんなデリケートな時期に女が出てきて場を荒らすんじゃないよ、と議論する機会すら設けさせてくれなかった。野田にしても「どうしても男性に、女の後ろにつきたくないメンタリティーはある」と結論付けているのはちっとも賛同できないが、どうしたって納得するしかない風土にあるのが自民党なのだろう。総裁選告示に先立つ出陣式で拳を上げた安倍首相の隣には、高市早苗と片山さつきがかしずいていたが、やはりこれが、自民党の女として正しい態度なのだ。

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「彼女が彼女らしく生きることを社会保障制度の欠陥によって諦めねばならないのなら、それは命を差し出していることとなにも変わらない。彼女が産みたかった子どもは、もう死んだ。」

大澤茉実(SEALDs KANSAI)/『現代思想 総特集:安保法案を問う』青土社

 SEALDs(自由と民主主義のための学生行動)は、安保法制反対運動の大きなうねりを作り出している。その広がりを煙たがる人たちは、彼らにはどういった団体がバックについているだの、国会前でただただ稚拙な言葉を放っているに過ぎないなど、必死に潰す方法を模索している。しかし、どこかの不自由な党と違って、女は男の前には立てないなどという力学では動いていない。彼らはそれぞれがそれぞれの憤りを抱え、それを直接的に言葉にする力を持っている。

 急遽編まれたであろう『現代思想 総特集:安保法案を問う』に寄稿やインタビューで登場しているSEALDsの学生たちの言葉は、驚くほど血が通っている。上記の女性は、アルバイトで知り合った女性が奨学金の返済に追われ、おなかの子どもを中絶することとなった経験を前に、私たちは命を差し出すような環境を生きさせられているのだ、と訴える。上記に引用したテキストはこのように続く。「たった1人の子を産み育てることを許さなかった政治が、いま安全保障関連法案を成立させようとしている。(中略)法案に無邪気に賛成できるほど、私をとりまく世界はすでに安全ではない」。

 そう、この法案に賛成している人達はどこか無邪気である。自衛隊の活動範囲が広がろうとも危険度が高まることはないと言い張り、周辺諸国について、もはや話し合いの余地などないと突っぱねることに快感を覚えている。ひとりひとりの声の集積がうねりを作り出しているというのに、たとえば相変わらずの居丈高を保つために自民党との結託を狙う橋下徹などは、デモを見て「こんな人数のデモで国家の意思が決定されるなら、サザンのコンサートで意思決定する方がよほど民主主義だ」と茶化す。産経新聞は、国会前デモの航空写真から人数を算出し、主催者発表と違ってそんなに人が集まっていないと訴えた。デモではその都度やってきた人が流動しているし、空撮では写らないところにも沢山に人がいただろうに、その瞬間に写った人数をカウントして「たいしたことじゃない」で済ませようとする。無邪気な人達である。

 SEALDsメンバーのスピーチやインタビューや論考を読むと、彼らは常に個人的なエピソードを盛り込み、そこで感じてきた違和感や怒りが今の活動に繋がっていることを明らかにする。橋下に代表されるように、それらをアマチュアだ、と指摘するドヤ顔も多い。そのドヤ顔は、アマチュアが声を発すること、意見を持つことが、民主主義の根幹であることを失念している。そういう体たらくに向けて懸命に言葉を投げ続けるのは徒労感もあろうが、「どうにかなってしまう」という切迫感が強いのだろう。小さい声を排する快感こそ政治家の醍醐味と思っている面々が平和を連呼しているのだから、こんなにも分かりやすく危ういことはない。

「内閣総理大臣 安倍晋三様 『まち・ひと・しごと創生総合戦略』を読んでも、具体的にどう動いていくのかが全く見えません」

働く女性からの要望書/『プレジデント ウーマン』2015年10月号・プレジデント社

 内閣支持率が下降しているが、「地方創生」は支持率を保つ上で大切な「アベノミクス」が連呼してきたキーワードである。その連呼からどういった具体策が出てくるのかと待ち構えていたら、「プラチナタウン構想」なる施策が提唱された。これは、東京などの都市部に住んでいる高齢者に地方へ移住してもらう計画だ。介護が必要になる前に地方へ出向いてもらい、新たな土地で、新たな仕事や地域活動に従事してもらうのだという。「プラチナタウン」、つまり、街に輝きを取り戻してもらうために移り住んでもらえませんか、というわけ。女性といい、高齢者といい、政府は、誰かを輝かせたくって仕方がないらしい。とりわけ特別養護老人ホームなど長蛇の列ができてしまっている都心部の現状を打開するためにも、元気な老人を地方へ向かわせ、やがて身動きがとりにくくなる時、その土地で生まれる需要に期待を寄せている。

 『プレジデント ウーマン』の連載「拝啓 安倍総理大臣」は、働く女性が安倍首相に要望書を提出するスタイルの連載だが、この号では『「地方創生」に関する要望書』を作成する座談会を行っている。彼女たちの「地方創生」への評価はとことん低い。国が作った『まち・ひと・しごと創生総合戦略』について「カッコいい横文字ばかりが羅列していますが具体的な行動が見えてきません」とバッサリ。「プラチナタウン構想」に釘を刺すかのように、広島県で老人ホームを経営する女性が「介護施設は畑違いの人が、補助金目的で始めることが多い」「質の悪いサービスしか提供できず、利用者が不利益を被るケースがある」と指摘し、宇都宮の中小企業診断士の女性は「地方には、補助金をいかにして受けるかを指導する補助金コンサルもいます。ああいう人は、補正予算がかかるたびに、潤う」と警戒する。

 つまり、地方創生のスローガンが、ちっとも地方活性化に繋がりそうもないことを見抜いている。8人による座談会の結論は、「この分野に、『ビジネスがわかる人』の登用をお願いします」である。口先だけでビジネスのわからない男たちだと断罪されているのだ。このまま高齢者移住と補助金分配を地方活性化のカンフル剤として投じ続けていくのだろうか。「ビジネスがわかる人」を使わなければ、相変わらず利権の分配が行なわれるだけになるが、それはそれでも構わない、くらいのことを政府は思っているのかもしれない。

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 物申す個人も物申せない個人もひっくるめて、煩わしく感じた個人は総じて潰してしまえという働きかけが強まっている。宰相が「テロに屈しない」のワンフレーズを連呼して、日本人の人質が殺められてしまった「イスラム国」についてなど、まったく情けないことに、世間の記憶から薄れ始めている。窮地に立たれた人、窮地に立たされていると感じている人に、何だかとっても冷たい国になってしまった。安保法制をめぐる議論は、そんな風土を強化していこうぜと勇み立つ男たちの意気込みが表出している。

 自民党の高村副総裁は、9月6日に行なわれた青森市での講演で、安全保障関連法案について、「(国民の理解が)十分得られてなくても、やらなければいけないときがある」と述べている。キミたちがああだこうだ喚こうが、オレたちの判断次第だから、と明言しているわけである。前出のSEALDs大澤茉実は「一緒に生きていきたい人たちがいる。取り戻したい私自身の人生がある」と書く。大きな働きかけを除けるのは、こうした小さな思いの集積に違いない。「やらなければいけないときがある」だなんて、議員たちは頭ん中に中島みゆきのテーマ曲を流して『プロジェクトX』的な心境でいるのだろう。いい迷惑である。「取り戻したい私自身の人生がある」、今、強引な動きを見せる政治に向けて放ちたい、これ以上ないメッセージである。

■武田砂鉄/1982年生まれ。ライター、編集。2014年秋、出版社勤務を経てフリーへ。「CINRA.NET」「cakes」「マイナビ」「Yahoo!ニュース個人」「SPA!」「beatleg」「TRASH-UP!!」で連載を持ち、「週刊金曜日」「AERA」「STRANGE DAYS」などの雑誌でも執筆中。近著に『紋切型社会 言葉で固まる現代を解きほぐす』(朝日出版社)がある。

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